PROFILE
2004年にバッグブランド〈テンベア〉を設立。バゲットや本など、用途が決まっている専用のバッグを提案する。キャンバス生地を中心に使用したラインナップは男女から人気。場所も時代も選ばない、普遍的な道具としてのバッグを作り続けている。
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道具のデザインに宿る美学に共鳴。

ー お2人は20年来の付き合いとのことですが、今まで一緒にお仕事したことはありますか?
早崎:去年のベーグルが初めてでしたっけ?
金子:そうですね。でも、それはぼくの完全なプライベート。〈ヘリル〉大島さんの奥さんのベーグル屋さんの7周年記念のために、ベーグルを入れるポシェットをつくりたかったんですよ。その時、真っ先に早崎さんが思い浮かんで。特定のものを入れるために、シンプルな素材でバッグをつくるといったら、早崎さんしかいないと思い、お願いしました。
ー 確かに、専用バッグといえば〈テンベア〉。
金子:長い付き合いだからこそ、一緒に仕事をするなら、快諾してもらえる企画で声をかけたかった。「ベーグルのバッグをつくりたい」って言えば、食いつくだろうな、と(笑)。
早崎:(笑)。テーマ自体がおもしろかったので、それに応えるようにぼくもベーグルがひとつしか入らないサイズを提案しました。ほかの要素はゼロ。
金子:しかも、それがちゃんとかわいい。〈アウトドアプロダクツ〉のインラインには、いまの流行りをおさえたアイテムがたくさんあるので、「ザ・レクリエーションストア」では、ファッションとしてのバッグを提案することを考えていませんでした。あくまで道具としてのバッグをつくりたかったから、早崎さんが適任だと感じたんですよ。
ー それで早崎さんにオファーしたということなんですね。
金子:オファーって言っても、ショートメールで「〈アウトドアプロダクツ〉のデザインやってみませんか?」って連絡しただけですけど(笑)。

早崎:なんの前置きもなく、急に話が舞い込んできました(笑)。
金子:当初はデザイナーを立てる予定じゃなかったんですよ。でも、よく考えた結果、ぼくのアイデアを120%まで引き出してくれる人が必要でした。そうしたら、早崎さんの顔がまた浮かんできて。連絡をしたのが午前なのに、午後のミーティングに参加していただきました。本当にとんでもないお願いをしちゃいましたね……。
早崎:そのミーティングは、出店する場所すら未定の段階で、商品のデザインや生産数も決まっていませんでした。
ー デザインが決まっていないなら、提案しやすかったのでは?

早崎:そうでもなかったです。だって金子さん、なにも言ってくれないんですよ(笑)。自由にデザインできるからこそ、どこに向かうべきなのかと考えるところから始まりました。最初は、“道具”というキーワードすらなかったですよね?
金子:そうですね。なんとなくのニュアンスだけ伝えていました。
早崎:〈テンベア〉には、コンセプトとして言葉にしていないけど、バッグは“道具としての袋”というキーワードが、ぼくの根底にあるんです。〈テンベア〉と切り離してデザインするべきなのか、そことリンクさせるべきなのか、まずはその2択がありました。でも、ぼくは分けて考えるほど器用じゃないし、ファッショナブルなデザインができるタイプでもない。〈テンベア〉と同じ考え方でデザインすることになって、それからはトントン拍子に進みました。
ー 金子さんは、早崎さんの自由なデザインを期待して、あえてなにも伝えなかったんですか?
金子:同じバッグも時代が変われば、必然的につくるべきデザインが生まれてくるのかな、ってぼんやり考えていました。〈テンベア〉と方向性が違うだけなので、早崎さんが抱くバッグのフィロソフィーのままやってもらいたいと思っていたから、あまり口出しはしていなかったんですよ。
早崎:ぼくらは歳が近くて、同じものを見て触れてきたから、好みが似ていると思います。ぼくは前職が、軍モノやワークブランドを取り扱っている企業だったこともあって、ファッションを目的としてつくっていないアイテムが好きなんです。いまもそういうモノづくりをしていて、金子さんにもそれが共通しているのかなって思っています。
金子:まさに。ぼくもそういうデザインが好きで、昔から変わりません。