時代に合わせて、そこに生きる人たちのために道具をつくり続ける。
ー 工場の方々にはどんなことを言われたのか気になります。
中川: 〈E5 eyevan〉は工業製品のようにしたい気持ちもあったので、なるべくつくりやすいものにしたかったんです。最優先したのはエンドユーザーにとって壊れにくいもの、次にお店の人が調整しやすいもの、そして最後に工場の人がつくりやすいもの、という順番なんです。
中室: それってすごいですよね。全員に優しいじゃないですか。
中川: でも、工場の人にそれを伝えたら、「全然そんなことねぇよ」って(笑)。
一同: (笑)。

中川: だけど本当につくりやすいように、工場の人にヒアリングしたんですよ。「どうゆう形がいいですか?」って。たとえばこのパッドなんですけど、つくり方としては、芯にニュクレルという素材を巻くんです。通常であればまず先に芯をデザインして、それが有効であるか工場に聞いて精査していくんです。あるいは工場に巻きやすい形を聞いて、そこからデザインを加える。今回は後者のパターンで「長方形がいい」ということで、そのままの形を採用しています。
やっぱり工業製品や道具って、必要としている人の手に渡って欲しいんです。それを必要な分だけつくればいい。そして改善点を見つけながら、どんどんよくしていかないといけない。ぼく自身、そういった考えはいままでなかったんですよ。自分でも、まったく違う人がデザインしているんじゃないかと思うくらいです(笑)。
ー それによってアイデアの幅も広がりそうですね。
中川: そうですね。人の顔の形も千差万別ですし、むかしといまで生まれてくる人間の体型も変わってるじゃないですか。その変化に合わせてメガネも対応していけば、やることがずっとあるということなんですよね。〈E5 eyevan〉は人間の道具としての本質を追求しているので、時代に合わせて、そこに生きる人たちのために道具をつくり続ければ、ずっとテーマがあるような気がします。
中室: いいブランドができましたね。中川さん、昔言ってたじゃないですか、「こういうブランドがないと、会社がダメになる」って。それがすごく印象に残ってて。

中川: そうしないと自分の仕事がなくなっちゃいますから(笑)。一緒に働いているメンバーも、ぼくがいいものをつくらないと、いいように宣伝したり、いいように営業できないですからね。
中室: ぼくの中で中川さんのメガネってひとつの基準なんですよ。他社のブランドを見たときに、同じくらいこだわりが詰まったメガネを見ると、単純にすげぇってなる。だけど、その基準点を今回また上げられて。こんなカラダにして、どうしてくれるんですか(笑)。
中川: いやいやいや(笑)。でも素直にうれしいですね、そんなこと仰っていただけて。本当にありがとうございます。
