表現をいい方向に持っていくのは、やっぱり姿勢。
ー この「POSITIVE MENTAL ATTITUDE」とは、どういう意味合いの言葉なんでしょうか?

Haroshi:スケーターでありアーティストでもあるマーク・オブローとか、グラフィティ・ライターのレミオから聞いて、いい言葉だなと思ってよく使うようになったんですけど。なんていうのかな? モットーとか座右の銘みたいな感じなんですよ。BAD BRAINSも『We Got That PMA』って歌ったりしてて。
アティチュードっていう言葉は若い頃から知っていて、先輩が“ATTITUDE”って書かれたトレーナーを自作でつくって着ていて、それどういう意味ですか? って聞いたら熱い言葉が返ってきたんです。それでかっこいいなぁってずっと思っていたんですけど。
ー “Style”よりも“Attitude”のほうが言葉の重さや深みをより強く感じますね。
Haroshi:心持ちというか、世の中にいるアーティストの99.9%は売れないとぼくは思っていて。売れるアーティストって本当に一握りなんですよ。それを理解しながらも表現を続けるって本当に大変で。だからポジティブな気持ちでいなきゃいけないとぼくは思っているんです。自分がつくるものがいちばんかっこいいっていう確信を持っていないと、人にも伝わらないじゃないですか。

Haroshi:だけど、PMAって言ってるやつはみんな心が弱いんです。根がポジティブな人はそんなこと言わないですから。どっかに闇を抱えていたり、暗い部分を持っている人がPMAって言うんです。大事な人を亡くしたりとか、なにかに依存しながら生きていたりとか、そういう弱い部分を抱えつつもなんとか楽しく人生を送りたいという気持ちがPMAなのかなと。だからぼくらみたいなアーティストにとってはすごく大切な言葉なんですよ。
今野:本当にそうだよね。自分がつくるものをまずは自分が肯定しないと、お客さんに対して失礼だなって思う。だけど、そう思うのに10年くらいはかかったかもしれない。ブランドをスタートしたばかりの頃は、周りのブランドの動向を伺いながら追いかけっこみたいなことをしていて、余計なレースに参加していたところがあったんだけど。
3.11のときに自分の親戚関係の人たちが被害にあって、他人事ではなくなって、結構な金額の服を寄付したんだよね。何シーズンか前のものが残っていて、それはもともと廃棄する予定のものだったんだけど。それで改めて自分のつくった服を見たときに、廃棄しようとしてた理由がやっぱりあって。それをお客さんに売ろうとしてたことを思うと、なんだか申し訳ない気持ちになってきちゃったんだよね。それを世の中に出すくらいなら、目の前で困っている人たちに着てもらったほうがいいんじゃないかとか、いろいろ考えさせられた出来事だったな。
Haroshi:たしかに3.11は強制的にいろんなことを考えさせられましたよね。
ー コロナもそうですよね。
Haroshi:そうですね。人生って本当にいろんなことが起きますよね。だからこそPMAが大事なのかなと。ぼくはこういう期間になにをするかだと思っていて。マイナスに捉えるだけじゃなくて、ある意味では潤沢な時間ができたからこそ、そこでできることをすべきなんじゃないかなって。
今度ベアブリックのワールドツアーに参加するんですけど、そこでだす作品をつくる前にスケボーで骨折しちゃって左手が使えなくなっちゃったんですよ。だけど仕事はしないといけなくて。そのときは右手でできる技を自分でつくろうとおもって、そこから3ヶ月くらい片手で彫刻してたんですよ。それで生まれた作品は、やっぱり片手じゃないとできないものに仕上がってて。そうやってデメリットをメリットに変えるのがPMAなのかなと。表現者って、アートも音楽も服もそうですけど、そのときにしか生み出せないものをつくるべきだとぼくは思っていて。それをいい方向に持っていくのは、やっぱり姿勢なんですよね。それ次第で生まれるものが変わるから。
