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FACETASM 落合宏理と写真家 奥山由之が語る『TOKYO SEQUENCE』のはじまりとこれから。
Behind the scene

FACETASM 落合宏理と写真家 奥山由之が語る
『TOKYO SEQUENCE』のはじまりとこれから。

渋谷の大規模再開発、この夏開催された東京五輪、そして未だ続くコロナ禍。街だけでなく生活も変化の真っ只中にある東京。そんな東京を舞台にした写真家・映像監督の奥山由之と〈FACETASM〉がタッグを組んだプロジェクト『TOKYO SEQUENCE』がある。日々移りゆく街と、そこに息づく人々を活写していくビジュアルプレゼンテーション。そのプロジェクトのはじまりから、ゴールへ向けてのヴィジョンについて2人に語ってもらいました。

  • Photo_Yuka Uesawa(model)、Hinako Kotaki(still)
  • Text_Mai Okuhara
  • Edit_Shun Koda

8mmのフィルムカメラで、
人、街、ファッションの変化を残す撮影方法。

奥山:8mmのフィルムカメラで撮影し、ベタ焼きした1コマ1コマのうち、ほんの0.0何秒違う3コマを連ねています。1列目が人、2列目がファッション、3列目が街。ほんの1秒にも満たない、ちょっとした時間の違いのなかにも、まばたきや背景に走っている車が過ぎ去っていくという変化がある。人も街も風景も動いているので、ほんの少しの時差にパワフルな東京の変化を表現できているなと思っています。200人の被写体を、ただ僕が撮りたいように撮ってしまうと、だんだんに誰を撮っても同じような表現になってしまう可能性があるけれど、フォーマットを変えず様々な人を撮ることで、逆にその人の個性を垣間見ることができたり、連続したシークエンスの中にほんの少しの変化があったり。街の変化やファッションの変化、人の成長など、変わりゆくもののある一瞬を写し残すのが写真だと思うので、その過程を描けているという点では、かなり企画に適した手法を取れている。この手法以外に選択肢はなかったかもしれないですね。

落合:その話を聞いてさらにある意味、ドラマをみているようだなと思いました。ほんの一瞬の短いドラマ。200人目標だから、まだまだ続くけれども……。

奥山:誰か一人の被写体と長くコミュニケーションを重ねて、関係性を築き上げるわけではないし、じっくり何枚も撮って濃密な撮影時間の中で炙り出される一枚とも違う。ネガティブな意味ではなく、ドライさがあると思っています。フォーマットも同じなので、被写体によって何かを変えることもない。大声で声をかけられるような場所で撮ってないので、撮影中の会話も小声でコミュニケーションを取る。一日に複数名撮るので、時間も密度も薄い。僕自身そういう撮り方をしてこなかったので、その距離感は、僕としては新しい感覚です。自分でつくっているものだけど、どこか自分がつくったもののように思えない新しさも感じて面白いです。

落合:ファッションデザイナーって、なかなか人と会わないんです。だから逆に僕は、被写体の人が来て、ヘアメイクをして、スタイリングをして、奥山くんが待ち構える撮影場所まで10分くらい歩いていく。その道中、被写体の方と話すという時間が楽しい。横田真悠さんの撮影では、好きな食べ物の話や将来の話を聞いたり、たわいもない話をする10分間が結構好きですね。そうやって東京の街を歩いていく瞬間は、自分としても心地良い。

奥山:どんな話をしているんだろうって思っていました。その移動時間が、手持ち無沙汰になってないかなとか正直心配していたんですよね。

落合:全然そんなことはなくて。好きな音楽の話とか、逆に自分の話もしたり。将来の目標とか、東京の今の状況のこととか気持ちとか。大切にしたい時間になっています。この企画では、初めて会う方もいれば、普段から仲の良い友達まで出演してもらっているので、いろんな方々と話ながら東京散歩をしているような感覚もあります。

奥山:僕は先に撮影場所に行っていることが多いので、移動中に撮影の意図を伝えたり話すことがなかなか難しい。仲野太賀さんとはプライベートでも仲がいいので撮影が終わった後、控え室に戻りながら話が盛り上がったりして。そういうコミュニケーションを今までは撮影前にしたいと思っていたんです。あともう一つこの企画の新鮮な点は、〈ファセッタズム〉が出て欲しいと思っている人と、僕が撮りたいと思っている人にほとんど被りがないこと。普段交わりそうで、交わらない方々を撮るのも新鮮。普段だったら出会えない方々と知り合えるし、同じように落合さんもこの企画がなかったら出会わなかった方と接しているはず。だから撮影場所へ来るときの様子を見ていると、たまに違和感のある新鮮な並びの二人だな、と思う時もあります。

落合:それはありますね。僕も「GRILLZ JEWELZ」の秋山哲哉さんが、奥山くんに撮られている光景は、いい意味で違和感を感じて見ていてすごく面白かった。この企画に出演した後、海外の「GRILLZ JEWELZ」を身につけている人たちからも反響があったと聞きました。今後は子供とかも出て欲しいな。

奥山:そうですね。本当に小さな子供がいてもいいですし、ご年配の方がいてもいい。一つの側面だけでなく多様な方々に出ていただける企画だと思います。会社の経営者、ロケバスのドライバーさんなど、僕らと関わりのある東京の人たちというのは多種多様にいるはず。そういう方々の中に、俳優、女優、モデル、ミュージシャンのような方々がいるからこそ、東京の人々の多様性が描けますよね。

INFORMATION

TOKYO SEQUENCE

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