夜な夜なワッペンを縫ったり、絨毯のシミを染めたり。
ー そのニット、可愛いですね。
そうそう。スタイリストさんとも、これ可愛いねって話になった。こういう遊び心ある楽しい感じが〈ディースクエアード〉らしくていいところで好きですね。
ー 男性にとっては、可愛いってなかなか難しい概念ですよね。
個人差はあると思うけど、俺はぴゅっと付いているのがいい。グレーのトレーナーを着ている時に、姪っ子の子供が小さなイチゴのシールを貼ったのを忘れて現場に言ったら、みんな可愛いね、可愛いねって。ただのグレーのトレーナーなのに何がやんけ? って思ったら、あ、シールだと。こういうので女性は可愛いって言うんだと、たまになんでもないデザインの服にちょこっと貼ったりして(笑)。あとはさっきのバッグにピンバッジをつけたりしています。
ー ファッションを楽しんでいるんですね。
世間には伝わらないけど、こだわりはあります。あとは、夜な夜なワッペンとかを縫うたりしてます。服飾の学校に行っていた、昔の彼女が全部やり方を教えてくれた。細かく縫わなきゃいけないと思ってたところを、「それは大きく縫ったほうがいいのよ」と教えてくれて、それから仕事が早くなってね。いまは家に全色の糸があるんです。
ー さんまさんがそういうものをご自身でつくっているのは、世の中のひとは知らないかもしれませんね。
ティッシュカバーとか何かつくっているのは、笑いの仲間は知ってますけどね。そういう作業は楽しいですね。
ー ご自身でカスタムするって、よっぽどファッションが好きじゃないとやらないですよね。
この世界の人間は、ちょっとでも他のひとと同じだと気が済まないっていうところがある。ちょっとだけ変えたりとか、ひとと違うブランドを選んだりとか。シューズはどこどこのブランドとブランドがコラボしたとか、みんなよく言うてるからね。
(サッカーチームの)「パリ・サンジェルマン」と〈ジョーダン〉がコラボしたんですけど、それは夢のまた夢のような話。俺は帽子からロゴを切り抜いて、〈ジョーダン〉と「マンチェスター・ユナイテッド」を組み合わせたり、そういうことを勝手にしていた。それを真似しやがったんですよ(笑)。でもそういうことは、誰も気がつかないですね。伝わらない。
ー さんまさんといえば、誰もが知っているお笑い怪獣ですが、誰も知らないさんまさんの小さな世界もあるんですね。
あるある。特に俺のはオシャレとかじゃないんで、そういうこだわりにしている。そういう掛け合わせは、20年くらいやってるけど、誰もわあ! って言うてくれたことないし(笑)。こないだ「毎日放送」のラジオのスタジオで、「レイダース」のワッペンを付けたパーカを着ていたら、やっとフットボール好きが「レイダース」のワッペンですねって気づいてくれたけど、そんなパーカあるんですか? とは言うてくれなかった(笑)。日本とはスポーツの感覚が全然違うんで、アメリカのひとなら気付いてくれるはず。
ー そういえば日曜大工とかも?
日曜大工はしないけど、家の修理とかは全部します。スプレーとか、グラインダーとかも全部ある。以前、ゴルフのパターをつくったことがあるんですけど、苦労した割に、あれは大失敗。ちょっと角度がズレるだけで、全然違う風になってしまった。「染めQ」って知ってる? 生地用のペンキで、ジーパンとかにシュッシュとするやつ。家がクリーム色の絨毯で、ワインとかコーヒーのシミがあるから上からかけたいんだけど、その絨毯の色のスプレーがないんで、白と黄色で混ぜようと。でも、黄色の分量がすごい難しいのよ。いままでも試しているんだけど、上手くいかずに変な柄になっている(笑)。今度失敗したら、家の絨毯を全部貼りかえようかと。
ー 「Netflix」の『Jimmy~アホみたいなホンマの話~』や西加奈子さん原作の劇場アニメ『漁港の肉子ちゃん』など、映像作品のプロデュースもされていますが、そういう裏方でつくることもお好きなんですか?
プロデュースは好きということはないんだけど、勝新太郎さんからはじまっている。玉緒さんに俺の番組に出てもらっている時、勝新太郎さんが病気になられて、「うちの玉緒をどう使うんだい?」と。勝新太郎さんが、病気で亡くなる前に、俺が27時間番組の司会とかをやると、「玉緒が世話になっている男がやっているんだから見ないと失礼になる」と、全部観はるんです。その時に「さんまは日本一のプロデューサーだ、とんでもないプロデュースの才能がある」と言ってくれたんですよ。そこから、プロデュースというのをものすごい意識するようになったのは事実。
西加奈子さん原作のアニメは、実写だといろいろと難しいということでアニメになったんですけど、アニメで正解だったと思います。あまり映画の世界はよく分からないんですけど、「報知映画賞」のアニメ作品賞やスコットランドで有名な賞(編集部注:「スコットランド・ラブズ・アニメーション」の最高賞「Jury Award」)をいただいたんですよ。俺は全然ピンとこないんですけど、それがすごいみたいで。
『さんタク』を11月初めくらいに撮影しているんですけど、木村に「報知映画賞」の主演男優賞を獲ったら俺はアニメ作品賞獲っているから、シャレで二人で授賞式行こうかとか言うてたら、実際にそうなってしまったんですよ(笑)。笑いにしてたんですけど、もう笑いにできない悲しさ(笑)。その話が実際に放送ではどう編集されているのか、楽しみなんです。(編集部注:この取材は2021年12月に行われた)