
四万十川。“日本最後の清流”としてその名は全国的に広く知られています。なんでも本流に大規模なダムが建設されていないことからそう呼ばれているのだとか。あとは某芸人さんの某コントにもその名が出てくるので、それで四万十という地名を記憶している方も多いのではないでしょうか?
また、全国屈指のアユの産地でもあり、とにかく高知県の雄々しくも豊かな自然を代表する河川なのです。その流域は安定的な降雨に恵まれていることから、良質なヒノキ、四万十ヒノキの森が広がっています。

ヒノキは日本の固有種です。ヒノキと聞いてまず思い浮かべるのは、お風呂の浴槽や桶ではないでしょうか。あの独特の麗しい香りを活かしたプロダクトが多いように思います。あとは、最近流行りの焚き火界隈でもその名をよく聞きます。針葉樹であるヒノキは焚き付けに使われるぐらい燃えやすく、別名「火の木」とも言われるそうです。
そんな風に、長年日本の文化や暮らしに寄り添い続けてきたヒノキの素晴らしさを伝えたいという想いで、家具ブランド〈SHFW〉はスタートしました。

ものづくりの舞台はここ「森林組合集成材工場」です。ちなみに集成材とはその名の通り、木を集め、形を成した材料です。大きな節や割れなどの欠点を取り除き、繊維方向を平行に揃えて接着したものになります。この工場では、集成材の一枚板を使ってものづくりをしているのですが、それとは別の全く新しいプロジェクトとして始動したのが〈SHFW〉になります。
今回、特別に工場のなかを見学させてもらいました。


工場内には、近隣から集められた材木が様々な形で保管されています。工場がある四万十町は面積のほとんどを山林が占めており、林業は地元に根付いた大切な産業なのです。周辺に広がる四万十ヒノキの森を守るためには、適切な育林と計画的な間伐が必要で、〈SHFW〉は間伐材を有効活用したプロジェクトなのです。
間伐は、年がら年中どこかしらで行われているのですが、その全部を有効活用できているかというと、そういうわけではありません。施業地によっては木材の搬出が困難なこともあるので、その場合は切ったままにせざるをえないのです。
変な話、これだけの量の木材を見ていると、こんなに切って大丈夫なんだろうかという気持ちにもなるのですが、その気持ちを一瞬でかき消すほどに広大な山々が眼前に広がっているわけで、改めて自然の大きさを実感させられました。

今回、いろいろなお話を聞かせていただいた、工場長の廣田和也さん(左)と、〈SHFW〉のブランドディレクターである「THAT’S ALL RIGHT.INC.」の梅田武志さん(右)です。
「うちの工場では、20代前半から60代まで、幅広い年齢層のスタッフが働いています。未経験で入ってくるスタッフもいるにはいますが、技術が必要とされるポジションはベテランの職人に活躍してもらっています。もともと大工や建具職人をやっていたスタッフもいるんです」(廣田さん)
「〈SHFW〉は僕だけではなく、工場のスタッフとディスカッションをしながら商品を企画しています。ヒノキのことを一番よく知っているのがここのスタッフ、職人ですから、彼らとできることできないことを話しながら、ものづくりを進めています」(梅田さん)


工場はいくつかのセクションに分かれており、かなり広いです。先に述べましたが、主にここでは集成材を作っています。丸太の状態で入ってきた木材を“挽いて”、細い木にしてそれをジョイントして磨いて、長い一本の材に仕上げていくのです。

集成材は強度が高いうえに、反り、割れ、狂いなどが起こりにくいため、和室の部材や体育館、集会場など大型の建築物まで、様々な用途で使われています。

いったん接着剤で固定(幅はぎ)した状態です。



ちなみにこれは〈SHFW〉のプロダクトではなく、集成材のヒノキを使った別ブランドのものです。ヒノキの白さは、こうした子供用の家具に相性がよく、これまでも多くの商品が作られてきました。

ちょうどいいサイズに整えられた材は、このなかでジェンガのように積み上げられて乾燥にかけられます。木はいかに水分を抜くかが重要で、水分が余分に残っていると変形していってしまうそうです。水分率の基準があって、それを下回る必要があるのです。そんなわけで熱を当てて水分を抜いていくのですが、最後まで熱を当て続けるとこれまた割れたり変形したりするそうで、それを抑えるために最後に水蒸気をかけるのです。下に見える黒い液体は木に含まれている油で、いわゆるヤニです。
間伐材を使って集成材を作っていると聞くと、なんだか安く手軽にできるように聞こえるかもしれませんが、とんでもない。とにかく膨大な工程を経て作られているものなのです。

「〈SHFW〉ではなるべく幅の広い板を使うようにして、集成材のテクスチャーがそこまで出ないように工夫しています。というのも、つぎはぎした感じがブランドの世界観に合わないよう気がするんです。一方で、ヒノキ本来の質感、色、香りを生かすために、加工はシンプル、塗装は必要最低限にしています。世の中に出回っている家具って、だいたい濃いめというかダークな色味のものが多いですよね? その多くは楢とか樫などの広葉樹を使っています。もちろんヒノキを着色することもできるのですが、そうではなく白っぽい色味をどううまく活かせるかというのをテーマに、ものづくりをしています」(梅田さん)
以下から〈SHFW〉の家具を紹介していきます。商品名は、四万十町の地名や橋、川の名前から名付けられています。