PROFILE
1976年、東京都生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。個展にて自身の作品を発表するほか、アパレルブランドや広告、雑誌、書籍などにイラストを提供。作品集に『I DRAW』。また、共著には『みんなの映画100選』、『みんなの恋愛映画100選』がある。
常に自問自答しながら、よりいいものを描きたいと思っている。

ー 一昨年は渋谷のSAIで個展をされて、それが大盛況で幕を閉じたそうですね。そして、昨年は海外でも個展を開かれたと伺っています。最近のご自身の活動に関して、どんなことを考えながら制作をしていますか?
長場:去年は台湾で個展と、上海のアートフェアに参加させてもらいました。いまはイラストだけではなくて、アート方面にも力を入れながら活動をしています。つい最近は、いま借りている作業場のすぐ近くにもうひとつアトリエを借りました。そこは大きな絵を描くためのスペースにする予定です。あとはNFTも盛り上がっているので、その辺りも勉強しないとなぁ、なんて思ってますね。
ー NFTの市場はすごく大きくなっているそうですね。
長場:そうですね。もう無視できないし、その世界にもチャレンジしたいという気持ちでいますね。

ー イラストとアートで、ご自身の中で描く絵に変化は生まれるのでしょうか?
長場:どちらもおもしろい作品をつくりたいという気持ちでやっています。クライアントワークの場合、大きなプロジェクトになってくると、相手のことを考えすぎるあまり、おもしろいものを生み出すことが難しく感じてしまうこともあったりして。そうならないために、自分の立ち位置をしっかりと見極めて、どんなコラボレーション相手でも自分の色をしっかりと出せるように意識していますね。
ー キャリアを積んだことによって、それができるようになってきたんですか?
長場:むかしからそうした気持ちでやっています。いまの自分のタッチが生まれたのも、人に気に入られたいとか、そういう想いからではなくて。自分自身で「これがいい」と言い切っている作風なんです。だから、たとえ万人に受け入れられずとも、自分がいいと感じているものを世の中に提示したいと思っているところはありますね。
ー ある意味開き直っていると。
長場:そうですね、開き直ってます(笑)。とにかく自分を貫き通すという感じ。でも、それって簡単なことではないんですよ。自分の気持ちも日々変化しているし、「これってどうなの?」と常に自問自答しながら、よりいいものを描きたいと思っているので。
ー これまでに長場さんは〈ユニクロ〉というグローバルブランドとコラボレートされてきましたが、こうした世界規模のブランドとの協業で、プレッシャーを感じることはないですか?

長場:毎回押しつぶされそうになってますよ(笑)。でも、声をかけてくださるので、受けて立とうっていう気持ちで「やりますよ」とお答えしていて。
ー やはり、それをやることによって得られるものは大きいですか?
長場:これは自分の性格なんですけど、同じことを繰り返していると、だんだんマンネリ化してきてしまうんです。それが作品にも影響してしまうから、ちょっとづつハードルを上げるように意識はしています。もちろんそれによるプレッシャーも感じるんですけど、自分にとってはそれが心地よいというか。描き終えて成果がでたときに、やってよかったって感じることができるんです。そこで得られたものって次に繋がっていくし、また新しいチャレンジをしたいとも思える。だから、とにかくやるしかないんですよね。
ー そのハードルを上げる作業というのは、具体的にどんなことをしているんですか?
長場:たとえばぼくの場合、引き算をするんです。ぼくの絵は線が増えると説明的になってしまうんですよ。それをすることによってより多くの人に理解してもらえるかもしれませんが、自分が目指す方向とはちょっとズレがある。だから線を減らして、なおかつそれをより多くの人に伝わるものにしたいと考えていますね。そうすると、やりがいを感じられるんです。
ー 少ない手数でより多くの人に届けたいと。
長場:そうですね。そっちのほうがかっこいいなと自分では思うので。