最小限の改良で、最大限の進化を。
ー そんなブランドを手掛けることになったわけですが、ステファンさんのファーストコレクションである2022年春夏シーズンのアイテムで、既存のものと大きく変更した点について教えてください。
ステファン:2つあります。ひとつは、80年代と90年代のルーツを大切にすること。そして、自分が培ってきたストリートカルチャーやサブカルチャーをミックスするということ。
ー ひとつずつ、解説をお願いできますか?
ステファン:ファッションなのだから、トレンドを追うのも悪いことじゃない。けれど、〈グラミチ〉の昔のカタログを見ていたときに、やっぱり80年代や90年代のものがクールだったんです。だからまずは、オリジナルを大切にしようと思いました。
そして、自分の培ってきたものをパッケージするってところに関しては、前職でもお世話になっていた方にお願いしてグラフィックTシャツをつくりました。


“Tongue in cheek” でありレイドバックなTシャツたち。生地は共にオーガニックコットン。グレーのTシャツは製品染めを施し、古着の風合いを楽しめる。各¥6,600
ー グラフィックをお願いする上で、リクエストはあったんでしょうか?
ステファン:“Tongue in cheek” って言葉が英語にあるんです。「からかう」とか「冗談」とかっていう意味なんですが、90年代のショーン(・ステューシー)がつくっていたデザインがまさにそんな感じで、そういうテイストを盛り込もうって話になりました。もちろんロゴを使った王道のものもあるんですけど。
あと、ガーメントダイ(製品染め)のTシャツもあります。ちょっと古着っぽい感じに見えるような。それも90年代の雰囲気を醸してくれているなと。
ー 「オリジナルを大切にする」という思いを、一番込めたアイテムはどれでしょうか?
ステファン:「ガジェットパンツ」と「グラミチパンツ」です。
ー 「ガジェットパンツ」は新しいアイテムですか?
ステファン:そうです。このパンツ自体は、1995年のカタログに載ってたものを参考につくりました。ディティールで言うと、まずはポケット部分にキャンバス地を使っているんです。いまでこそコットンツイルの生地が多いですけど、昔はキャンバスだったんです。なんと言ってもキャンバスは耐久性が高い。今回の「オリジナルを大切にする」っていうのをうまく表現できたパンツだと思います。それと、ウェビングベルトをポケット部分にも配したことで、カラビナがつけられたり、水筒もぶら下げられる。ポケットも大きいから、クライミングの時に使うチョークもいれられる。スケボーであったり街でも穿ける一方で、クライマー目線でつくった、アイコニックなパンツになったと思います。


「ガジェットパンツ」は両サイドにガジェットがたくさん入るよう、大型ポケットを備えているのが特徴。オーガニックコットンのツイル生地を使いつつ、負荷がかかりやすいポケット部にはタフなキャンバス地を採用。製品染めを施し、経年変化も楽しめる。各色¥12,100

こちらもステファンさんが特に力を入れたアイテム。〈グラミチ〉が創業当初に展開していた名作「ジャムショーツ」の復刻で、数あるショーツのなかでもワイドで動きやすい。当時と同じく素材は耐久性に優れるリップストップ。同素材のジャケットとセットアップで着るのもよし。ジャケット ¥19,800、ショーツ ¥11,000
ー 一方で、大定番である「グラミチパンツ」はいかがでしょうか?
ステファン:正直、このパンツは成熟した状態に近い。なので、シルエットなんかは変えていません。最大の変更点はオーガニックコットンの使用をはじめたこと。
ー なぜ、代表アイテムである「グラミチパンツ」を、オーガニックコットンに?
ステファン:確かに、マイナーなアイテムだけをオーガニックコットンに変える手段もありました。けれど、それだとインパクトが足りない。〈グラミチ〉の代表的なパンツにオーガニックコットンを使用するからこそ、インパクトが生まれると思ったんです。ちなみに「グラミチパンツ」以外にも、オーガニックコットンを使っています。いま環境への意識は、なくてはならないものだと思っています。これからは、私たち以外のブランドも、もっともっと当たり前にしていかなきゃいけない。