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海、山、風、音、そのすべてを味わう。瀬戸内JAMで感じた、ローカルの価値と可能性。
Let's go on a journey

海、山、風、音、そのすべてを味わう。
瀬戸内JAMで感じた、ローカルの価値と可能性。

来年こそは海外旅行に! なんてセリフは去年のいま頃も言っていたわけで、先行きは未だ不透明。それならいっそ、2022年は国内全土に目を向けて、見知らぬ土地を旅するってのも大いにあり。例えばメジャーな7大都市や温泉街ではなく、SNSでも目にしないような地方の街とか。田舎ならではの自然に触れたり、郷土料理を頬張ったり、ローカルイベントに足を運んでみたりして、のんびり旅するのも楽しいものです。今回ぼくらが向かったのは、岡山県の南部に位置する玉野市宇野。目的は瀬戸内海の絶景、そしてボルダリングと音楽を掛け合わせたフェス「瀬戸内JAM」。そこでの2日間を通じて、地方都市のポテンシャルを肌で感じました。

人が街をつくっていく。

良い音に溢れ、子供達のハツラツとした声が飛び交い、終始笑顔の絶えなかった「瀬戸内JAM」。ここからは、その仕掛け人である岡本英之さんとのお話を交えて、このフェスを振り返ります。

PROFILE

岡本英之 / プロデューサー

1979年生まれ。岡山県玉野市出身。株式会社Sunborn所属。プロデューサーとして映画制作から出版、メディア運営まで幅広く手掛ける。代表的な映像作品は濱口竜介監督の『ハッピーアワー』や、第77回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した黒沢清監督の 『スパイの妻』。2017年からはクライミングを通じた岡山・瀬戸内エリアのブランディング事業「Setouchi Climbing」や複合フェスティバル「瀬戸内JAM」を企画・運営するなど、地域プロデュースにも取り組んでいる。

映画やメディア制作のプロデューサーとして活躍する一方で、瀬戸内エリアのブランディング事業も手がけるなどマルチに活動する岡本さん。ここ玉野市で生まれ育ち、高校卒業と同時に東京へ上京。このイベントを立ち上げた裏には、地元・玉野市の将来像に感じた危機感があったと言います。

「ずっと東京で暮らしていたのですが、途中3年半ほど地元に帰って家業を手伝っていた時期があったんです。不動産業をやっていたので、“人口減少”といった玉野市の抱える課題が痛いほどリアルに伝わってきたんですね。このまま続けば、まずいことになるなと。そこで、地元の衰退をどう防ぐか考えるようになりました」

王子が岳のアイコン、ニコニコ岩。

そして思い浮かんだのが、玉野市の景観を活かしたイベント。玉野市にはこれまで紹介した瀬戸内海だけでなく、瀬戸内海国立公園に指定されている標高235mの「王子が岳」があります。瀬戸内海の多島美と瀬戸大橋の全景が同時に望めるビュースポットとして地元民から親しまれ、ニコニコ岩をはじめとした巨岩や奇岩が多く、ボルダリングの聖地としても有名なんだそう。

「でも、単純にボルダリングイベントをやるだけでは集客が難しい。そこで、誰しも馴染みのある音楽とボルダリングを掛け合わせた『瀬戸内JAM』を企画しました。

実際に、ボルダリング目当てで来てくださる方もいれば、アーティストのパフォーマンスを観に来る音楽ファンの方もいらっしゃいます。シナジー効果も起こり得るはずで、お目当てのアーティストを観に来た方が、ふとウォールを登ってみて、クライミングに興味を持つことがあるかもしれない。もちろん、その逆もありえますよね」

なるほど、確かに今日もそんな光景を目にしました。いかにも“クライマー”な格好をした人が、演奏が始まるとともに、徐々にステージへ近づいて行ったり。岡本さんの狙いは見事に的中しているようです。

ところで、名だたるゲスト陣に加えて、地元「玉野高等学校 吹奏楽部有志」の生徒たちを呼んだこと、そして伊澤さんとのコラボステージを用意したことには、何か特別な意図があったのでしょうか?

「このイベントには裏テーマがあります。それは、“若い世代に地元のポテンシャルを感じてもらう”ということ。玉野市は都会ではないので、卒業とともに外へ出たい考えの若い方もたくさんいると思います。ぼくも学生時代はそうでした。

でも、地元にいい思い出があれば、例え遠くに行ってもこの街を誇れるし、故郷への想いを持ち続けてくれると思うんです。外で得た経験を街に投下して、未来の玉野市をつくっていって欲しい。そういう思いで、生徒たちの記憶にインパクトを残したいなと」

吹奏楽部有志の学生に限らず、この日会場に訪れた若者たちにとって、「瀬戸内JAM」は玉野市の可能性を感じさせるイベントとなったに違いありません。最後に、今後のまちづくりについて、岡本さんの展望をお伺いしました。

「結局、街を変えていくのは人なんです。これからの玉野市をつくる上で大切なのは、人に対してどうアプローチを仕掛けていくか。ぼくは『瀬戸内JAM』のようなイベントを地道に続けて、人の気持ちに火を付けるとまでは言わずとも、そのきっかけをつくっていくつもりです。

近年は都市部から移住してくる方も多く、素敵なゲストハウスやカフェも増えています。そういった“旅人の目”との連携も広げていきながら、より多くの方にこの街の魅力を発信していきたいです」

INFORMATION
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