トレンドとかではなく、本当にいいものであることを伝えたい。
ー 竹崎さんはこれまでに〈ニューバランス〉のさまざまなヴィジュアルを手がけられていますよね。〈ニューバランス〉と仕事をする上で意識することはありますか?
竹崎:あまり革新的なことはしないようにしています。いま話したように温故知新なブランドなので、きちんと時代を匂わせるようにするというか。
ー トラッドマインドを感じるブランドだと思うんです。
竹崎:トラッドマインド、ありますね。そういう歴史を重んじるところを自分も大切にしています。撮影にあたって取り上げるモデルとか、テーマがもちろんあるんですけど、それを踏まえた上で「こういう時代背景でやりたい」と提案しますね。
〈エメ レオン ドレ(Aimé Leon Dore)〉のテディ・サンティスが、〈ニューバランス〉の“Made In U.S.A.”におけるクリエイティブディレクターに就任して、彼がつくったヴィジュアルとかものすごくかっこいいんですよね。いまホットな人物を起用するのではなく、ニューヨークの現地にいるさまざまな職種の人たちをモデルとして撮影していて。人物の知名度などに頼らない広告のつくり方というか、そういうところには学ぶものがあります。

個人的にはこの「550」のヴィジュアルを担当させてもらったのはすごく思い入れがあって。正直な話、「このモデル、いまの時代にハマるかな?」と思ったんですよ。バッシュだし、しかもすごくクラシックなデザインだから。だけど、1989年にリリースされたモデルということで、80年代をキーワードにプロップを集めたりスタイリングを組んで、おもしろい世界観をつくることができたんです。結果的にものすごく人気が出たようで、〈ニューバランス〉のグローバルチームにも認めてもらうことができて、手応えを感じましたね。
ー 発売からすでに30年以上経過しているモデルなのに、こうしてヴィジュアルとして見ると、古臭さを感じないですね。
竹崎:不思議ですよね(笑)。〈ニューバランス〉ってスポーツメーカーの中でも歴史が長いし、すごく地に足ついたブランドだと思うんですよ。本当に温故知新というか。これは個人的な話ですけど、ぼくは時代を超越するものが好きだし、〈ニューバランス〉の広告ってむかしからそうなんですよね。おじいちゃん、おばあちゃんを起用した70年代の有名な広告ヴィジュアルとか、まさに時代耐久力がありますし。トレンドとかではなく、本当にいいものであることを伝えたい。そうした感覚を大切にしているんだなと、しみじみ思います。