CLOSE
FEATURE
45歳のサングラス。
MONTHLY JOURNAL July 2022 vol.2

45歳のサングラス。

フイナム編集部は11人のスタッフで運営しているんですが、最年少と最年長では年齢の開きがけっこうあるんです。下は24歳で、上は45歳。趣向も遊ぶ場所も、ファッションのスタイルだってもちろん異なります。サングラスひとつとっても「目を紫外線から守るため」なんていう実用的な捉え方をするセンパイもいれば、「どう考えてもファッションのためでしょ」という見た目重視のヤングもいる。ということで、それぞれの年代のサングラス論を覗いてみようというのが今月のマンスリージャーナルです。Vol.2は、45歳をキーワードにしながら、業界を牽引してきたひとたちにサングラスのアレコレを聞きました。

  • Photo_Yuko Yasukawa
  • Text_Keisuke Kimura
  • Edit_Yuri Sudo
  • 第1章 グローブスペックスの岡田さんに聞く最近のサングラス事情。

  • 第2章 あの人はどんなサングラスが好き?

  • 第3章 ドクターに聞いたサングラスのススメ。

第1章 グローブスペックスの岡田さんに聞く最近のサングラス事情。

PROFILE

岡田哲哉/グローブスペックス 代表

1998年に東京・渋谷に「グローブスペックス」をオープン。2017年からイタリアの「MIDO」展で2年連続「BESTORE AWARD」を受賞。世界一の眼鏡店に選ばれる。最近は週4日、仕事前か仕事後にテニスに勤しむ。
Instagram:@tetsuya_globespecs

年を重ねることで、アイウェアが似合うようになる!?

ー 岡田さんはメガネを着用されているイメージが強いですが、サングラスも着用されますか?

岡田:マストってほどではないですけど、最近はかけるようになりました。やっぱり、サングラスをしていると日中は楽なので。

ー いまかけているのはメガネですか? それともサングラス?

岡田:オールドジョー(OLD JOE)〉と「グローブスペックス」でデザインしたサングラスなんですけど、レンズは調光レンズを入れていますね。最近の調光レンズは、濃度もカラーもいろいろとバリエーションが増えていて、性能も上がっているんです。以前なら、紫外線に当たってレンズの色が濃くなるのに2〜3分くらいかかっていたけど、いまは1分くらいでしっかり色がついてくれるんですよ。

ー やはり調光レンズがブームなんですね。

岡田:確実に着用率は増えていますね。

ー 一方で、クルマで調光レンズをかける場合は、クルマの窓が紫外線をブロックするから、レンズが暗くならないと聞きました。

岡田:それが、最新の調光レンズは、クルマのなかでもある程度色が濃くなるものもあるんです。もちろん真っ暗にはならないんだけど、ぼくはそのくらいで十分で。

〈レスカ・ルネティエ〉上からPICAS、VINTAGE1964、PICAS 各¥40,700 (グローブスペックス エージェント)

ー サングラスのフレームのトレンドも教えてください。

岡田:20代や30代の若い世代は、太いセルを購入される方が多くて、なかでもクラウンパントを探しているひとが多いと思いますね。その流れで〈レスカ・ルネティエ(Lesca LUNETIER)〉も人気があります。逆に40代になってくると、素材としてはメタルが多くなってきます。というのも、太いセルは重たくて、若いときはいいけど歳を重ねると、その重たさが辛くなってね(笑)。

ー 自分に似合うアイウェアは、どのように探せばよいのでしょうか?

岡田:実は、自分だけで見て決められるお客さんって、本当にひと握りなんです。そのために私たちがいるので、うちに来ていただければ似合うものをお見立てします。お客さんがイメージするものよりも、さらに似合うものを提案できるので。

ー 年齢によって、似合うアイウェアは変わってくるものでしょうか?

岡田:それでいうと、私の場合は年を重ねるうちに、なんでもいけるようになってきたんです(笑)。若いときはもっとツルっとした顔で、シワもなかったから、丸型なんてまったく似合わなかったんだけど、いまは逆に似合うようになってきて。不思議ですよね。たぶん、多くのひとに当てはまると思います。

あと、40代以上になるとクマを隠したいひともいて、そのクマに沿ったフレームが欲しいと。メガネやサングラスは、かけると目の周りのシワやクマが気にならなくなるんです。どちらかという全体の印象で顔を見てもらえるというかね。なので、そういう意味では、確実に目立たなくはなると思います。

〈サイ スペックス〉 HEX-BAR ¥47,300(グローブスペックス エージェント)

ー ほかにおすすめのサングラスはありますか?

岡田:サイ(Scye)〉とコラボレートしてつくっている〈サイ スペックス〉の新作で、バネ性があって軽いもの。テンプルにかなり柔軟性を持たせているので、簡単に曲がったり折れたりしないんです。その分フィット感もかなりいいです。〈オールドジョー〉とコラボレートして作成している〈オールドジョー グローブスペックス オプティカル コー(O.J. GLOBE SPECS OPTICAL Co.)〉の新作スクエア・メタルのサングラス は男性向けにつくったんですけど、女性からも評判がよくて。(詳細は岡田さんのフイナムブログにて)

〈オールドジョー グローブスペックス オプティカル コー〉FITZGERALD ¥36,300(グローブスペックス エージェント)

岡田:〈オールドジョー〉とのコラボレーションの新作には高密度アセテートという、通常より硬いプラスチックでつくったものもありますね。フレームはプラスチックなんだけど、フレームの硬さを活かして細く仕上げていて、しかも軽い。それでいて強度もあって、価格も3万円代でお求めやすいと思います。

ー 最後に、岡田さんは45歳のとき、どう過ごしていましたか?

岡田:1998年に38歳でお店をはじめたので、2005年ですね。当時は、まだメガネがファッションウェアとして確立していない頃だったから「メガネは楽しいんだよ」というのを、とにかく発信してもがいていた時期です。海外ではその当時から「歳を重ねながら、メガネもそれにあわせて楽しんでいく」という感覚があったので、そこに少しでも近づきたかったんですよね。

第2章 あの人はどんなサングラスが好き?

漆畑博紀さん/47歳(プレス)
Instagram:@hiroki_urushibata

〈オリバーゴールドスミス〉COLT 56 – PEWTER ¥38,500(ジービーガファス)
※現在、同色は完売しています。/※本人私物

渋谷のキャットストリート沿いに佇むメガネ屋「ジービーガファス(G.B.Gafas)」でプレス兼常務を務める漆畑さん。メガネとサングラス合わせ、計100本以上を所有する、生粋のアイウェアフリーク。

「サングラスは好きなものが決まっているんです。トラッドな要素があることと、ミリタリーのにおいのするもの。なので、サーモントやウェリントンとか、いまかけているティアドロップなんかの形が好きで」

今日かけているサングラスは〈オリバーゴールドスミス(OLIVER GOLDSMITH)〉のもの。レンズは、調光レンズにしているという。

「もともと無色だったんですけど、調光レンズにしました。調光レンズって昔からあるレンズなんですけど、ここ1、2年で本当にブームですね。着色や褪色の速度も早まってきたのも、人気の一因なのかもしれないです」

コンタクトをしない派を悩ませるのが「サングラスを買ったとしても度付きのレンズに取り替えるから、フレームはメガネのものでよいのでは?」という問題。

「そういう意味ではどれも選択肢ですけど、気にするのはサイズ感です。カラーレンズをいれると、どうしてもキュッと締まって見えるから、小さいフレーム × カラーレンズだと、かけたときに予想以上にサングラスが小さく見える。なので、メガネのフレームでサングラスをつくりたいなら、そのフレームはいつもかけているものより、ひとまわり大きいサイズを選ぶことをおすすめします」

今年で47歳を迎え、ますます紳士になっていく漆畑さん。45歳のときは、どう過ごしていたのでしょう?

「ちょうどコロナがはじまったタイミングで、家を建てる計画をしていたんです。2年がかりで、ようやく今年から建てはじめました。なのである意味、45歳は人生のターニングポイントではありましたよね。これまで、本気で家具を買いそろえたりできなかったけど、ようやく終の住処になりそうなので、いまは家具屋巡りが楽しくてしょうがない 」

長尾悦美さん/41歳(髙島屋ウィメンズクリエイティブディレクター)
Instagram:@yoshiminagao

〈セリーヌ〉サングラス ※本人私物

「髙島屋」のウィメンズクリエイティブディレクターを務めるかたわら、「CITY SHOP」などのコンセプターなども期間限定で務めていた長尾さん。9月からはフリーランスとなり、これからはファッションに限らず、地元である北海道にも目を向けながら、自身のコネクションとノウハウを活かしたディレクター業をしていきたいそう。

この日のサングラスは、「ベイクルーズ」が運営するメガネのセレクトショップ「アイシンク ヒロブ(EYETHINK HIROB)」で購入した、〈セリーヌ(CELINE)〉のフィービー期のサングラス。レンズは入れ直して、調光レンズに変更。

「瞳の色素が薄いから、サングラスは一年中かけてます。これは調光レンズで、紫外線に当たれば暗くなるし、室内に入ると明るくなるから本当に便利。ずっと暗いサングラスをつけているよりも、疲れにくい気がします」

メンズのトレンドは太いセルだけど、ウィメンズのサングラスのトレンドはというと「細いアイアンフレーム&レンズの濃度は薄めのもの」とのこと。そして長尾さんと言えば、ファッションもそうだけど、アクセサリー使いにも一家言あり。

〈スエード(8UEDE)〉と〈ララガン(R.ALAGAN)〉の展示会には毎シーズン行っています。アクセサリーは自分のセカンドスキンのように毎日同じものをつけるようにしていて。そうしたものをベースに、イヤリングだったりネックレスを変えていくという感じ」

最後に聞いたのは、フリーランスとしてのこれからの意気込み。

「仕事ももちろん頑張りたいし、好奇心は常に持っていたいと思っています。それと、自然体でいられる女性でいたい。いまのまま、無理なく、老いも受け入れて、人生を謳歌できたらと思っています」

山田 薫さん/46歳(カメラマン)
Instagram:@kao_ymd

〈オスカー マグヌソン〉デッカード トーガレッド ¥52,800(オスカー マグヌソン)
※本人私物

雑誌や広告、カタログなど、幅広いフィールドで活躍するカメラマン・山田薫さん。着用するサングラスはスウェーデン発のブランド〈オスカー マグヌソン(OSCAR MAGNUSON)〉の一本。

「若いときは見た目至上主義だったから、自分に合う合わないは関係なく、とにかくかっこいいと思ったものを着けていたんです。だけど、そのサングラスが、自分の頭の鉢とサイズが全然合っていなくて(笑)。そこから歳を重ねて、実用性のあるストレスのないサングラスを探していたときに、『ブリンク ベース(blinc vase)』で見つけたのがこれで。100%ぼくの顔にフィットしてますね」

この日のスタイリングは、現行では売っていない〈パタゴニア〉のショーツに、トップスは〈ノーマティーディー(NOMA t.d.)〉。ハットとサンダルは、山田さんが愛してやまない「ネペンテス」で購入したもの。

「『ネペンテス』は8年前くらいに出会って、そこからずっと好きですね。全身『ネペンテス』で買ったものでコーディネートする日も結構あります。大学生のときはワンダーフォーゲル部に所属していたこともあって、その影響でいまだにアウトドアブランドも好きですね」

最後の質問「45歳はどうだった?」の問いには、こう答えてくれました。

「今年の6月で46歳になったばかりだけど、45歳は、大人の階段を登っている感覚が一層強かったかな。突然50代が見えてきて、残りの人生が見えてきたというか。これからはもっと、自分が何をしたのかをしっかり意識しながら暮らしていきたいと思います。それと『45歳に全然見えないですー!』とか言われるんだけど、どちらの意味でもつらいから、そういうのは言わなくて大丈夫なので(笑)」

第3章 ドクターに聞いたサングラスのススメ。

PROFILE

渡邊敬三さん/南大阪アイクリニック 院長

大阪府泉南郡の眼科「南大阪アイクリニック」の院長。白内障手術の名医として知られ、年間700件以上の白内障手術を手がける。自身のYouTubeチャンネル「白内障ラボチャンネル」では、日々、白内障にまつわることを発信している。お気に入りのサングラスのブランドは〈トム フォード(TOM FORD)〉。
YouTube : 「白内障ラボチャンネル

45歳ともなると、見た目も大事なのだけど、それ以上に健康も気になるところ。そこで、目の病気のプロフェッショナルであるドクター渡邊に、疑問を解決してもらいましょう。サングラスってかけたほうがいいですか?

「紫外線にあたりすぎると、黄斑変性症(加齢や紫外線により黄斑という組織がダメージを受け、視力の低下を引き起こす症状)や翼状片(白目が黒目のなかに入り込み視力が低下する症状。紫外線がおもな原因と考えられている)を引き起こす可能性があります。その予防も兼ねて、紫外線をカットするサングラスはかけたほうがいいですね」

紫外線(UV)はUVA、UVB、UVCの3種類あり、地表まで届くのはUVAとUVB。それぞれの波長は UVAが315〜400nm、UVBが280〜315nmなので、400nmまでの波長がブロックできればOKということ。サングラスのレンズを選ぶときには「UV400」と表示のあるものを選ぶべし。

続けて、渡邊さんが指摘してくれたのが、屋外での活動について。

「日差しの強い時期、ずっと炎天下にいて紫外線を被曝し続けると、上記で述べた症状以外にも結膜炎や角膜炎になるリスクも高まります。屋外でスポーツやキャンプをするときにも、それらの予防のためにサングラスはかけるべきです」

45歳といえば、子育て世代。我が子の将来の目も気になるところ。ここまでの話を聞けば「小さいときから紫外線を当てないようにしなきゃ」と思っちゃいそうだけど、実は、小さい頃は紫外線に当たったほうがいいと、渡邊さんは言います。

「コロナになって、家にいる時間が増えたことで、子供の近視が劇的に増えているんです。それは、紫外線に当たる時間が少ないから。実は紫外線って、近視になるのを防いでくれる効果もあって、20歳以下の方は積極的に紫外線に当たったほうがいいんです。1日につき2時間ほど紫外線に当たるのが良いとされています。もちろん、紫外線の強い季節は子供でも結膜炎などが見られることもあるので、注意は必要です」

肌の紫外線は気にするのに、目の紫外線対策を疎かにしているそこのあなた! いまからでも遅くない。将来のためにも、明日からサングラス生活を始めるとしましょう。

INFORMATION

グローブスペックス エージェント

03-5459-8326

ジービーガファス

03-6427-6989

オスカー マグヌソン

https://oscarmagnuson.com

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事#MONTHLY JOURNAL

もっと見る