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【TBSJ】ヒトレシピ。Recipe 1 長坂常(スキーマ建築計画) 夕方、川っぺりでビールを飲みながら食べたいビリヤニ。

【TBSJ】ヒトレシピ。Recipe 1 長坂常(スキーマ建築計画)
夕方、川っぺりでビールを飲みながら食べたいビリヤニ。

鳥羽周作ジャーナル、略してTBSJという連載がスタートします。その中の企画「ヒトレシピ」は、たった「ひとり」に向けたレシピであり、世界でただ「ひとつ」のレシピからネーミング。不特定多数ではなく、鳥羽さんがある一人のためにレシピを考案し、実際に調理しながらトークをするというもの。第一回目のお相手は、「スキーマ建築設計」を率いる長坂常さん。実際のところ、鳥羽さんの本業は料理ではなくトークなのではないかと思うくらい、硬軟さまざまなトピックを漂流しつつ、行き着いたのはいまの時代を捉えた芯のある対談となりました。もちろん料理のレシピも必見!

  • Photo&Movie_Kousuke Matsuki
  • Movie Direction_Hiroaki Takatori(BONITO/Rhino inc.)
  • Moive_Reiji Kurosawa、Keishi Sawahira
  • Movie Edit_Yuki Onoda(BONITO/Rhino inc.)
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Edit_Shuhei WakiyamaRyo Komuta

みんなが突き詰めすぎているものには、もう余地がない。

鳥羽:なんて話をしているうちに、ビリヤニがたき上がりました。めっちゃ美味しそうじゃないですか! ではパクチーのサラダを添えて…、どうぞ食べてみてください。

長坂:あ、すごく美味しい。肉も柔らかいし、サラダと相性がよくて、一緒に食べるとさっぱりする。

鳥羽:あと100回ぐらいつくりたい(笑)。そういえば、今後やりたいことって何かあるんですか?

長坂:島の規模は20〜30mくらいの小さいものでいいけど、無人島に生活できる拠点をつくりたい。そこに船をつけて上がって、エネルギーをどうやって得るかとか、どうやってご飯をつくるかとかを考えたいですね。あとは、駅をつくってみたい。目的地で観光の色が強い駅じゃなくて、通過するぐらいの駅がいい。機能をよく考えた駅をつくってみたいなと。たとえば、電車に乗るまでの間、ちょっと腰かけられて、ああ、このちょうどいい感じの腰かけがいいなとか、サインがすごくわかりやすいとか。そういうのをつくってみたいですね。

鳥羽:大きいものをつくりたいとかじゃないってのがいいっすよね。

長坂:まあ、ぼくはザ・建築家じゃないんですよ。だから、ミュージアムやホールをつくりたいとかまったく思わない。

鳥羽:ぼくも高級でハイエンドな料理は最近やってなくて、定食とかそっちに余白があると思うんです。高級なのって、もう有名な方々がある程度やっているし、素晴らしいものもたくさんある。それより、誰もあまり真剣に考えてこなかったようなことの方が発見が多くある気がします。たとえば、タコライスを真剣にミシュランレベルでつくろうというような話ってないんです。ぼくはそういうのをやりたくなっちゃっていて。コンビニ弁当もどれくらいのレベルまで行けるのかとか、鮭定食もそうですね。

長坂:のり弁もそうですよね。通過するような駅とのり弁。

鳥羽:そうそう。だから、弁当みたいなありきたりなものをめっちゃ美味しくするとか、注目をすごく集めるようなものではないんだけど、そういうものをよくしていくみたいな話はめちゃくちゃいいなと。

長坂:そうですね。そっちの方が選択肢は山ほど残っていて、みんながそれをやったらいろいろと楽しくなるはず。

鳥羽:みんなが突き詰めすぎているものに、ぼくの関与するような余地はもうないっす。逆にそういうところにはまだ手つかずなものっていっぱいある。その一個一個をハイエンドと同じくらいの本気の熱量でつくっていくと、すごい発見もたくさんあるじゃないですか。そこには、たくさんの人を幸せにできる、自分の存在意義みたいなものはあるのかなと思ってます。

長坂:なんか広いなって思えることって、大事だと思うんですよね。それは頂点を極めてもあんまり感じなくて、どちらかというと、なんてことないものにこそたくさん選択肢がある。まだまだやることあるなって思う、そういう喜びはすごい大事かなと。

鳥羽:それって課題感の話だと思っていて、上位の方にはあまり課題がないんすよ。だって、必要に強く迫られたものではないから。でも、日常的でなくならないものに対して自分がやっていくのは、すごく意味のあることだとぼくは思ってます。人生のテーマとしても。「なんでコンビニとの協業をやるの?」とよく聞かれるけど、そこにはよりよくすることができる可能性があって、単純に物をつくる人間として、もっとよくしたいと思える余白が多いんだと思うんですよね。尾道オリジナルのビリヤニもやりたいですね。つくってみんなで分けて食べるみたいな。

長坂:ぼくの知り合いでイノシシを捕まえられる人もいますし、タイで魚を捕まえられる漁師さんみたいな人も知ってます。

鳥羽:じゃあ、そういう料理も並べて、真ん中にビリヤニを2台ぐらいポンと。最近、富山に行って思ったんですけど、どこか観光じゃなくて、家で横になったりとダラダラしてするのが一番いいっすよね。家でグダグダして、ちょっと海に行くとか、そういうのがちょうどいいんですよね。

長坂:それくらいがちょうどいいよね。尾道は、坂を降りたら、上がるのが面倒くさいし。それにしても、よくあれだけ喋りながら、つくれますね。すごいです。

鳥羽:Lineやりながら、肉を焼くっていうのが特技がなんです、はい(笑)。

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