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着ぶくれ手帖 〜金子恵治のファッション備忘録〜  2022年夏のバイイング日記 第一回 イギリス編

着ぶくれ手帖 〜金子恵治のファッション備忘録〜
2022年夏のバイイング日記 第一回 イギリス編

ここ数年のファッションシーンを、名実ともに牽引してきたファッションディレクターの金子恵治さん。コンセプターを務める「レショップ」はもちろん、そのほかのプロジェクトにおいても、服好きを狂喜乱舞させる数々の仕掛けを連発している業界のキーパーソンです。

そんな金子さんですが、今年に入ってより自由に、そしてフリーキーな動きをしはじめています。ひとつひとつ取材していたら追いつかない!というわけで、今後の縦横無尽な金子さんの一挙手一投足を追いかけるべく連載をスタートさせます。タイトルは以前のフォーマットのフイナムブログ(アーカイブはこちらから)から拝借しました。服はもちろん、さまざまなヒト・モノ・コトを取り上げる自由な器でありたいなと思っています。

連載の初回は、この夏に久しぶりに海外で行ったバイイングの完全記録です。

  • Photo_Keiji Kaneko
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Komuta

別注のキモは細かな調整。

ーということで、最初はイギリスに降り立ちました。

金子:ヒースロー空港に到着して、そのままロンドンに泊まり、翌朝からレンタカーでウェールズまで運転しました。最初の目的地は〈コーギー〉の工場でした。このブランドに限らず、イギリスには“MADE in UK”の服がまだまだ残っていて、日本の代理店を通してそうしたブランドと一緒にものづくりができるんですが、ぼくらとしてはそれだけじゃ物足りなかったんです。

ー物足りないというのは?

金子:代理店が発信することだけに頼って売るというよりも、自分たちでしっかりと足を運んで、見て触れることでストーリーができるというか。もう一歩踏み込んでいくことで、お客さんに伝えられることが生まれると思っているんです。そうしたブランドや工場とのストーリーづくりをすることが、イギリスに行った最大の目的ですね。

ー今回は〈コーギー〉以外にどんなブランドの工場へ行ったんですか?

金子:〈ジョン・スメドレー〉と〈ラベンハム〉、あとは〈サンスペル〉にも行きました。ある程度は日本の代理店を通してやりたいことは伝えていたんですが、実際に足を運んでみると、いまは使ってない生地なんかが出てきたりして。そうした生地を使って別注を仕込んだりとか、やっぱり現地に行かないと見つけられない発見があるんですよ。 あとは「これは無理だろうな」と思って諦めていたことが、実際に現地の職人さんと話すと実現できることが分かったりとか。別注って、やっぱりそうした小さなところの勝負なんです。そうした細かな調整が完成度の高さに繋がるというか。

ーなるほど。

金子:それに加えて、それぞれの工場へと向かう道中でいかに目的外のものを見つけられるかが勝負だとぼくは思っているんです。それを同行スタッフにも伝えて、ヴィンテージショップを見つけて数軒寄ったんです。

金子さんのお買い物 その1

これぞといった趣の〈バブアー〉のジャケット。ここから何かが生まれるかも…?

着回しの効きそうなネイビーのケーブルニットは何着持っていても困らない。

イギリスの名門ワークウェアブランド〈ハープーン〉のジャケットに見る用の美。

ー道中も無駄にしないということですね。とはいえ、いいネタが見つからないこともあるんですよね?

金子:多いです。とはいえ、海外ならではの景色が見えたりとかして。こういうのはロンドンでは見られない光景なんですよ。

金子:途中ブリストルにも寄って、そこの古着屋で〈カーハート〉や〈アディダス〉のウェアを再構築したアイテムを見つけたので仕入れたり。そういう発見があったりするんです。

ーカメラも常にお持ちだったんですね。

金子:ずっと首からぶら下げていたので、どこへ行っても「お前はパパラッチか」と言われてましたね(笑)。途中で撮影ができそうなスポットがあれば、日本から持って来たサンプルをスタッフに着せてルックも撮っていました。

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