海外の良さ、日本の良さ。
ーロンドンではとにかく街を巡りながら、いろいろとリサーチされていたんですか?
金子:気になるブランドにコンタクトをしていたんですが、会えないところが多くて。それでリサーチする時間が増えましたね。とにかく足を動かして仕入れに繋げようと。
金子:その中で「ピロー・ヒート」っていうヴィンテージの〈ヴァンズ〉を扱うお店で仕入れに繋げることになりました。世界的に有名なコレクターのお店なんですよ。オリジナルのTシャツなどもつくってて、オファーをしたら卸してもらえることになって。
金子:あとこれは〈ナイキ〉の生地でつくったスーツです。ブランドもオフィシャルで生地を卸しているそうなんですが、ここも街で見つけてコンタクトを取って、仕入れさせてもらうことになりました。こういうビスポーク的な概念で服をつくるブランドが増えている印象ですね。
金子:こちらは〈ベンチュラ〉というブランドで、ずっとオーダーしたかったんですよ。もともと〈フレッド・ペリー〉にいたデザイナーさんが独立してはじめて、こういうワークウェアしかつくってないんですが、やたらとカラバリがあるっていう。どうしてこういうコレクションなのか聞くと「簡単だから」という答えが返ってきました(笑)。だけどめちゃくちゃかわいくないですか? すごくシンプルなワークウェアなんですけど、なかなか真似できないことをしているというか。これはちゃんと仕入れたいなと思ってます。
金子::そして〈パンセレラ〉の工場にも行きましたね。ここはロンドンからクルマで1時間くらいの場所にあるんですが、頑なに何もできないという感じで…。結局色別注のソックスだけオーダーできたんですが、個人的には世界でいちばん好きなソックスブランドなので行けてよかったですね。
ということで、イギリスのバイイングはこんな感じで終わります。
ー滞在中、街の変化であったりは感じましたか?
金子::街の雰囲気も、モノも変わってないんですけど、ぼくの気持ちがとにかく違って、いつもとは違うテンションでした。舶来物ヤバい、みたいな(笑)。
ー従来のバイイングとは違う、新鮮な気持ちが蘇ってきたような。
金子::コロナ禍で海外に向けてアンテナを張ってなかったので、どちらかというと日本のメーカーさんと、海外のアイテムを超えるものづくりをしようっていう気持ちでいろいろ別注をしていたんです。それでクオリティの高いものづくりに満足はしていたんですけど、どこかに煮え切らない気持ちもあったりして。それが海外に行くことで晴れたというか、単純に海外にしかないものに対する憧れと、やっぱりロンドンは歴史が長いので、そうした重みに、いい意味で圧倒されましたね。
ーなるほど。
金子:逆にいえば、日本のものづくりの良さも再確認できたんですよ。日本の高いクオリティにかなう海外のブランドはないので。圧倒的な緻密さとか、製品レベルはやっぱり日本のほうが上ですね。だからこそ課題も見えたというか、自分たちはものすごくいいものづくりができるけど、違う視点も必要なんじゃないかなと。日本で展示会に行くと、生地がこうでとか、これはこういうアイテムで、というストーリーを耳にするんですけど、どこか大事な部分が抜けてるんじゃないかなと思うんです。それはぼくがつくっているものにも言えることなんですけど。
ー日本人はいろんな要素を集めて編集するのが上手ですからね。
金子::海外のアイテムのラフさって日本で表現するのは難しいんですよ。きれいにつくるよりも、ラフにつくることのほうが難しいって言われちゃったりして。
ーむかし金子さんのブログに似たようなことを書いていた記憶があります。こちらの記事ですね。
金子:今回の出張ではそんなことを感じたりしました。ということで、イギリスはここまでですね。
ーありがとうございます。次回はフランス編になります。乞うご期待ください。