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藤井隆行と高橋盾。ノンネイティブとアンダーカバー。必然ともいえるコラボレーションのナラティブとは。
Portraits of Modern Japanese

藤井隆行と高橋盾。ノンネイティブとアンダーカバー。
必然ともいえるコラボレーションのナラティブとは。

日本のファッションシーンを長らく牽引してきた〈アンダーカバー(UNDERCOVER)と〈ノンネイティブ(nonnative)〉。一見すると共通項の少なそうな両者ではありますが、実はここ数年、両ブランドのデザイナー、高橋盾と藤井隆行は静かに親交を深めてきました。そしてこの度、二人の交友が大きな成果物へと結実しました。コレクション名は「OZISM」。すなわち小津イズム。そしてテーマは「和」。なぜここへきての小津(安二郎)なのか、そして和なのか。そこには必然としか言えないナラティブ、そして文脈が息づいていました。

MONK LONG COAT
POLY FLEECE POLATEC®️ WINDPRO®️
WITH GORE-TEX INFINIUM™️ ¥105,380

高橋:これは作務衣の上に着るものですね。

藤井:ベースは〈ノンネイティブ〉の襟がついたステンカラーコートなんですが、そこをノーカラーにして「GORE-TEX INFINIUM™️」を使っています。大きなポイントはこのサイドのジップですね。

高橋:これ便利でしょ? ここを開けると、歩くときにパンツのポケットに手を入れられるんだよね。

藤井:サイトベンツの代わりにファスナーを使うのはよくやるんですけど、ここまで上げたことはないです。ここはすごく〈アンダーカバー〉っぽいところだなって思います。

ー今回、約1年間ぐらいやり取りしていたそうですが、普通のプロダクト制作の流れから言うと、だいぶゆっくりめではありますよね。

高橋:そうですね。けど、その間に何回もサンプルを作ってもらったりはしていたので。ただこういうペースでのもの作りって自分のブランドだと絶対できないんですが、ひとつひとつ時間をかけてものを作るということは大事なんだなっていうのを認識しました。

藤井:そうですね。もちろんシーズン的な部分はあるんですけど、今回のアイテムは来年出たとしてもおかしくないというか。

高橋:飽きの来ない定番的なものを作っているわけなんですけど、それぞれのデザインが注入されているものであるためには、やっぱり何回も試行錯誤しないとできないんだなっていうのが改めて思ったことですね。

ーお二人が気になるポイントというのは、似通っているんでしょうか?

高橋:どうですかね。けど今回はテーマがあったから、どこを削ぎ落としていくかみたいな部分はわりと共通していたかもしれないですね。

藤井:そうですね。あとは好きなものの感じも、実は近いと思います。

高橋:それはそうかもね、意外に。

藤井:ジョニオさんは自分の世界観があるけど、今回は表現の仕方が違う。一方で、僕の場合はこのまんまなんですよね。

高橋:そうだね、藤井はこの感じを突き詰めてるよね。自分も元々こういうものが本当は好きなんです。だけどそれを自分のブランドではあまりやらない。自分が普段着てるものって、ものすごい普通のものばっかりなんです。パンクとかそういうイメージがあるかもしれないですけど、そんな格好してないですし。

藤井:たしかに。〈シェパード〉が普段の格好って感じですよね。

ー話を聞けば聞くほど、お二人は一緒にいて気が楽というか、落ち着くんだろうなと感じます。

高橋:性格は全然違うんですけど、藤井はとにかくすごく真面目で、物作りに対しての姿勢とかも含めて、なんか納得できるんですね。納得というか、安心できる。うん、そこですね。だから奥さんのことを小さい頃から知っているって話をしましたけど、いい男性を選んだねって思います。

藤井:

高橋:親的な目線じゃないけど。そういうのは大きいかもしれません。あとは人としてちゃんとしてるな、っていうことですかね。

藤井:ジョニオさん、そういうところ敏感ですもんね。適当な人に対してのセンサーが半端じゃない。

高橋:それでいうと、もうめちゃくちゃ合格です。人としてどうかっていうのは、日々の過ごし方を見てるとよくわかるんですよね。一方でどういう服を着て、どんな音楽を聞いて、みたいな趣味の部分はそんなに重要じゃないんですよね。もっと人間性のところで合ってないと、付き合いってなかなか続かないと思います。もちろんそのうえで趣味が合ってれば、余計に過ごしやすいのかもしれないですけど。

藤井:最近は、ジョニオさんが葉山の方に新たに拠点を持たれるということもあって、そういう話を聞いているだけでも面白いんですよね。どういう空間にして、そこにはどんな家具を置くんですか?みたいな。

ー秋谷ではなくて、ということなんですね。

高橋:はい。通ってるうちに、あのあたりに住みたいと強く思うようになったんです。最初は、まず一年間通ってみてそれで考えようと思ってたんですけど、一年経ってみて、ますますここだなと思っています。人生を逆算したときに、そろそろ最終的にどこに住むのかということを考えてもいいのかなと。

ー大きな決断ですね。

高橋:はい。だからそっちに引っ越したら、東京に通うような感じになるのかなとか色々考えています。とにかく暮らすにもデザインをするにも、すごくいい環境なんです。何度も言いますけど、行くたびに最高だなって思います。東京は生活する分には便利かもしれないですけど、そういう風に思ったことはないんですよね。そういう気持ちをこの文章に込めています。

ー一番下に「Made by land of rest」と書かれています。

高橋:ランド オブ レスト、安息の地っていうイメージですね。自分のなかでは葉山とか鎌倉あたりまでを含めて、そういうところだと勝手に思ってるんです。このあたりの空気感を自分なりに表現したものが今回のプロダクトなので、自分のなかで今までやってなかったカテゴリーとして、このプロジェクトはなるべく続けてやりたいなと思っています。

藤井:そうですね。それがあんまり商売ベースにならない感じでできるといいですね。とは言っても、しっかり反響をとっていかないといけない部分も当然あるんですが。

高橋:そうだね。けどさ、これって実際結構難しいアイテムだよね。

藤井:そうですかね。僕の周りの友達からは、かなりいい感じのリアクションがきてますよ。待ってました、みたいな。

高橋:それを聞いてすごく嬉しいのと、あと意外だなとも思ってて。けど、今日も上下で着てるんだけど、本当に違和感なく普通に着れるし、この感じでみんなにも着てほしいよね。夏に草木染めバージョンの作務衣を着て、大人の男たちが集まって酒飲んでるみたいなのって、かっこいいじゃない。

ーいいですね、それ。

高橋:自分は絵を描いたりとかしますし、今度陶芸もやりたいと思ってるんですけど、そういうときに着たいですね。それでいろいろな汚れがつくのも、かっこいいなと思います。あとは今日みたいにハットにも合わせやすいし、ビーサン穿いてそのまま海に行けたりもすると思います。

藤井:それ大事ですよね。ぱっと羽織る感じというか。

高橋:そうそう。そのまま飯にも行けるしね。で、この作務衣以外にどんなアイテムを足していこうかっていう考え方だよね。葉山あたりのゆるい日常感をふまえて、小津の世界観「OZISM」のもとにものを作っていくと面白いんじゃないっていう。それぞれが普段作っているものとは違うから、地道にやっていくというか。

藤井:そうですね。積み上げていく感じで。

高橋:不定期に、適当に。

ーライフワーク、ライフプロダクト的な立ち位置というか。

MONK L/S TEE “OZISM”
COTTON JERSEY ¥21,780

高橋:でもオーセンティックではないポジションではあった方が、面白いとは思っています。

藤井:そうですね、オーセンティックではないですね。オーセンティックって意外と自分でもやらないです。

高橋:例えば、スウェットを糸から作ったりしてものづくりしてる人たちがいるじゃない。俺はそういうのにすごく憧れるんだけど、自分が作るのはそこではなくてデザインと機能性が折り混ざったものなのかなって。そういうものって、世の中にないと思うんだよね。それがさっき言ったようなオーセンティックなものを着てる人たちにも浸透してくれたら、一番嬉しいなと思う。

藤井:ジョニオさんの言うように、この形で、この素材でっていう服は、コラボどうこう以前に、世の中にないですね。あとは文脈があるじゃないですか。なぜこの服が生まれたかっていう。そういうところに賛同してくれる人もいるんじゃないですか。いい服ってもういっぱいあるじゃないですか。

高橋:男って好きだよね、そういうの(笑)。

INFORMATION

nonnative×UNDERCOVER

発売日:12月10日(土)
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