ー確かにどこに共感するかは人それぞれというか。素材が好きな人もいるでしょうし、文化的な側面に惹かれる人もいますよね。
藤井:余談ですけど、いま大活躍してるブランドのデザイナーさんでも、〈アンダーカバー〉が大好きっていう人とかいますよ。
高橋:それは本当に嬉しいんだけど、俺からしたらそういう人たちに対しては昔から複雑な思いがあって。変な言い方だけど、なんか馬鹿にされてると思ってたんだよね。
藤井:いやいやいや。
高橋:やっぱりものづくりのやり方が全然違うし。特に俺とかNIGO®がやってきたことって、その当時の現場からしたら、すごくポップだったじゃない。だからなんかそういう話を聞くと、ちょっと疑っちゃうというか。もちろんすごく嬉しいんだけどね。
藤井:逆にというか、僕がいたシーンだと服好きでカルチャーがないっていう人もいますからね。

ーそれでいうと、出自やバックボーンが全く違うお二人が、こうしてコラボレーションしているというのは感慨深いものがありますね。このタイミングだからできたことというか、今だからこその必然性があるような気がします。
藤井:当時は、接点が見つからない時代だったんですよね。
高橋:そうかもね。さっきスウェットを糸から作ってみたいな話をしたけど、そういうことにトライしてみても面白いかもね。
藤井:ありですね。ニュージーランドまで行ってウールを見つけて、みたいな。
高橋:俺が夏によく着てる〈シェパード〉の和紙の糸でできたカーディガンがあるんだけど、それとかすごくいいんだよね。真夏に着てても全然ベタつかないし。
藤井:その糸ってどこで作ってるんですかね。そういうのを掘っていったら面白いんじゃないですか。
高橋:そうだね。和紙みたいに日本古来のものにリンクした掘り下げ方をしていったら、いいかもね。機能的にも本当にすごいものだし。
ースタート地点が機能的なものを作ろうというところじゃないのが「OZISM」らしいですね。
藤井:素材が持つ本当の機能にフォーカスしていくというか。
高橋:そういうものに日本のモダンカルチャーが融合されてる感じっていうのは、 文脈好きからしてもいいかもしれないよね。
藤井:ところで小津って、スーツが多いですよね。
高橋:多いね。ハットをビシッとかぶったりして。だから和服はあんまり出てこないよね。女の人の和服は結構出て出てくるけど。
藤井:『浮草』とか??
高橋:あぁ、あれは着流しとか浴衣なのかな。あの要素もかっこいいんだよね。現代の服に落とし込むのは難しいけど、トライしてみてもいいもしれない。俺、夏に浴衣着たいなって思うんだよね。かっこよくない? 海の家に扇子を持って行く、みたいな。それがTHEな感じだと、ちょっと怖いじゃない。だから街でもスッといける和の感じで。
藤井:ですね。日常に溶け込める感じで定番化していけるとすごくいいですね。なんか小津を観ると“戻れる”感じがあるんですよね、精神的に。あの緊張感もいいし。
ー極限までこだわった画作りとか、ちょっと狂気を感じますよね。

高橋:それがすごく好きなんですよね。ストーリーにしたって、わりとうちらが経験してきたようなものじゃないですか。子育てとか自分の親に対して思ってることとか。それをあんなにもかっちり作るというのがすごい。普通、もう少し脚色したくなると思うんですよね。削ぎ落として削ぎ落として。あの世界観に入り込めない人は全く無理なんだろうけど、一回入り込んだらもう抜け出せないですよね。
ーですね。極論、小津だけでいいのでは、みたいなことを言う方もいます。
高橋:でも自分としては、黒澤明のエンターテイメント性も精神的には入れてるつもりなので。だからこのプロジェクト、名前を変えてやっていってもいいかしれないですね。
ーそれ面白いですね。
藤井:僕は黒澤明はまだこれからですね。
高橋:すごい面白いよ。物語というか脚本がしっかりしてるし、セットも服もかっこいいし。『赤ひげ』は作務衣着てるしね。じゃぁまず『赤ひげ』を藤井家で観よう。
ー二代巨匠をテーマにしていくの、やばいですね。
高橋:やっぱりその二人は外せないですよね。で、最終寅さんまでいっちゃったりして。
藤井:寅さんは究極かもしれないですね。水色にベージュっていう色目がたまらないです。
ーちょっとフレンチ的な。
高橋:あれはもうナイスカラーだよね。そういえば寅さんもノーカラーのシャツだね。