入り口をつくって、誰かの世界観を広げられたらいい。
ー一通りアイテムをご覧になられて、「ビームス」に対する印象に変化は生まれましたか?
大陸:ぼくの中で「ビームス」って、テーラーのアイテムとか、シャツだったりとか、落ち着いた大人のひとたちが着る服が多い印象だったんです。むかしのアメリカのIVYっぽい雰囲気というか、*ダスティン・ホフマンの『卒業』みたいな。
吉川:そう思われているひとも多いと思いますね。
大陸:だけど実際に見てみると、テクニカルなアイテムもあるし、「これ本当に新品なの?」っていうくらい古着っぽいアイテムもあって、20代でも着やすい服が多かった。すごい幅広い世代にリーチできますよね。
吉川:デザイナーさんにそう言われるとうれしいですね。「ビームス」に来てくださる方って年齢層が幅広いんですよ。だからベーシックなものがラインナップされている一方で、シーズンテーマに合わせたいま着たいアイテムっていうのも多いんです。その中で他ブランドと差別化を図るために、うちにしかないものというのを表現する必要があって。細かなデザインはもちろん、色やサイズバランスにもこだわったものづくりをしているんです。古着っぽいアイテムに関しても、古着屋さんにありそうだけど、探してもないような服をデザインするようにしていて。
大陸:そのバランス感というか、絶妙なところを突いている感じがいいですよね。
*ダスティン・ホフマンの『卒業』=1968年公開のマイク・ニコルズ監督作。大学を卒業し前途洋々な主人公ベンジャミンが、中年女性ロビンソン夫人とその娘のエレインと生々しい三角関係を繰り広げる青春ロマンス。ダスティン・ホフマンの映画デビュー作であり、アカデミー監督賞を受賞した青春映画の名作。

ーお店ではそうしたアイテムと一緒に〈DAIRIKU〉の服も置かれているわけですが、親和性みたいなものは感じますか?
大陸:一緒に並んでいても全然違和感ないですよ。今回もスタイリングさせてもらいましたけど、めちゃくちゃ合わせやすかったですし。先ほども話した通り、ぼくは古着や映画が好きなので、そういう意味でも似ているところはいっぱいありますよね。
吉川:ぼくも高校生のときに古着屋でバイトをしていて、そこがファッションの入り口だったんです。当時買ったアイテムでいまでもいいなって思うものがあるんですけど、歳を重ねてサイズ的に全然着れないんですよ(笑)。そういうアイテムを参考に、現代的なサイズバランスでつくり直すこともありますね。
大陸:着れなくて、そのまま取って置いてある悔しい服、ぼくもいっぱいあります。でも吉川さんが仰ったように、そういうアイテムが入り口になって、また新しい服がつくれるんですよね。ぼくも服をデザインしながら、自分の服が誰かにとって映画の入り口になったり、古着の入り口になったらいいなっていう思いがあるんです。そうやって誰かの世界観を広げられたらなぁと。いまは情報がたくさんあるから、いろんな入り口があるんだろうなと思います。
ー最後に大陸さんに聞きたいんですが、これからの「ビームス」に期待することはありますか?
大陸:また一緒に服をつくりたいです。それで空間を演出して、音楽イベントもやりたい。ファッションだけにとどまらず、いろんなカルチャーをミックスしたことを以前やらせてもらったので。そういうことができるのって「ビームス」くらいしかないと思うんですよ。今年は難しいにしても、来年とか、また絶対にやりたいと思っているので、ぜひよろしくお願いします!

対談を振り返って…

「大陸くんとは去年知り合ったんですけど、ちゃんと話すのは今回がはじめてで。だけど本人の人柄がすごくよかったのと、『ビームス』のことをリスペクトしてくれているのが伝わってきて、本当にうれしかったですね。そういう人柄のよさが、周りのひとたちを巻き込む力になっているんだろうなとも感じました。またコラボしたいって言ってくれたのもうれしかったですし、ぼくらにしかできないこと、たとえばグローバルブランドと〈DAIRIKU〉を繋げたりとか、これまでになかった形でサポートしていきたいですね(吉川)」