自分のイメージの外側にある価値に反応する。
ーパンツ専業ブランドというもの自体、数少ないですが、海外のファクトリーと協業して特別な別注アイテムを継続しているという取り組みはかなり珍しいですよね。なぜそれができるのか、理由を考えてみたのですが、〈ニート〉はアイコニックなスタイルの軸を持っていて、一方でデザイナーズのような世界観を示すわけではない。そこにはプロダクト的な普遍性がある。だからコラボレーションによって新しい価値が生まれて、各国のスタイルやルーツに繋がってゆけるのかな、と。トラッドがベースにあることも大きいと思いました。
金子:〈ニート〉の実体はまさにそこにありますね。
西野:〈ブルックス ブラザーズ〉で培ったトラッドの背景はあるけれど、ぼくはデザインを勉強してきた訳でもないし、ザ・デザイナーではないんです。だから、軸はありつつ、振り幅は大きいのかもしれません。他のブランドだったらここからここまでって区切るところを、毎回ジャンプしていくような感覚があるんですよね。
自分の服装にとっても、〈ニート〉が軸になっていて、そういうパンツをつくるという意図は最初から持っていました。きちんとした=NEATという名前の由来もそこにありますね。
金子:デザイナー気質の人だったら、〈ザンス〉に丸っと任せてつくってもらうなんてことはできないですからね。
ぼくには、「バイヤーとは」「デザイナーとは」みたいな持論があるんですけど、自分のビジョンが明確に見えている人はバイヤーよりデザイナー向きだとに思っているんです。
ー詳しく教えていただけますか?
金子:明確なイメージを持って、そこに当てはまるものを買い付けに行くというより、そこにあるものをたくさん見て、触れて、その中から新しいものを発見して、必ず何かを持ち帰る。自分にとってのバイイングはそういうものなんです。それは自分のイメージの外側にある価値に反応するという作業なんです。だから、明確なビジョンがある人は、デザイナーの方が向いていると思うんですよ。そう考えると、大ちゃんはデザイナーでありながら、バイヤーのような一面もあって、その上で経営者的なバランス感覚もあって、満遍なくポテンシャルがある。そして重要なのが、そこに余白も残されているということ。だから、今回のようなやり方ができるんですね。
西野:ぼくとしては、そこまで考えていなくて、「〈ザンス〉につくってもらえるなんて、すごない?」みたいなことでしかないんですけどね(笑)。
金子:まさに、これが余白なんですよね(笑)。

NEAT PARIS VANEAU ¥57,200
ーインスタライブでは、〈ザンス〉の代表のフランクさんに”袴的なパンツ”と称されていました。
西野:袴?って思いましたけど。納得しました。深いプリーツの取り方とか、直線的な面の出方とか、そう言われると共通する要素があるのかなと。
金子:あの話は面白かった。自国の文化とか、無意識のクセのようなものが意図せず入っているという。
西野:ブランドリリースを書くときに使いますね。
金子:英語で”HAKAMA”ってね。袴もまた、余白の服です。

西野:そういえば、インスタライブが終わった後に知ったんですけど、〈ザンス〉のパンツには、いつもフランスの通りの名前を使用しているらしくて、〈NEAT PARIS〉には、ヴァノー(VANEAU)っていう名前をつけてもらったんです。下げ札に記載されているんです。
金子:すごい。もはや〈ザンス〉のひとつの品番になっているっていうことなんだ。
西野:驚きました。フランクさんに「これでいい?」って聞かれて、元気に「Exactly!」って答えましたね(笑)。
