料理と音楽をつくる喜び。

PROFILE
今年で結成10周年を迎えたエクスペリメンタル・ソウルバンド「WONK」のボーカル。元フレンチシェフの経歴を持ち、食に関するプロデュースも行っている。所属するクリエイティブレーベル「EPISTROPH」が4月にオープンさせたワインバー「winestand TEO」で、ナチュラルワインをより深く楽しむためのさまざまなイベントを不定期で開催。
―普段はどんな料理をつくっているんですか?
長塚:自分が食べるための料理と、誰かに食べてもらうための料理は、まったくの別もので。自分の日々の食事は、玄米と納豆とお味噌汁、あと茹でた鶏肉とか、栄養のバランスだけを考えています。
―誰かに食べてもらう料理は?
長塚:美味しさを求めたり、テーマに沿ったり。考え方が全然違います。
―家庭料理と外食の違いですね。ちなみに今日はどんな料理をつくっていただいているんですか?
長塚:色んな具材を入れたオイルベースのパスタです。

―さすが、すごく手際がいいですね。調味料にもこだわりがあるんですか?
長塚: 例えば、塩だったら粒子の細かさやミネラル含有量などの特徴で使い分けています。下味とか調整とか、塩の種類で仕上がりが変わるんです。今日使っているフランスのゲランドという地域の塩は舐めてもえぐみがない、まろやかな味。
―塩の味の違いを意識したことはなかったです。
長塚: パスタも本気でつくるなら、数種類を使い分けたいです。でも、めんどくさいんで、普段は1種類しか使いませんけどね(笑)。


ーYouTubeチャンネル「Kento’s Kitchen」や、今年の4月にオープンされた「winestand TEO」など、さまざまな取り組みをされていますが、今後食で挑戦したいことってあるんですか?
長塚: 「winestand TEO」をオープンしたこともあって、世界各国のワイナリーを巡ってみたいんですよね。
―同じ地域でつくられた、同じ品種のブドウでも、畑が違えば味も違うらしいですね。
長塚: そうなんです。だから、ブドウの様子から製造工程、あとはワイナリーそのものを見学しながら、その土地の食事を味わったり、音楽を聴いたりして、しばらく過ごしてみるのもいいなと。

―音楽も料理も、人生を豊かにする文化ですよね。「WONK」は今年で結成10周年。忙しない生活を送られてると思いますが、そんな中でも料理は日々の日課ですか?
長塚: そうですね。音楽の制作と並行してメニューの開発もしているので、ほぼ毎日キッチンに立っています。音楽も料理も、つくる幸せがあるんです。完成したものを聴いて、食べて、喜びを感じる。好きなことをやって生活できる環境は、本当にありがたいです。
―「WONK」としては、どんな次なるステップを思い描いていますか?
長塚: この前、荒田(WONK / Dr.)と一緒にゴルフのコンペに参加して、「SOIL & “PIMP” SESSIONS」の社長と、「Nulbarich」のJQくんの4人で回ったんですよ。いろんな話をするなかで、JQくんが「武道館みたいな、大きいステージにも挑戦しなよ」って言ってくれて。先輩ミュージシャンとそういう話をする機会はあんまりないので、すごく背中を押されました。
ビルボードライブやブルーノートなどのステージでは、心地いいベストな音を伝えられる自信があるんですけど、大きい会場では細かい音が届かないこともありまして。それを乗り越えられるようなアレンジなどができるようになりつつあるので、いまは満足いく形に仕上げていくフェーズです。