ディテールや素材への細かすぎるこだわり。
―アレンジしたポイントについて教えてもらえますか。

大北: まず考えたのは、「ウエーブプロフェシー LS」はデザインとして完成されているので、余計なことをするのはやめよう、と。大枠は変えずに、ディテールや素材に自分なりのアレンジを加えることで、ファッションとしてあわせやすいものにすることを意識しました。
齊藤:幸平さんからの提案は、パッと見はダークトーンのトーナルカラーのようで、実はディテールや素材が複雑な組み合わせで構成されているというもの。細部をじっくり見てもらえると、そのことがわかります。
大北: たとえば、アッパー側面のTPUパネル。インラインではマットな素材が使われていますが、今回のモデルでは光を適度に透過する素材を採用し、さらにその下にリフレクター素材を配しています。
齊藤:それによって、光を100%反射するところと、透過を通じて鈍く反射するところが出てくる。微妙な違いですが、そのコントラストが美しい。明るいところで見ると、見た目の軽さがまったく違うんです。


―たしかに、光の当たり方によって表情が変わりますね。
大北: ほかには、シュータンの生地はあえて有機的な表情のものをチョイスしたり、アッパーのメッシュは考え抜いた末にいちばんベーシックなものに落ち着いたり。また、ヒールには虹色に光るリフレクターを配置しています。ダークトーンのなかに、ちょっとしたアクセントを入れたいと考えて。

齊藤:制作過程で幸平さんが語っていたのは、今回のコラボレーションモデルは、なにげない都市の風景がイメージソースとしてあること。都市の風景の一瞬を切り取ると、全体的にはダークトーンです。でも、細部に目を向けると、地面にオイルのようなものが流れ出ていて、その表面が虹色に反射していたりする。そしてその表情は同じに見えて、刻一刻と変化している、と。オーロラのリフレクターや半透過のTPUパネルは、そのイメージから着想を得ているとか。そんな話を聞いて、アイデアの独創性や発想の柔軟さに改めて感銘を受けました。。
大北:自分は最近、ファッション以外のものにも関心が向かっています。建築とか、家具とか、陶器とか。そんななか、マテリアル感があるものに惹かれることが多くて。今回のスニーカーのアレンジでも、素材の見本帳を端から端までじっくりチェックしたうえで、自分なりに考え抜きました。「ウエーブプロフェシー LS」はパーツの数が多いだけに、アレンジできる幅の広さもケタ違い。一般的なスニーカーの比ではありません。大変でしたが、そのぶんやりがいもありましたね。