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今野 智弘
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栗原 道彦
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藤原 裕
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阿部 孝史
PROFILE

1977年生まれ。2001年
N.Yより〈ネクサスセブン〉を始動。他にもデニムブランド〈ビヨンデックス〉や、現在プロバスケットボールBリーグ「アルティーリ千葉」のクリエイティブディレクターとして辣腕を振るうなど、その活躍は多岐にわたる。
Instagram:@nexus7konno
PROFILE

1977年生まれ。2011年よりフリーバイヤーとしての活動を開始。古着屋のみならず数々のセレクトショップやブランドからも絶大な信頼を集める日本屈指のヴィンテージバイヤー。奥渋谷には自身のショップ「ミスタークリーン」も展開中。
Instagram:@michihikokurihara
PROFILE

1977年生まれ。原宿の老舗ヴィンテージショップ「ベルベルジン」のディレクターを務めるほか、その豊富な知識を生かして数多くのブランドのデニムを企画。近年のGジャンブームの集大成とも言える『Levi’s VINTAGE
DENIM JACKETS Type l/Type ll/Typel lll』の監修人でもある。
Instagram:@yuttan1977
PROFILE

1976年生まれ。これまで編集・ライターとしてメンズファッション誌に携わり、多くの古着関連の記事を扱ってきた有識者。ヴィンテージバンダナのコレクターとしても知られる。現在はベイクルーズでECのコンテンツ制作を担当。
Instagram:@abeabc1976
第一講
今野智弘

70’s TOWNCRAFT WOOL CHORE JACKET
今野:まずひとつめは、〈タウンクラフト〉のカバーオールです。〈リー〉の定番モデル91-J型のウール仕様で、70年代頃のものですね。〈タウンクラフト〉以外にも〈レイクランド〉(ウィスコンシン州に拠点を置いた中堅スポーツウェアブランド)からもリリースされているようです。「ベルベルジン」の20周年記念のときに、同型の黒が出たもののタイミング悪く買い逃してしまって。
阿部:黒もあるんだね。

今野:はい。それからしばらく探し続けていたところ、ヤフオクやメルカリにも出たことを人づてに聞いたのですが、どれも事後報告でしたし、知人の店でも30万くらい付けていたのにすぐ売れちゃったみたいで。
阿部:ひえー。30万って。
栗原:古さん(ベルベルジン副社長の古舘さん)が、これのネイビーをよく着ているイメージがあって、個人的には“古さんモデル”って呼んでいるんですが(笑)。
藤原:確かに。いまでもネイビーが出てきたら、まずは古さんに声がけするようにしているし。
阿部:3つのブランドから見つかっているってことは、どこかのOEMだったのかな?

藤原:どうなんでしょう。アイテム自体がとにかく出てこないので、しっかり比較したことがないんですよね。〈タウンクラフト〉のものは、袖口のボタンも受けのない単なる飾りだったりするのですが。
栗原:ちょうど〈リー〉がマルチストライプのカバーオールをリリースしていた頃と同時期だろうから、ファッションの文脈でこういうものがフィーチャーされたタイミングだったんでしょうね。
阿部:まんま91-Jってところが面白いよね。
栗原:かなり真正面から喧嘩売ってますよね(笑)。


藤原:まあ、オリジナルのトリプルステッチに対して、ダブルステッチ仕様だったり、一応の逃げ道はつくってますけど。
阿部:そんなに出ないものなの?
栗原:アメリカでももう15年くらいは見てないですね。

藤原:ウチでも過去に、イエロー、グリーン、オレンジ、それから先の話にも出たネイビーを売っていますが、今野さんが見せてくれたブラウンは初見でしたし、黒も20周年のタイミングがおそらくはじめてだったんじゃないかと。
今野:素材をウールにするだけで、ちょっと上品なイメージになったり、デニムとはまた違った魅力があるのですが、いかんせんモノ自体がなく、集めようにも集められなくて。
栗原:ファッションとはいえ〈ラングラー〉のピーター・マックスみたいにもろ70’sなシルエットじゃないので、いまの感覚でも問題なく着られる感じもまたイイですよね。
「ピンピンに白いのも気恥ずかしいですし、ちょっと薄汚れたものを引っ張り出して」

50’s Lee 100-J、80’s CARTERS CHORE JACKET
今野:続いては、白ジャケという括りで。手に入れた順に並べると〈リー〉、それといま着ている〈カーハート〉、〈カーターズ〉(1859年にニューハンプシャー州にて創業。いまも子供服を中心に展開)という時系列なんですが。
藤原:俗に“プロト”とも呼ばれるウエスターナー(100-J)の最初期モデルですね。


今野:そうそう。タグは白ではなく当時のデニム(101-J)同様に黒が使われていて、ウエスターナー表記もなく、ピスネームは®のみ、ボタンにもライダース刻印があるタイプだね。
藤原:ウエスターナーの正式デビューが1959年ですから、おそらく前年や同年の最初期に少量だけ生産されたものなんじゃないかと。
今野:何着か手元にあった中でも、この黒タグだけ残して他は手放してしまったんだけど、最近あまり見かけなくなったし、サイズも悪くなかったので倉庫から引っ張り出してきて。
阿部:なんでいま、白ジャケなの?
今野:少しでも爽やかに見られたいので(笑)。
栗原:ここ、一同「爆」って書いておいてくださいね(笑)。

今野:(笑)。子供が生まれてから、ぼくがあまりにボロボロ過ぎると何かしら子供たちにも迷惑が掛かりそうですし(笑)、ちょっと小綺麗なものをと思ってみたものの、かといってピンピンに白いのも気恥ずかしいですし、ちょっとダメージやリペアがあったり、薄汚れたものを引っ張り出して着ている感じですね。
栗原:でも、よく何年も前にこれだけ大きいサイズを買ってましたね?
今野:黒タグだったからかな。確かに46くらいはありそうだよね。
藤原:(指を広げウエストベルトに合わせながら)そうですね。44から46ぐらいですね。
阿部:えっ、いまのでわかるの? さすがプロだわ。このプロトと呼ばれる個体って昔からずば抜けて高かったし、いまもあまり変わってない気がするんだけど。

藤原:それこそ90年代のヴィンテージブームの時にはNot For Saleにしているショップもありましたし、もしかすると当時の方が高かったかもしれませんね。
栗原:プロトではない後年のモデルになると、いまだと5万円前後くらいですかね。こちらは00年代以降は相場があまり変わってないイメージ。
阿部:そうだよね。
藤原:あの頃と大きく変わったのはサイジングですよね。当時は大きいほど安かったものが、いまは逆転して大きいほど高くなる傾向にあって。さらに色物になるとまた一段階価格帯が上がっています。大きめオリーブだと20万、モカだと10万、黒だと200万くらいが相場かと。
阿部:赤もあるんだよね?
藤原:ありますね。ぼくもいままで2着しか見たことないのですが。
阿部:〈ラングラー〉の赤(12MJZ)みたいに、ロデオと関係していたりするのかな?
藤原:当時対抗してごく少数作った可能性もないとは言い切れないですね。

阿部:ちょうど今野くんが今日着て来た〈カーハート〉も白ジャケの部類だよね。これも昔手に入れたものなの?
今野:これは5年くらい前ですね。
阿部:ハートタグの40sだし、いまだと相当高いだろうね。
藤原:そうですね。ちょっと前に生成りでカンヌキが緑の個体が出て、59万8,000円で店出ししたら一瞬で売れちゃって。
阿部:カンヌキって赤と緑があるの?
今野:ほとんどが赤ですね。これは白ジャケのマイブームが来ていちばん最初に着はじめたもので。デニムと違って生成りだとテーラードジャケット感覚で使えますし、簡単にそれっぽくなるというか。
阿部:ここ数年の〈カーハート〉の高騰ぶり、本当にすごいよね。

栗原:そうですね。きっかけはダブルニーのワークパンツやデトロイトジャケットみたいな、いわゆるレギュラー系なんでしょうけど。そこら辺が高騰すれば、それ以前のものがより高くなるのは当然ですし、全体的に上がってますよね。
藤原:そうね。ちょうど今野さんが手に入れた辺り、5年ほど前から徐々に高騰しはじめて、ここ1、2年で一気にまた上がって。生成りなら当時の約倍から3倍、もちろん状態にもよりますがデニムのハートボタンのチェンジでデッドストックに近い状態だったら500万とか付けてもおかしくないですし。
阿部:500万って(笑)
今野:80年代後半〜90年代前半に〈カーハート〉のボディを使った〈ステューシー〉のNYC限定ラインが数モデルあったじゃないですか。あのラインの高騰が特にすごくて。すでに別注品じゃなくても、ベースに採用されたモデルまで軒並み高騰していて。
阿部:そうなんだね。別注モデルがとんでもないことになっているのは知っていたけど、ボディまで高騰しているのか…。

今野:3つめの〈カーターズ〉は、おそらく70から80年代頃のものだと思うのですが、まずダブルブレストが気に入って。以前〈ダブルウェア〉(中堅ストア系ワークブランド)の同じくダブルブレストのカバーオールを集めていたのですが、オーバーコートみたいに大きめのものばかりだったため、ある程度溜まったタイミングで手放してしまったんですね。いまの感覚なら良かったんでしょうけど。この〈カーターズ〉はまだ許せるサイズ感だったので残しておいたのと、品質表示タグにある“Still Made In USA”(まだアメリカ製です)という文言も気に入って、自分のブランドでもサンプリングさせてもらっています。


阿部:それはカッコイイ。
栗原:品質タグに記載されたレジスターナンバーから〈スマート スタイル インダストリーズ〉社製ということがわかるので、生産は外に出していたのかもしれませんね(オシュコシュなども現在はカーターズ傘下にある)。ボタンにも「SELEX」(セレックス)という、あまり見かけない刻印がありますし。
今野:セレックスだと、それほど古くないので80年代かも。前を開けて着るとあまり様にならないんだけど、しっかり留めるとPコートみたいにちょっとお堅く着ることができるので結構重宝してますね。
「たぶん古着屋さんからは目の敵にされてると思う(笑)。たまに早朝のローズボウルに並んでいると、そういう視線を感じる」

40-50’s KAHANAMOKU ALOHA SHIRT、50-60’s OPEN COLLAR SHIRT
今野:続いては、ハワイアン含め半袖の開襟シャツを何枚か持ってきました。ひとつめは、「ベルベルジン」の25周年記念のタイミングで手に入れた、通称“モンロー柄”と呼ばれているシャツ。ボタンも大きいし、おそらくパジャマだったじゃないかと考えているんだけど。
栗原:もしかすると対のショーツもあってビーチウェアって可能性もありますよね。半袖のパジャマは玉数もあまりありませんし。
今野:確かに、その線もあるかもね。
阿部:いつ頃のものなの?

藤原:(マリリン・)モンロー全盛期の頃でしょうから50から行っても60年代頃だと思いますね。
今野:これを手に入れた後に、じつは同じ柄の長袖シャツを見たことがあるのですが、細かな詳細はわからないままで。ただ、この柄はもう自分のブランドでサンプリングさせてもらったんで、もう世に出してもイイかなと(笑)。
阿部:長袖のものはパジャマだったの?
今野:いえ、直接モノ自体を見たワケではなく、「ベルベルジン」の出荷前動画で見たので細部まで見れなかったんですよ。
阿部:なるほどね。

今野:続く2枚目は、〈カハナモク〉のパイナップル柄です。数あるパイナップル柄の中でも、この〈カハナモク〉のものが別格で気に入っていますし、黒×白っていうのも決め手でしたね。
阿部:普通はグリーンとかネイビーだもんね。
今野:そうですね。あと黒×ピンクも持っていたんですが、コンディションが良くなかったので手放してしまって。
藤原:ぼくも昔、黒×パープルという変わり種を持っていました。
今野:そんなのもあるんだ? 濃いパープル?
藤原:めちゃくちゃ濃いワケではないですが、ピンクとは明らかに違う色みでしたね。
阿部:黒×ピンクは極稀に見かけるけど、黒×白ってかなり珍しいでしょ?
藤原:そうですね。ぼくもはじめて見ました。
今野:確かインスピレーション(定期的にLAで開催されるヴィンテージメインの大型エキシビション)で譲ってもらって、当時はそれほど気にしてなかったものの、手に入れてから探し始めたら全然見かけなくて。
阿部:年代は50くらい?

藤原:デカタグ(60年代になると内タグが小さく変遷する)なんで40から50年代ですね。
阿部:ぼくはあまり着ないからわからないんだけど、やっぱりレーヨンって洗濯とか気を使うものなの?
今野:ぼくも怖いのでクリーニングに出しちゃいますね。ただ、この個体に関しては“ウォッシャブル”表記があるんですよね。
※近年は技術が進み縮まないレーヨンも開発されているものの、ヴィンテージなど旧いレーヨンは水を吸うと糸径が太くなり、丈が縮んでしまう“膨潤収縮”という特性を持っている。
阿部:まあ、そうは書いてあってもさすがに容易く洗えないよね(笑)
今野:ですね。

栗原:でも、インスピレーションとかローズボウルとか、あれだけ日本人のバイヤーが必死になって買付けしてるのに、今野くんみたいに買付けじゃない人が良いものをサクッと抜いていったりすると悔しいですよね(笑)
今野:たぶん古着屋さんからは目の敵にされてると思う(笑)。たまに早朝のローズボウルに並んでいると、そういう視線を感じるんだよね(笑)。
栗原:遊びに来るなと(笑)
今野:そうそう。でもぼくも仕事なんだけどね(笑)。
阿部:今野くんの場合、山田さん(ベルベルジン代表)とかと一緒にベンダー扱いで入れるんじゃないの?
今野:はい。やっぱり山田さんの存在は本当に大きいですよ。向こうのディーラーたちも山田さんを見つけるとすぐに売り込みに来ますし。
阿部:へえー。やっぱりすごい人なんだね。
藤原:たまたま20年ぶりに出店したというバイヤーさんが昔の価格のままで出していて、ちょっと忙しかったからゆっくり見れず、後で山田さんに事後報告したら、午前中に目ぼしいものは概ね抜いておいたと(笑)。
阿部:さすがですな。
第二講
栗原道彦

80’s〜90’s ERO T-SHIRT
栗原:ひとつめは、エロモチーフTシャツです。一見するとわかりにくい、シャレとして着られる範囲のモノを何枚か持ってきました。古着を売る側の人間なので、こんなことを言うと問題あるのかもしれませんが、ここ数年のTシャツの高騰ぶりが正直しんどくて…。まだ高騰していない中にも面白いものが確実にあるってことをあえて言いたいなと。
今野:もうアメリカでも買えない価格になっているよね。
栗原:そうですね。でも、アメリカに関してはピークと比べると若干落ち着いてきた感じはします。結局、向こうの若いバイヤーたちもTシャツを経て徐々にトゥルーヴィンテージへと移行しているので。タイとか東南アジアはいまも相場が上がり続けているみたいですが。
阿部:高騰しているのはどんなカテゴリーなの?

栗原:バンド系、映画系、フォトプリを中心としたアート系、あと〈ステューシー〉辺りがメインですね。
藤原:〈ステューシー〉の中でも特に高いものだと?
今野:当時クルーに向けて配っていたTシャツとか、市場に出回らなかったものまで含むと結構レアなモデルもあると思うから、未知数ではあるよね。
栗原:その辺りのレアなモデルはもちろん、これまであまり日の目を見なかった中間的な立ち位置のモデルまで高騰していて…。もう数年前くらいからはアメリカでもUSメイドの黒タグはデザイン問わずで100ドルくらい付いてることが多くなりました。
阿部:〈パウエル(ペラルタ)〉とかも高くなってる?
今野:高いですね。

栗原:近年だと色んなモノの相場が急騰する原因は、ぼくらのような古着屋ではなく、ヤフオクやメルカリ等の個人売買サイトにある場合が多いんじゃないかと思います。過去の相場を無視した異常な高値で誰かが落札してしまうと、それを見た他の人たちが、その法外な価格を相場だと思って後に続いてしまう。
今野:某Tシャツコレクターの方たちに以前聞いたんだけど、ヤフオクとかメルカリを見て、同じモデルが3枚以上それなりの価格で取引されていたら、それを相場とみなして以降はそれ以上の値付けをするみたいだね。
栗原:なるほど、そうなっているんですね。
阿部:ところで、エロモチーフTはいつ頃から集めはじめたの?


栗原:10年くらい前ですね。過去にこの企画ではウィリアム・ウェグマンのフォトプリントとか、レイモンド・ペティボンとか、モーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』のTシャツとかを紹介しているんですが、あの辺も流行ってしまうとやっぱり着づらくなって。徐々にエロモチーフとか、まだあまり目を付けられていないカテゴリーに流れていった感じですね。
阿部:結構あるものなの?
栗原:いわゆる売春宿のスーベニアとかは結構出てくるんですが、こういうちょっとジョークが利いたものは意外とないんですよ。
藤原:ところで今日着ているTシャツは何なの?
栗原:まったく知らない人(笑)。
阿部:えっ(笑)。

栗原:もともと大阪の「チャッピー」や高円寺の「メチャ」とか、関西系の人たちが好きなジャンルで。彼らは“誰やねんシリーズ”と呼んでいるんですが(笑)、彼らに敬意を払って着させてもらっています。誕生日とかクリスマスなんかの記念日に家族が自分たちで着るように少数つくったモノなんですが、出てくるのは子供や老人のフォトがほとんどで、老人モノはなんとなく着づらいので子供モノを見つけたら買っている感じですね。
阿部:それは面白いね(笑)
「個人的にいちばん探しているカールスジュニアなんてまず見ない」

80’s〜90’s McDonald’s T-SHIRT
栗原:続いてはマクドナルドのTシャツです。日本ではドナルドと呼ばれていますが、海外での正式名称はロナルドのピエロを筆頭に、一昔前まではオリジナルキャラクターが結構いたのですが。
今野:なんかクレームが多くなって、だんだん使われなくなったみたいね。
※恐怖排除や多様性など諸説あるものの、2000年代初頭頃にアメリカの市民団体CAIことコーポレート アカウンタビリティ インターナショナルが起こした“反ロナルド運動”(ポップなキャラクターを採用することで子どもたちを高カロリーで不健康な食品へと誘導している)が影響しているという説が有力。

栗原:いまの若い世代だとドナルドをギリギリ知っているくらいで、他のキャラクターはおそらくわからないんじゃないかと。
今野:いろいろいたよね。ビッグマックポリスとかハンバーグラーとか。
栗原:あと毛むくじゃらの鳥みたいなの(バーディ)もいましたよね。でも、マクドナルドなんてアメリカの国民食みたいな立ち位置にあるものの、じつは意外とTシャツとかアパレル系は出てこないんですよ。
阿部:へえー。確かに意外だね。
栗原:出てきても近年モノののノベルティTシャツ、ユニフォームなんかがほとんどで。
阿部:今日持ってきてくれたものは、それなりに旧いものなの?

栗原:80〜90年代ですね。ダウニーにある現存する世界でいちばん旧いマクドナルドで売られていたスーベニアだったり、フランスのマクドナルドのノベルティとか。
阿部:マクドナルド系のコレクターって、それほどいないのかな?
栗原:ことTシャツとかアパレルに限るなら、アップルとかマイクロソフトとかのIT系の企業モノは結構コレクターがいると思うのですが、マクドナルドはあまり聞いたことがないですね。


藤原:これはいまの世代にもウケそうだし、流行りそうなジャンルだね。
栗原:でも旧いものだと出てくるのはほとんどキッズ用で、大人が着られるサイズは滅多に出てこないんだよね。
藤原:なるほどね。
栗原:他のファストフード系だと、イン・アンド・アウト・バーガーはいまでも各店舗でスーベニアを販売しているから結構出てくるけど、ジャック・イン・ザ・ボックスとかKFCなんかもあまり見かけないし、個人的に好きなハンバーガーチェーンのカールスジュニアなんてまず見ない。タコベルだけはめっちゃ玉数あるけど。
藤原:ちょっと気にして見てみるわ。
「オフィシャルも何枚か持ってはいるのですが、やっぱりちょっと変わったものが個人的には好き」

70’s〜80’s BOOTLEG T-SHIRT
栗原:続いては、某夢の国のマスコットキャラクターのブートTです。オフィシャルのクラシックミッキーとか、ファンタジア系とかも結構好きで何枚か持ってはいるのですが、やっぱりちょっと変わったものが個人的には好きで。
今野:これはヤバいね(笑)。絶対怒られるヤツでしょ。

栗原:夢の国に着て行ったら追い出されるかもですね(笑)。水色のものはワシントン州にあったハンフォードサイトという、マンハッタン計画の頃から存在した核施設群がモチーフで、アメリカで最も放射能汚染されている場所ということでネズミが防護マスクを付けています。
阿部:いつ頃のものなの?

栗原:80年代ですね。この下駄を履いてるタイプは、もう一発旧い70年代のもので、先日ハワイで見つけたんですが、日系人が多いハワイらしさがあるデザインですよね。
藤原:このカリフォルニアのものもプリントのバランスが面白いよね。
栗原:そうそう。これも70から80年代頃のものだけど、ちょっと旧めのモチーフを使っていたり、プリント位置がめっちゃ上に寄ってる謎のバランスも気に入っていて。

今野:いわゆる“スタンディングポーズ”と呼ばれるオフィシャルでも有名なポーズがあるじゃないですか? 近年はあのポーズにも規制がかかっているらしく、容易く使えなくなっているみたいなんですよね。
阿部:へえー。何でなんだろ?
今野:みんなが一斉に使い過ぎたんですかね? ちなみにたまに見かけるカリフォルニアだったり、ハーバートだったり、特定の地域や校名が入っているものもいまではダメみたいで。ようはあのキャラクターはみんなのものであって、特定の地域に団体に紐づけてはいけないってことみたいです。

阿部:なるほどねー。いちばん最初に描かれたモノクロ時代の著作権が切れるみたいなニュースを見たけど。
今野:アメリカではあのキャラの誕生日に合わせて、著作権を複雑化しながら延命していたようなのですが、ついにその延命も効かなくなったみたいですね。
栗原:第二次大戦中に米軍で使われたスコードロン(部隊章)をデザインしていたり、戦時中にプロパガンダとして製作された映画なんかもあったりして、歴史的にも興味深いですよね。
第三講
藤原裕

70’s〜90’s PEANUTS OFFICIAL T-SHIRT
藤原:栗くんに対してぼくはピーナッツのオフィシャルものを選んでみました。ピーナッツオフィシャルといえば、60から70年代の〈スプルース〉のが有名だと思いますし、実際にここ数年の高騰もすごいことになっていますが、それ以降にもじつは意外と面白いものがあって。
今野:やっぱりきっかけはNIGO®さんなのかな?

栗原:そうでしょうね。文化服装学院の博物館(文化学園復職博物館)で2022年に開催された『THE FUTURE IS IN THE PAST』って個展でも〈スプルース〉ボディのピーナッツものを大きく展示していましたし、昨年ファレル主宰のオークション『JOOPITER』にもまとめて出品されていたりで、それらがきっかけとなって世界的に人気が再燃、相場が高騰したんだと思います。とはいえ、それらはスウェットでしたけど。
今野:もうアメリカでも全然手が出せない値付けされてるもんね。
藤原:そうですね。この間、久しぶりにLAでスウェットが1着出てきたのですが、普通に1,000ドルしてましたから。
今野:ぼくらみたいに昔の価格を知っていると、さらに手が出せなくなるよね。

阿部:スウェットも希少だけど、Tシャツはもっと見かけないよね。
藤原:そうですね。前後のプリント自体はスウェット同様なんですが、まったくと言っていいほど出てこないものなので何とも言えないものの、現状だとTシャツの方がバリエーションも少なかったんじゃないかと考えています。
阿部:〈スプルース〉以外は最近のもの?

藤原:それほど旧いものではないです。このデニムを穿いてるチャーリー・ブラウンは5年ほど前に手に入れたもので「バカであれ」的なメッセージも面白いなと。おそらくオフィシャルものは概ねこの〈チェンジズ〉というボディを使っています。

藤原:それ以外の2枚はキャラクターのイニシャルが〈カルバン・クライン〉調になっていて、バックにキャラクターの絵柄がプリントされています。集めようと思っていたんですが、ここ最近ジワジワ高騰し始めてしまって…。
阿部:昔から1種類だけ異常に高いキャラクターがいるよね?

藤原:今日持ってきた中にもあるピッグペンですね。〈スプルース〉ボディのものはスウェットでも圧倒的に数が少ないみたいで昔から随一高価ですよね。でも、今日メインで持ってきた〈チェンジズ〉なら、今のところ1万円台で手に入れられると思うので、まだまだ楽しめるんじゃないかと。
「まだこの辺なら手頃に楽しめるかなと」

50’s〜60’s COTTON HAWAIIAN SHIRT
藤原:続いては、コットンハワイアンという括りで何着か持ってきました。先ほど今野さんが見せてくれた〈カハナモク〉みたいな、いわゆるヴィンテージハワイアンが、去年や一昨年の相場に比べて、今年は一気に上がってきた感があるので、先のピーナッツ同様にまだこの辺なら手頃に楽しめるかなと。
今野:ヴィンテージハワイアンってまた高騰してるの?
藤原:ここ1年くらい前から上がっていますね。同じ日本繋がりでスカジャンが一段階上がり、数年前なら40万円出せば、あのカテゴリーの中でも戦艦や戦闘機みたいなスペシャルが買えたワケですが、去年辺りからタイガーヘッドなどの定番でも30万円とかが当たり前になってきて。同じ流れで和柄のヴィンテージハワイアンが急騰し始はじめた感じですね。
栗原:まあ、見た目もわかりやすいから海外ウケもするだろうし。確かにここ数年でじわじわと人気、相場が上がってきてるイメージ。


藤原:そんな中にあってのコットンハワイアンです。ヴィンテージと比べて手頃なのはもちろん、コットンなのでケアも簡単ですし。2つは黒ベース、もうひとつはジャマイカ柄なので正式にはハワイアンとは呼べないかもですが。
阿部:年代は50から60くらい?

藤原:そうですね。このマトソンメニュー風(かつてアメリカ本土とハワイを繋いだ豪華客船マトソンラインのレストランで使用されたメニュー)のものがおそらく50年代、他の2枚が60年代です。

栗原:厳密に言うならこの黒もバハマモチーフなのでハワイアンではないよね。
阿部:スーベニアだったのかな?
栗原:おそらくそうでしょうね。たとえばまったく同じ柄と年代でレーヨンとコットンがあるとしたら、やっぱりレーヨンの方が倍くらいの値が付いちゃうよね。
藤原:倍じゃきかないかもね。
阿部:なんでコットンはそんなに人気がなかったんだろう?
今野:本来はシルクを使いたかったものの、高価でそうそう使えないから、その代替としてレーヨンが採用されたという背景があるからだと思います。
阿部:こと日本の中古市場だけに限って考えるなら、コットンの方が扱いやすいし、気候にも合っているような気がするんだけど。
栗原:でも、やっぱりレーヨンならではのツヤ感が魅力なんじゃないでしょうか。ちょっと色気があるというか。
今野:生地の落ち感とかトロみも魅力なんでしょうね。

藤原:系列店の「フェイクα」では、澤田さん(マネージャー)のこだわりでどこよりも早くハワイアンシャツを展開していて、今年も2月に出したのですが、プロペラ通りにあるパンケーキ屋のスタッフが、それよりも早くハワイアンシャツを着ていたのを見て、先を越されたと嘆いていて(笑)。
栗原:それただのユニフォームでしょ(笑)。
今野:もう年中店頭に出しておくしかないね(笑)。
阿部:ハワイアンの高騰には、やっぱり半袖開襟シャツの流行も影響しているのかな?
藤原:あるでしょうね。今日持ってくるか悩んで結局やめたんですが、〈パタロハ〉(パタゴニアのハワイアンシャツライン)辺りも徐々に値が上がっているので、いまのうちに唾を付けておいた方がイイかもしれませんね。
「もうこれ以上育たないだろうという段階でようやく洗濯します」

NORI-ZUKE DENIM
藤原:続いては、つい先日、木村拓哉さんのYouTubeチャンネルにて木村さん所有のジーンズの洗濯と糊付けをご依頼いただきまして。以来、「ベルベルジン」に糊付け依頼が殺到しているようなので、今回はぼくが以前糊付けした501®︎と505®︎を参考に、洗濯と糊付けについて少々語りたいなと。
阿部:「ベルベルジン」で糊付けしてくれるの?
藤原:はい。ぼくがスタッフにしっかり叩き込んだので、いまでは全員糊付けできるようになりました。原宿にある〈リーバイス®︎〉の旗艦店で復刻モデルを上下セットアップで購入し、そのままウチに持ち込むケースも結構あって。一応ジーンズ1本3,800円で受けていますね。

栗原:それ採算取れるの? 「ベルベルジン」で購入したものならわかるけど(笑)。
藤原:まあまあまあまあ(笑)。
阿部:裕くん直々にやってほしいって人も中にはいるでしょ?
藤原:そうですね。先日約80万円のXXをご購入いただいたお客様が、そのまま糊付けしたいということで、紙パッチもやや硬化していましたし、そういうデリケートなヴィンテージに限っては、ぼくが担当するようにしていますね。ただ、やっぱりヴィンテージはかなり気を使いますので、今後は現行品は3,800円、ヴィンテージに関しては1万円に価格を改定しようと考えています。
今野:今日穿いてるのも糊付け後なの?


藤原:はい。木村さんの動画収録の後に私物を1本糊付けしたもので、ちょうど2ヶ月くらい経ちました。505®︎なのですが501®︎と比べてシャフトが細い分、ハチノスが出やすいのが特徴的ですね。穿き込みサンプルとして持ってきた505も糊付け後、約3年経過したもの。比較しやすいようまだ糊付けしていない501ビッグEも持ってきました。
阿部:前にも66のデッドを糊付けしてずっと穿いてたよね。
藤原:はい。あれはほぼ毎日1年7ヶ月穿き込みましたが、この3年選手はゆっくり育てたかったので夏場は履かず、ペースも週3くらいに落としています。
今野:夏場なんて糊が溶け出して脚がベトベトになりそうだけど。
藤原:若干ベトつきますけど、全然許容できる範囲ですよ(笑)。

阿部:いわゆる鉱山デニムとかに見られるハチノスは、買ってそのまま穿いてたからあれだけハッキリ出ているってことなんでしょ?
藤原:購入時にフラッシャーだけ取って、さらにジャストサイズでそのまま数年穿いていたと思います。で、数年後に洗ってみたら縮んで穿けなくなり、手放したんじゃないかと。
阿部:なるほど。
藤原:なのでウエストベルトの内側など擦れづらい部分だけ真っ紺に色が残っているんですね。

阿部:ようは一旦糊付けしたら、ハチノスとかアタリが納得いく色みになるまで洗濯しないってことね?
藤原:そうですね。1年7ヶ月ほぼ毎日穿いたものは、もうこれ以上育たないだろうという段階でようやく洗濯して。その間に蓄積された汚れが一気に流れ落ちるので水が真っ茶色になりましたね。
栗原:そうやって1回洗濯したら、もう一度糊付けし直すの?
藤原:いえ、一応完成形ということで、そこからはもう普通に穿きますね。
阿部:洗濯にも気を使うんだよね。

藤原:洗濯には今野さんが中心となって開発されたビヨンデックスの洗剤を使っています。何かお世辞みたいに聞こえちゃうかもですが、この洗剤だと本当にデニム本来の染料を落とすことなく、汚れだけしっかり落とせるので。
阿部:糊付けする前には必ず洗った方がいいワケね。
藤原:そうですね。ワンウォッシュの状態から糊付けするのですが、洗濯糊に関しては最近薬局などではなかなか手に入らなくなったので、ネットでまとめて購入しています。表面に糊付けしてしまうと光沢とベトつきがすごいので、基本的には裏面のみ糊付けするようにして。ジャケットに関してはアームの裏側のみ糊付けするのが正攻法だと思いますね。
阿部:そうか。ジャケットは全面に糊付けしてもあまり意味がないもんね。
藤原:そうですね。なんでパンツの場合は裏面糊付け、ジャケットはアームの裏側のみの糊付けを推奨しています。
第四講
阿部孝史

40’s CHAMPION SWEAT
阿部:ひとつめは、〈チャンピオン〉の両Vスウェットで、タグから察するに40年代頃のもの。プリントも気に入っていて。最近、いわゆる後付け(フードを後付けしたパーカ)の高騰がちょっと異常過ぎるから、あえて自分はこちらを。サイズが44と大きいのもお気に入りの理由。

栗原:とはいえ、クルーネックだって十分高いですよね。
阿部:そうなの?
藤原:いや、めっちゃ上がってますよ。まあ、確かに後付けに比べたら、まだ緩やかな方ですけど。
阿部:後付けっていま現在の相場だと100万円とかしてるでしょ。
藤原:状態とパネリングの配色やパターンによっては200万とか300万とかもザラにありますね。
阿部:ちょっと異常だよね…。

藤原:これ、後プリ(価値を上げるため後からフェイクプリントを施したもの)じゃないですよね?(笑)
阿部:違うわ(笑)。
栗原:(笑)。この年代くらいの旧い年代のものの方がプリント技術も稚拙で、これなんかも若干アウトラインが歪んでいたりして後プリっぽく見えますよね(笑)。
今野:でも、この黒い色の出方を見るとオリジナルっぽく見えますよね(笑)。
阿部:ぽくって(笑)。でも、後プリも市場に紛れちゃうと本当にわからないだろうね。

栗原:人づてに聞いた噂なんですが、90年代にアメリカで先ほど裕の話にも出た〈スプルース〉の無地スウェットが大量に見つかって、それに現地の業者がピーナッツシリーズのプリントを施したものが相当数出回ったって話があって、もしもそれが本当ならいま出てきたらもうわからなくなっちゃってそうですよね。
阿部:ホントに怖いね。後付けのニセモノも出回っているよね。
今野:すでにメルカリにもニセモノが出回っているらしく、日本の復刻ブランドから昔リリースされた後付けパーカにタグだけ本物から移植して出品している人がいて、友人がそういう悪徳業者をパトロールしているみたいです(笑)。
阿部:悪質だよね…。

今野:後付けではないんですがロックフードと呼ばれるパーカは、結構特殊なピッチの番手の太いレーヨン糸で縫われているんですね。なのでいまはあまり受けてくれる工場がないですし、再現したいと思っても、じつはそう簡単にできないみたいですけどね。
阿部:そうなんだね。いわゆる“役”として考えるなら、最上位が後付け、次に両V、それからセパレートポケットとかフリーダムスリーブみたいな独自規格があって、最後に前Vって感じ?

藤原:そうですね。あとは色だったり。それから〈スポルディング〉独自のボクシンググローブ型のポケットは別格で高騰しちゃってますね。
阿部:そういえば最近ボクシングポケットって見なくなったね。
藤原:全然出てこないですね。
阿部:リバースウィーブを集めている人たちは、こっちの方(60年代以前にリリースされたコットン100%時代のプレーンスウェット)はあまり興味がないのかな?
今野:どうでしょうね。サイズ感で選んでいる人も少なくないでしょうし、何とも言えませんが、少なくともリバースウィーブの中でも叩きタグとか旧めの個体を狙っていたなら、こっちに流れていてもおかしくはないですよね。
「市場もちょっと落ち着いてきたし、いままた新鮮かな」

60’s〜70’s CHAMPION FOOTBALL T-SHIRT
阿部:続いてもまた〈チャンピオン〉なんだけど、フットボールTとかTシャツを何枚か持ってきました。
栗原:このサイズ表記が数字のタイプがアルファベット表記に変わったのっていつ頃なんだろうね。
藤原:並行して使われていると思うんだけど、確かにどういう棲み分けなんだろうね。
栗原:インチ表記の方が着丈が長かったり、仕様も凝ったものが多かったりして、そっちの方が実際に競技で使われていたもののような気もするんだけど。
藤原:そうなんだ。ちょっと気にして見てみるようにするわ。

阿部:どれも60から70年代くらいと、そんなに旧いものではないんだけど、単純に見た目が気に入って手に入れたものばかりで。
栗原:個人的に〈チャンピオン〉だったらワシントン大学の薔薇柄、ローズボウルモチーフのやつが“阿部孝史モデル”だと思っているんですが(笑)
阿部:四半世紀前に雑誌『Boon』のスナップで着てたやつね(笑)。確かによく着ていたけど、いまはもう手元になくて。でも、また出てきたら絶対買おうとは思ってるよ。
今野:あの薔薇イイですよね。ぼくも好きで以前自分のブランドでサンプリングしました(笑)


阿部:全体的に〈チャンピオン〉のTシャツって落ち着いてきたでしょ?
栗原:一時期だいぶ落ち着いていましたが、最近また人気が復活してきて値段も高くなってきていると思います。
阿部:フットボールTとプレーンTだったら、まだやっぱりフットボールの方が高めではあるけど、最盛期に比べたらちょっとは買いやすくなっている気がするんだけど。
藤原:そうですね。色とかプリントとか個体差は当然ありますけど、かつてのように〈チャンピオン〉だったら一括高値、みたいな感じでは確かになくなりつつありますね。
阿部:とはいっても、今日持ってきたものの大半は、学生時代に手に入れたもの含め昔買ったものばかりなんだけど。市場もちょっと落ち着いてきたし、ずっと無地ばかり着ていたからいままた新鮮かなと。根が天邪鬼なんで(笑)。
「個人的にポリ混はヴィンテージという位置づけではない」

30-40’s VINTAGE BANDANA
阿部:最後はまたバンダナで〆させてもらいます。今回持ってきたのは、2型。まずは〈ダブルアールエル〉のバンダナとその元ネタなんだけど。元ネタの方は両耳仕様だし、おそらく30年代以前のものだね。


栗原:〈ダブルアールエル〉のものも旧いものなんですか?
阿部:たぶん2000年代だと思う。ぼくが集めている範疇じゃないから奥さんにあげたんだけど、よくよく見たら元ネタを持っていることに気がついて(笑)。
今野:やっぱりしっかり元ネタがあるんですね。
阿部:ね。もちろんよくよく見ると柄の大きさとか細かな部分は違うんだけど、ヴィンテージに対する敬意みたいなものは感じるよね。

藤原:こっちのサーフィン柄のものも旧いものなんですよね?
阿部:それも同じく30から40年代くらいだと思う。
藤原:一気に触りづらくなりました(笑)
阿部:このサーフィンとヤシの木の柄は、ぼくが持っているバンダナの中でもトップ5に入るほど好きな柄で。赤い方は昔から持っていたんだけど、この間ネットオークションで紺を発見して即購入しました。滅多に出てこないからスーベニアかもね。
藤原:トップ5に入ってくる理由を知りたいですね。
阿部:バンダナでサーフ柄っていうのがまずないし、プリントのデザインやバランスが何より素晴らしい。
栗原:確かに60とか70年代とか若めの年代でもサーフ柄ってないですよね。

藤原:30から40年代と思われる根拠ってあるんですか?
阿部:まずは両耳だよね。絶対にないとはもちろん言い切れないけど、50年代に入ってくるとこの幅で織る織機自体がなくなりつつあったと思うのね。より幅広く織って大量生産に振り切った時代だったワケだし。
栗原:トランクアップ(当時大手だったエレファントブランドのシンボルとなるゾウの鼻が上に上がっているのがトランクアップと呼ばれ60年代以降に登場する。それ以前はトランクダウンもしくは下鼻と呼ばれ鼻が垂れ下がっている)の両耳ってないんですか?
阿部:トランクダウンの両耳はあるけど、トランクアップは片耳しかないはず。
今野:阿部くんの中でヴィンテージバンダナの定義ってあるんですか。もしあるとしたら年代ですか?
阿部:最近は1980年代以降のポリ混もヴィンテージバンダナとされているね。実際人気もあって高騰してるし。ただ自分の中でヴィンテージバンダナは、コットン100%だけ。ポリ混ならではのプリントと肌触りに魅力を感じないんだよね…。年代問わず自分が好きなものを集めるのがいちばん。とにかくヴィンテージバンダナは沼なので(笑)。