詩人から受け継ぐ思いっきりのよさ。

PROFILE
1991年生まれ、東京都出身。OKAMOTO’Sのドラマー。DJやモデル、「YAGI EXHIBITION」の主宰など幅広く活動する。OKAMOTO’Sはバンドとして8年ぶり2度目の47都道府県ライブハウスツアー「OKAMOTO’S 15th Anniversary FORTY SEVEN LIVE TOUR -RETURNS-」を開催中。
ーレイジさんは1991年生まれですが、「原宿パック」のインスピレーションの源となった90年代の原宿と聞いて、どんなことを思い出しますか?
正直、みなさんが思っているほど原宿や裏原などのカルチャーに詳しいわけではないんですよ。俺にとっての90年代原宿のイメージは、とんちゃん通りの「コスモスペース」(石の専門店)。あとは「コンドマニア」(現在は閉業)と「キディランド」くらいです。

ーでは、90年代ファッションの記憶はいかがでしょう? 最近はY2Kと呼ばれ、90年代と00年代のファッションも若い子に人気があります。
「ピンクドラゴン」もよく親によく連れてかれて行った印象がありますね。「なんか龍の鳴き声がする!」とか。まだ子供だったので、そういうことに興奮していました。自分は1996年からテレビに出たりしていたんで、記憶がはっきりしているのがその辺りからなんですよ。当時から大人に連れまわされていた感じがあって、なかでも三代目魚武濱田成夫さんが自分にとっての90年代の感じなんです。
ー詩人の三代目魚武濱田成夫さんとは交友関係があったんですか?
小さい頃に出会って、大人になって再会してからもすごくよくしてもらっていたんですよ。そのきっかけは彼が音楽活動をやっていたときでした。『花束』というシングルの制作中に、児童合唱団のコーラスを入れたもののしっくりこなかったらしくて、当時の担当編集が自分の母親だったことから、「わんぱくな子供を連れてきてくれ」ってスタジオに呼ばれたんです。レコーディングブースに入れられ、「とにかくハチャメチャ大騒ぎして」と。それでふざけまくったら、最高だってことで全部OKテイクとしてCDに収録されているんですよ。その日の帰りに、三代目魚武濱田成夫さんから、「好きなだけおもちゃ買うてあげる」って言われて、「キディランド」でカート3台分ぐらいのおもちゃを買ってもらったんですよ。


ー子供にとってのカート3台分って、とんでもないですね。
それが自分の中でめっちゃデカいできごとでしたね。普通じゃありえないじゃないですか。いま思えば数万円の買い物だったかもしれないですけど、一生忘れない喜びみたいなものを、その1発で植えつけられたんですよ。それにかなり食らわされて、自分もそういうことを人にするのが好きになりましたね。後輩とコンビニに行ったときに、好きなもん買っていいよとか。こういうのは金額じゃなくて、タイミングがいいとめっちゃ嬉しかったりするじゃないですか。思い出に残るできごと、食らわせ方のコツみたいなものを濱田さんから教わりましたね。レコーディングからそのあとの振る舞いまでの全部をひっくるめてが、オカモトレイジにとっての90年代です。
ーいや、まさに他の誰とも被らない思い出ですね。
その後、15年ほどの月日が流れ、バンドでメジャーデビューして『ザ・ローリング・ストーンズ』の特番みたいなので再会したんですよ。「レイジ、覚えてるか?」って言われて、「覚えてるに決まってるじゃないですか! お久しぶりです!」みたいな話をして、ゆっくり飯でも行こうと約束させていただいて。後日、渋谷の「タワレコ」で待ち合わせして、今度は「俺はレイジがそのままカッコよく大人になっているのがめっちゃ嬉しいから、『タワレコ』で好きなだけ買うたる」って言われて。


ー15年のときを経てのデジャブですね。三代目魚武濱田成夫さんの変わらぬ人柄を感じます。
それもすごくいい思い出ですね。やはり忘れられない。さすがに19歳になってたんでちょっとは遠慮しましたけど、それもバレておすすめを一緒に入れられたりして、山盛りのCDとDVDを買っていただきました。その後も何気ない用事で朝まで電話したりして、いろんな面白い話をしました。Y2Kなんて言いますけど、いまの10代、20代の子は三代目魚武濱田成夫さんのことを知らないじゃないですか。すごくもったいないって思うんです。あの時代を深く掘り下げてそこに辿り着いたら、俺も詩人になろうってやつがいてもいいような気がしますね。あれこそが90年代カルチャーだなって感じがします。これを機に多くの人にチェックしてほしいです。まさに当時のサブカルアイコンですから。
ーちなみに、その時代に「ワラビー」をはじめとするアイコンモデルが原宿を中心に流行っていたことが「原宿パック」誕生のきっかけでもあったようなのですが、〈クラークス オリジナルズ〉にはどんな印象がありますか?
ウータン・クランとコラボした「ワラビー」やゼブラプリントのハラコブーツとか、たくさんの足数を所持して、愛用していますね。そもそもですが、〈クラークス〉のシューズを認識するようになったのは、過去にクラークスのイベントでDJをさせてもらってからなんです。それまでも、こういう形の靴があることは知っていましたけど、それが〈クラークス〉だと意識するようになったのはそのときですね。


ー選んでいただいたのは「デザートブーツ」です。「ワラビー」をお持ちですし、意外なセレクトだなと思ったんですが。
ロックンローラーなんで(笑)。あまり自分が持っていないタイプのシューズでしたし、せっかくの機会なので挑戦してみたいと思ったんです。そこで今回はこの「デザートブーツ」で、ちょっとラギットにいってみようかと。
ースタイリングのポイントはどういう点にありますか?
今日着ているTシャツもパンツも中学生が独学でつくった服なんですよ。だから、パンツのポケットの位置も独創的過ぎるし、Tシャツの切り替えにカーテンの生地を使っていたりするんです。タロウくんというスケーターの子がつくっていて、そんな服にこの「デザートブーツ」を合わせてみようという試みです。ちなみにタロウくんは、それこそ90年代に流行ったヨーヨーも得意で、俺のヨーヨーの師匠でもあります。彼には、着なくなった古着を段ボールで大量に送ったりして、自由に着たり、リメイクしたりしていいってことを言っているんですよ。それで今日着ている服をくれたりするんです。もちろん古着もゴミを押し付けているのではなくて、質のよいものをプレゼントしています。そこは三代目魚武濱田成夫さんに教わった、若い子に信じられないくらいのものをあげるっていう精神で、いまも自分の根底にありますね。