いいものをつくるために大切なこと。
デザインが決まれば、商品として形になる生産のフェーズへ。インドでは、マヌージさんとムケーシュさんの会社が商品の生産を請け負っている。生産は、インドの職人たちが手作業で行う。
「インドでは、品質を “均一” にしづらいのは確か。指示書通りに上がってこないこともあります。でも、ぼくの想像を超えて120パーセントの出来になることもあるんです」



〈プエブコ〉の製品をつくるひとたち。ティータイムならぬチャイタイムが休憩時間。
その上振れした瞬間にこそ、〈プエブコ〉がインドでものづくりを続ける醍醐味がある気がした。コントロールされたマシンのようなものづくりではなく、ひとに仕事を任せることで生まれる、こう仕上がったかという嬉しい驚きだ。
「大切なのは分かりやすく伝えることなんです。だから、別に難しい言葉を使う必要もないし、流暢な英語じゃなくてもいい。分かりやすければ、ジェスチャーでもなんでもいい。まあでもそれが難しくて、日本語で社内のスタッフに話してもきょとんとされることもありますけど」
続けて、もうひとつ大切なことがあるという。それはインド人の思考を理解すること。その真意を “目盛り” を例え話にして分かりやすく教えてくれた。
「インドのスタッフ相手に、日本や西洋のやり方を無理やり押し付けるようなことはしません。インド人と日本人では、感覚も気質も違いますが、インド人の思考や考え方を理解しないと、ものづくりはできない。じゃあ、どうしたら伝わるのかを考えると、その相手がどこまで細かなことに気づくかを察しなくてはいけないということ。いわば、そのひとがどんな単位のメジャーを持っているのか。インチ(inch)のメジャーとミリメートル(mm)のメジャーとでは細かさが違うように、どちらのメジャーを使うひとなのかを把握することが、伝える時に大事だと思うんです」
今回訪れた場所で取材班が出会ったひとたち。みんなのひと懐っこい表情が印象的だった。
郷に入れば郷に従え。自分の考えを相手に押し付けない、柳のようなしなやかな姿勢が〈プエブコ〉のものづくりには息づいている。手強い商売人ばかりのこの国で、どうやってものづくりができているのか、その裏にはこんな考えがあった。