FEATURE
末安弘明と日爪ノブキ。パンクとエレガントをつなぐ“情熱”のこと。
KIDILL × HIZUME with Enthusiasm

末安弘明と日爪ノブキ。
パンクとエレガントをつなぐ“情熱”のこと。

パンク一筋のファッションデザイナーと、パリ・オートクチュールの世界で活躍する帽子デザイナー。まったく異なるクリエイション同士がぶつかり合って生まれた唯一無二の帽子コレクションが、先日パリで行われた〈キディル(KIDILL)〉2025AWのショーで発表されました。このコラボレーション、一見クールに見える二人のジャンルを超えた「情熱」から生まれたものらしい…ということで、熱量高めのお話を、ファッションウィーク中の極寒のパリで伺いました。

  • Photo_Mari Shimmura(Interview), Kyohei Hattori (Backstage), Koji Shimamura(Runway)
  • Text_Mami Okamoto
  • Edit_Naoya Tsuneshige

ベーシックを壊すことで生まれるパンク。

―コラボはこれで4シーズン目。今季は新たに4型の帽子がリリースされましたね。その制作プロセスについて教えてください。

末安: ぼくらは本当に、周りからみたら「これでいいのか?」というくらいの時間しか打ち合わせしないんです。でも、できてみるとバチっと合う。プロセスとしては、日爪くんが日本に帰ってくるタイミングでミーティングして、最低限の生地やパーツを渡して、ものづくりの形はお任せしています。

日爪: ぼくは、そのヒロさんの思いを受けて「ぼくが〈キディル〉にもたらせることって何だろう」って考えることからスタートします。ヒロさんはずっとスタイルを壊さずパンク一筋。そこにぼくがフランスのエレガンスやオートクチュール的なニュアンスをミックスしたらもっと深みが出ると思ったし、逆に自分のつくるものにパンクのエッセンスが入ったら、自分も新しい景色が見られるんじゃないかなっていう好奇心が大きいです。

末安: 日爪くんは、オートクチュールのテクニックも持っているけど頑固じゃないし、いい意味で器用なタイプだと思うんです。クリエーションの幅が広く、引き出しも多くて、理解が早い。普段の日爪くんとは真逆のパンクを理解してくれて、自分のやりたいことを形にしてくれるので、とにかく話が早いんですよ。だから、クリエーションやつくり方とかに対してはあえて口を出さないです。その方が面白くなるから。

―今シーズンのコレクションについて教えていただけますか。

末安: 根っこは変わらず、好きなパンク。それをベースにしながら、日本人としてパリで戦うためにどうしたらいいかを考えたシーズンでした。音楽も世界観をつくるためのひとつの武器なので、20年くらい付き合いがある友達、和楽器集団の切腹ピストルズと一緒にショーへ。

服は、自分が学生時代から好きだった〈セディショナリーズ(SEDITIONARIES)〉をベースに、イギリスじゃなくて原宿の「アストアロボット」が発信する、東京のコアなユースカルチャーを引っ提げて臨みました。

シーズンタイトルは「フォーマルアナーキスト」なんですけど、アナーキズムって最終的に「昨日よりも明日をよくしよう」とか「未来の自分をもっとよくしたい」っていうところに辿り着くんです。あと、フォーマルって襟を正すって意味もあるので、襟を正してパンクに向きあうという意味も込めています。

―コレクションにおける帽子はどんな存在ですか。

末安: 帽子に関しては、モデルの頭に乗せたときにルックの完成度が段違いに上がるなと思いますね。スタイリストの島田辰哉さんと一緒にスタイリングを組んで、最後に帽子を乗せたとき毎回感激します。昔は帽子に力を入れていませんでしたが、日爪くんのおかげで帽子の力に気づくことができたと思っています。

日爪: パンクって「乗っけていく」というイメージだったんですけど、今回はギリギリまで引いてみました。パンクで引き算するのって怖いんですよ。今まで乗っけることでパンクらしさを演出していましたけど、4シーズン目を迎えたので、根本を壊して、ずらすことで生まれるパンク…、ベーシックを壊すことで生まれるパンクを意識しました。

日爪: 具体的に言うと、例えばキャップはよく見たら微妙に歪んでいるんです。本来の頭頂部にあたるところが少しずれていて、ツバは正面を向いているんだけど、実はスタンダードなキャップよりもほんの少しだけ長くて、ちょっとした違和感がある。根本から壊すって、こういうことなのかなって。

INFORMATION

キディル

Instagram:@kidill

ヒヅメ

Instagram:@hizume.official

関連記事#KIDILL

もっと見る