末安弘明と日爪ノブキ。
パンクとエレガントをつなぐ“情熱”のこと。

末安： それが何もないんです。むしろ、日爪くんが関わってくれていることで自分も頑張れるというか。強いて言えば、生地とか付属とかの素材を早く渡してあげたいなということですかね。なるべく、彼のクリエイションの時間を長くとってあげたいです。

日爪： スケジュールとかヒロさんはしっかり守るタイプだけど、自分はそうじゃないから（笑）。情熱は一緒だけど、性格は全然違うと思う。クリエーションに対する難しさはあまり感じないですね。〈キディル〉に関しては最初が上手くいったから、今後も上手くいくなぁって直感的に思いましたし。コラボって最初に上手くいかなかったら、どんなに頑張っても上手くいかないから。

末安： あとは、ものづくりに対する向き合い方が一緒だったら上手くいきますよね。デザイナーには2種類あると思うんです。つくるものを愛するひとと、デザイナーである自分のためにつくるひと。我々は前者で、つくるアイテムが大事なタイプなので。

日爪： 相反するものが混じり合うと、新しいものが生まれますから。ぼくは常に壊したいんですよ。〈キディル〉とのコラボっていうのは、ぼくの普段見ているものが正反対だから、おもしろいんだと思います。

末安： 洋服では通常ナシとされているような、ちょっとわざとダメな方向のことをやってみたいですね。帽子で例えると、ツバは固くないとダメとされているかもしれないけど、柔らかくて、だらんと垂れているツバにドレープを効かせたものにしてもらうとか…。ルールを壊して、新しいものをつくってみたい。あとは、キーワードの共有をすると精度があがるかもしれないと思いますね。

日爪： ぼくはもっともっといろんなバージョンをつくっていきたい、というシンプルな思いですね。ぼくの会社が「JBK」っていうんですけど、“人類帽子計画”の頭文字なんです。

末安： 『情熱大陸』でも言ってたね。何度聞いてもすごいよね、その計画。

日爪： もし〈キディル〉とコラボしてなかったら、〈キディル〉のファン層には絶対この「JBK」が届かなかったと思うんです。自分のブランドでは絶対に届かなかったところへ侵略ができることがめちゃくちゃ楽しいです。

シンプルにどんどんやって「JBK」を広げていきたいなって思いますね。コラボの回数を重ねるほど、自分の中での〈キディル〉像も出来上がってきて、普段の自分とは全く違うチャンネルで、自分のクリエイションを客観的にみることができるのもとても楽しいです。

末安： コラボって、そこの一点かなって思ってて。どちらかがどちらかに頼っている関係だと上手くいかないですからね。

日爪： 最初にやった時点でわかりますよね。言葉と言葉の間の行間の感じとか、お互いの価値観が見えているかどうか。見えてないと、どんなに言葉を重ねてもダメかなと思います。

末安： ブランド同士じゃなくても、一緒に働くひとの関係とかもそうなんだと思いますね。違う個体同士の協業なので。自分と同等のひとと出会うのが大切なんですかね。熱量とかも。

日爪： 実は、自分のクリエーションを壊してくれるようなひととやるのが一番良かったりする気がします。最初は大変だけど、ピタッとはまると、相乗効果でお互い成長できる。自分が見えていない世界を見せてもらえる。それが醍醐味なんだと思いますね。