あの街のこの人

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「奥深きフライフィッシング」

畑山 友宏

JOURNAL STANDARD 仙台店

ジャーナル スタンダードが仙台に進出するとともにオープンした〈ジャーナル スタンダード〉仙台店。そのオープニングスタッフとして入社した畑山さんは、ファッションアドバイザーとは異なる私的な顔をもつ。それはプロ顔負けの本格派フライフィッシングの達人。そのもう一つの表情を追った。

「フライフィッシングに目覚めたそもそものきっかけというのは、8歳の頃に兄の影響で始めた川釣りだったんです。そこから徐々に海、沼へとフィールドを変えて。しばらくは沼でブラックバスにハマっていたのですが、先にフライフィッシングを始めていた釣り仲間に勧められたんですよね。まんまと(笑)僕もフライフィッシングにハマっちゃいました」

それから10年近く、傍目には趣味の範囲を逸したように見えるほどの情熱をもって、フライフィッシングにのめり込んでいった畑山さん。そうまでさせる魅力とはなんだったのか。

「釣りとは違って出発から帰り道までの全部が楽しいんですよね。自分の場合は、ハイク(山登り)をしながらスポットを探していくので、ある意味アウトドアとしても捉えられますし、スポーツとしての要素もあるのだと思います。釣りだけでなく、移動も楽しい。そうしたさまざまな角度の”おもしろさ”が飽きない理由なのかもしれないですね」

フライフィッシングとの出会いをひととおり話してくれたのち、畑中さんに案内され、仙台駅から車でおよそ30分。名取川の下流域となる、緩やかな渓流スポットにやってきた。ここが東北の地であることを強く感じられる、透き通るような空気と水の中、畑中さんが再び語り始める。

「このあたりは下流エリアなので上流よりも気軽に来れるスポットですね。人も少なく、周りは小さな集落しかないので静かなんです。ビギナーの人にオススメですね。ただ釣れるかどうかでいえば、やはり上流に比べてやや魚の数も減ってしまうのでそこはガマンです。あとは釣りと同じようにフライフィッシングのオンタイムは「イブニング(夕暮れから夜にかけての時間帯を釣りの世界ではこう呼ぶ)」なので、こうした日中は比較的あまり魚がいないんですよね」

スポットに到着してほどなくして、手慣れた所作によって準備を進める畑山さん。まずは形からと話す自慢のギアは頂き物や長年愛用しているという愛着のあるモノばかり。そうした趣味でのモノへの接し方にも洋服好きの片鱗を感じさせる。

「まずは一番の基本ウエアとなる完全防水仕様のウェーダーとウェーディングシューズ。このあたりは〈シムス〉のモノで揃えています。その上に羽織りものとしてパーカを合わせたり、さらに〈バブアー〉のオイルドジャケットを重ねたりしています。僕の場合けっこうラフな軽装なのですが、本来なら防水性のある〈ティラック〉のシェルジャケットなどがばっちり合うと思います。あとはギア一式を装備した〈ミリカン〉のバックパックとのフライロッド(釣り竿)。ロッドはその時々のスポットによって変えられるように常時5~6本は所持しています」

ギアやツールなどにこだわっていくことで、さらにフライフィッシングの奥深さを痛感するのだという。

「フライフィッシングでは、毛針という擬似餌をリール糸の先につけて楽しむのですが、その餌作りひとつとっても非常に奥が深いんです。自然の虫を模して自分で作ることが多いのですが、魚の特性や虫の種類、土地によって変わる生態系などの知識がなないとできなくて、その環境に合わない疑似餌を使ってもダメなんです。そうした専門性やアウトドア的な感覚も持ち合わせていなければならないので、最初は難しく感じるかもしれませんが、ハマればハマるほど多重な視点から楽しみ方が増えていくんですよね」

フライフィッシングという「仕事=ファッション」とはまた異なる分野を趣味に持つことで、仕事の幅も広がり、両者にいい影響があると語る。どちらも愛し、楽しんでいる畑山さんだからこそ思うところがある。

「最近は釣りだけではなく、アウトドア全般にもいえることなんですが、若者離れが深刻で、どうしてもおじさんの趣味というイメージが先行してしまっている気がするんです。もっとラフにファッション感覚で楽しんでもらいたいなと思うんですよね。〈ジャーナル スタンダード〉でもアウトドアのウエアやギアはたくさん揃っていますし、もちろんファッションアイテムとしても優秀なものばかり。そういったファッションとしての形から入ってみるのも意外と楽しいので、ジャーナル スタンダードのアイテムを、アウトドアへの入り口として楽しんでもらえたらうれしいですね」

Profile

畑山 友宏(はたやま ともひろ)
2008年に〈ジャーナル スタンダード〉入社し、以来一貫して仙台店に勤務し、現在でもファッションアドバイザーとして努めている。最近では所縁のある仲間たちとフライフィッシングのサークルグループを結成する。

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