NEWS | TIE UP

【FOCUS IT.】平野海祝など世界中のトップライダーがニセコに集結。順位を競わないイベント「スウォッチ ナインズ」って?

4月上旬に「ニセコ東急グランヒアフ」で行われた「Swatch Nines Snow 2026(※以下、ナインズ)」。世界最高峰のアクションスポーツイベントのひとつとして知られ、今回初めてアジアで開催されました。その特徴は、順位を競うのではなくスタイルを表現することを重視していること。イベントにはミラノ・コルティナで行われた国際的な祭典のメダリストを含む50人以上の招待ライダーが集まり大盛り上がり。設立者のニコ・ザチェクさんとSwatch Pro Teamの一員としてイベントに参加した平野海祝選手に、運営とライダーそれぞれの視点から見た「ナインズ」について話を伺ってきました。

  • Text & Edit_Kazuki Sakaguchi

  • 競うのではなく、楽しむことがスポーツの本質。

    PROFILE

    ニコ・ザチェク
    「The Nines」CEO

    ドイツ出身。「The Nines」CEO。プロのフリースキーヤーとして世界の最前線で15年以上活躍したのち、2008年に「Swatch Nines Snow」の前身となるイベント「Nine Knights」を立ち上げる。生粋のアクションスポーツラバー。
    Instagram:@nicozacek

    ーまずは「ナインズ」がどんなイベントか教えてください。

    「ナインズ」は、従来の順位を“競い合う”大会とはまったく異なる、創造性を“魅せ合う”ことに重きを置いた唯一無二のエンターテインメントです。採点も順位もなし。選手は好きなタイミングで何度でも滑ることができます。今回のスノーに加え、サーフ、スケート、バイクの4つを軸にイベントを開催しています。

    ー今回のイベント開催に向けて、ライダーたちとともにワークショップを行ったと聞きました。ワークショップはどんな内容だったんですか?

    主にコース設計です。「ナインズ」が目指しているのは、ライダーが滑りたいコースをつくること。ワークショップでは10人のトップライダーを集め、コースのアイデアを自由に出し合ってもらいました。建築家やコースデザイナーにも参加してもらい、実際に形にできる環境を整えています。

    ーそもそも何がきっかけで「ナインズ」を立ち上げたのでしょうか。

    私はもともと、プロのフリースキーヤーでした。当時は世界のトップ10にランクインしていて、大会に出場するために世界中を飛び回っていました。そんな肉体的にも精神的にもハードな生活を続けているなかで気付いたんです。スポーツの本質とは、競うことではなく仲間と一緒に楽しむことなのだと。

    そこで、世界中のトップ選手たちが集まり競い合うのではなく心から楽しめる場として、オールスターゲームのようなイベントを立ち上げることにしたんです。

    ー楽しむことが大切なんだと。

    私は、スキー、スノーボード、サーフィン、マウンテンバイクのようなアクションスポーツは競うスポーツではないと考えています。例えば、サッカーにはスコアがあります。点を取るという明確な目的がある。一方で、アクションスポーツはスコアがなくても遊びとして成立しているんです。

    ーなるほど。ニコさんは元々フリースキーヤーだったわけですが、なぜ他のアクションスポーツにも広げていったのですか?

    立ち上げた2008年当初はフリースタイルスキーヤーの小さな集まりでした。イベントを続けるなかで気づいたのは「ナインズ」はプラットフォームなんだということです。世界中のトッププレーヤーが集まり楽しむ。それは、他のアクションスポーツにも適応できるのではないかと考えました。そこで、2011年にマウンテンバイク、2013年にスノーボード、2024年にサーフィン、スケートボードというふうに広げていきました。

    ーそのなかで大変だったことはありましたか?

    スポンサーを見つけることに苦労しました。メディアが好きなのは、どのチームが優勝したとか、誰が世界チャンピオンになったとか、勝敗に関する話題。それと逆のことをしているから、当初はなかなか取り上げてもらえなかったんです。ですが、”世界のトップが一堂に会し競うのではなく創造性を魅せる滑りをする。”というコンセプトは唯一無二。次第に共感してくれるスポンサーが付くようになりました。

    ーここ4年間メインスポンサーに付いている〈スウォッチ〉にはどんな印象を持っていますか?

    私がアクションスポーツを始めた15歳の頃からいままで約30年間、ずっとシーンをサポートし続けてくれているので親しみを感じています。スキーやサーフの主要大会や、レジェンドスケートボーダーのトニー・ホークのスポンサーをしていた印象が強く残っています。

    だから〈スウォッチ〉とパートナーを組んだのはごく自然な流れでした。ちょうど同じタイミングで〈スウォッチ〉チームも、競技性より創造性や楽しさを追求したいと考えていたようなので、完璧なタイミングでした。

    ー〈スウォッチ〉の時計にまつわる思い出のエピソードなどがあれば教えてください。

    子どもの頃から何本も〈スウォッチ〉の時計を持っていました。なかでも、ICチップを内蔵しリフト券代わりになってくれるスノーパス機能のついたモデルを愛用していました。リフトに乗るときに腕をかざすだけで済むから便利だったんです。

    ー今回、初のアジアでの開催ということですが、なぜ日本を選ばれたのでしょうか。

    日本にはたくさんのトップライダーがいます。でもライダーの渡航費は自己負担なので、ヨーロッパで開催すると彼らはなかなか来られないんです。もっと日本の選手と交流したいと思い、日本で開催することに決めました。

    ーそのなかでもなぜニセコで?

    いろんな場所を視察するなかで、羊蹄山を見たときに、これだ! と思ったんです。「ナインズ」は、楽しみながらクールなビデオや写真を撮るためのイベントです。その背景に富士山を彷彿とさせるアイコニックな独立峰が映り込むのはパーフェクトでした。ヨーロッパの山は山脈のように連なっているから、羊蹄山の形からは日本らしさを感じるんです。

    また、コースをビルドするのには大量の雪を必要とするから、ニセコのようにたくさん雪が降る場所が理想でした。また、”JAPOW(Japan + Powder)”という造語がつくられるほどニセコの雪質のよさは世界的に有名で、世界中からトップライダーが集まるイベントを開催するのにうってつけだったんです。

    ーウィンタースポーツのベストシーズンは1,2月だと思うのですが、なぜ4月開催なのでしょうか。

    春は雪が柔らかくなるので、着地の衝撃を和らげてくれるんです。そして、オリンピックや「X Games」などの主要な大会は3月末には終わっているので、大会前に怪我するリスクがない。選手が思いっきり滑ることができるのがこの時期なんです。

    ー最後に、今後の展望を教えてください。

    いまは短期間のイベントのためにコースをつくり終わったら解体していますが、「ナインズ」の名を冠した常設のパークをつくりたいです。滑るインフラを整え、次世代のライダーたちにポジティブなインパクトを残せたらうれしいです。


    自分らしさを表現できる場所。

    PROFILE

    平野海祝
    スノーボード選手

    新潟県出身。2022年に北京で行われた国際的な祭典への出場や、今年3月にアメリカで開催された「THE SNOW LEAGUE」ハーフパイプにおいて7.67m跳び世界記録を樹立するなど世界を舞台に活躍している。2024年にSwatch Proteamに加入。平野歩夢を兄に持つ。
    Instagram:@4kaishu

    ーまずは「THE SNOW LEAGUE」での世界記録樹立おめでとうございます! 7.67m跳ぶというのはどのような感覚なのでしょうか。

    ありがとうございます! 空中にいるときは鳥のような気分になっています。でも、気持ちよさは全然なくて、恐怖が勝りますね。朝起きたとき、今日死ぬんじゃないかって心配が頭によぎり、滑走するまでずっと緊張しているんです。けど迷いは死に繋がるから、いざ始まったら”おれは今日スノーボード会に歴史を残す”という気持ちで思い切り突っ込みました。

    ースノーボードのようなアクションスポーツは、メンタルとの勝負だと思います。気持ちを整えるために取り入れているルーティンなどがあれば教えてください。

    呼吸を大切にしています。会場にはすごい選手がたくさんいてそわそわするし、周りの情報がたくさん入ってきて心臓がバクバクする。そういうときに、ひとりになって深呼吸すると落ち着いて集中できるんです。

    ー海祝選手は過去にも「ナインズ」に参加されたことがあるんですよね。

    はい、今回で3回目です。大会ではみんな自分に集中していて緊張感があるけれど、「ナインズ」ではみんなリラックスしているから普段は会話をすることのない選手たちと交流できて毎回刺激をもらえます。世界のトップとセッションするのも楽しいし、自分のヤバさを見せ付けてやろうとバイブスも高まります。

    ー普段の順位を競う大会と「ナインズ」で滑りに違いがあれば教えてください。

    大会だと、練習できる時間も滑走を始める時間も細かく決められている。その時間内で仕上げないといけないから、かなりプレッシャーがかかります。それに、意識することもすごく多いんです。なるべく姿勢をよくしようとか、この角度で入ろうとか。そういったことに縛られている感覚があります。

    でも「ナインズ」では、自分のタイミングで何度でも滑っていい。だからリラックスして自分らしい本来のパフォーマンスが発揮できる。実際にあとから映像を見返しても「ナインズ」の方が肩の力を抜いて伸び伸びと滑れているんです。「ナインズ」に参加するたびに、これが本当のスノーボードだよなって再認識できます。

    ーご自身で考える海祝選手らしさってどういう部分ですか?

    自分のバックグラウンドにはスケートボードがあります。父が運営するパークで幼少期からずっとスケボーをしてきたので、そこで培った身体の使い方や動きの引き出しがたくさんあるんです。2年前に始めたサーフィンから得たインスピレーションをスノボに落とし込むこともあります。スノーボードしかやってないひとは持っていない視点を持っているのが自分の強みです。

    ーワークショップを通してコース設計にも携わったそうですね。「Kaishu’s クオーターズパイプ」というご自身の名前が付いたセクションがありますが、こだわったポイントがあれば教えてください。

    ライダーが色々な表現方法を魅せられる場にしたいと思い、ジャンプ台はすでにあったのでクオーターズパイプを取り入れることにしました。動画を撮ったときの迫力やインパクトを重視し、とにかくダイナミックにつくりました。

    ー今回〈スウォッチ〉が協賛についていますが、〈スウォッチ〉の時計との思い出はありますか?

    自分はスノーボード、サーフィン、スケートボードの3競技をやっていて常に忙しいのですが、腕時計があることと時間を決めてしっかり集中して滑れるので助かっています。特に海では時間感覚がおかしくなるので重宝しています。

    ー最後に、Swatch Proteamに加入してよかったことがあれば教えてください。

    Swatch Proteamには、スケートボード、BMX、サーフィン、MTBなど、ほかのアクションスポーツの選手や、いろんな国籍の選手が所属しているんです。彼らと一緒に過ごすことで視野が広がりました。また、カッコよくてナイスな選手ばかりで、さすがのチョイスだなと思います。その一員になれてうれしいし、これからも〈スウォッチ〉と共にいろんな体験をしていくのが楽しみです。

TOP > NEWS

関連記事#swatch

もっと見る