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岡田哲哉、LAPIMAとブラジルを歩く。前編:アートの熱気渦巻く街と、海辺での時間。

名門のデザイナーズから希少なピースまで、国内外のアイウェアが揃う「グローブスペックス(GLOBE SPECS)」で、昨年から取り扱いをはじめたブラジルのブランド〈ラピマ(LAPIMA)〉。その彫刻のように立体的な造形のフレームは、どんな風景から生まれるのだろう。ふと、疑問を抱いた代表の岡田哲哉さんは今年の夏、デザイナーのグスタヴォ&ジゼラ・アシス夫妻に会い、彼らが謳う “LAPIMA is Brazil” の真意を確かめるべくブラジルへと発ちました。まずは、2人に勧められて岡田さんが巡ったブラジルの3つのエリアの話から。


サンパウロ – 生命力に満ちた街並みとアート。

今年の7月初旬。羽田を出発、ニューヨークで乗り継ぎし、岡田さんはブラジル最大の都市サンパウロに降り立ちました。街に繰り出してまず圧倒されたのは、街中に堂々佇む街路樹でした。ビルやクルマがひしめく通りは未知の木がジャングルのごとくあふれ、枝はわさわさと歩道の上へ伸び、根は地面を押し上げそうな勢いで広がっています。「日本の街中では見たことのないくらい、木がワイルドで迫力があるんです」。都市の真ん中に、自然の生命力がむき出しのまま居座っていました。

その印象を決定づけたのが、肉料理の名店「A Figueira Rubaiyat」です。店内では、もともとその場所に生えていた巨大なイチジクの木が、食事する人々の頭上に枝を張り巡らせ、ガラス屋根の遥か向こう、空へと向かって伸びています。木の高さは20メートル以上にも及ぶといいます。「ここは今回の旅で一番印象に残ったレストラン。たくましくそびえ立ついちじくの木を見てやっと、自分がブラジルに来たという実感がじわじわと湧いてきました」。街路樹やレストランの大樹。ブラジルの人たちは、木のスケールに合わせた空間づくりを大切にしているのかもしれません。

型にはまらないそんな街では、アートも整然と飾られているばかりではありません。美術館でどっぷり現代アートに浸りたいなら「サンパウロ美術館(MASP)」へ行くのもいいですが、ここサンパウロはアートが特別なものではなく、日常の風景にもなじんでいる街です。街中の壁面を覆うグラフィティは、落書きよりもアートと表現するほうがしっくりくるものが多く、さらに、道を歩けば歪な形をした建造物にもよく出合います。

例えば、岡田さんがサンパウロのど真ん中で見つけた、建築家エドゥアルド・ロンゴが自らつくった自宅「Casa Bola」。他にも、市民の憩いの場「イビラプエラ公園」内には、ブラジルを代表する建築家オスカー・ニーマイヤーによる展示場「OCA」をはじめとした、スケールが大きく不思議な見た目をした建造物が点在しています。

食にも、この土地ならではの力強さがありました。文化施設「Solar Fábio Prado」にあるレストラン「Capim Santo」では、アマゾンに生息する大型の淡水魚、ピラルクを味わいました。「淡白な白身だけど、身が締まっていておいしかったですね。漁師町で一匹釣れると一週間それだけで暮らせるとか」。街角の木、壁に描かれたグラフィティ、風変わりな建築、そしてレストランで口にする料理まで。サンパウロでは、行く先々からブラジルのパワフルな生命力が押し寄せてくるようです。


リオデジャネイロ&パラティ – 豊かな自然の静けさと躍動を感じる。

サンパウロから飛行機で一時間。次は、陽気でポジティブなムードに満ちた街リオデジャネイロへと向かいました。このグルーヴに触れずして、やっぱりブラジルは語れません。視界を占めるものは、先ほどまでの高層ビル群から、海と山が重なり合う風景へとがらりと変わります。コパカバーナの浜辺は水着やショーツ、ビーチサンダル姿の人々であふれ、波間の向こうに急峻の荒々しい岩肌が覗く。コパカバーナの北西に位置するアルポアドール岬では、夕日が沈む瞬間を目当てに訪れた人々が、完全に沈んだ瞬間の太陽に向け一斉に拍手を送ることが習慣になっています。自然の営みを礼賛する尊い時間です。

そしてリオからクルマを4、5時間走らせ、海沿いの小さな町パラティへも訪れました。熱帯林を背に、入り江に面した旧市街では石畳の道が続きます。白い壁に鮮やかな色の扉や窓枠…町並みや建物には、ポルトガル移民が18〜19世紀に残した古い時代の面影が残っています。先の2都市に比べれば、知名度は決して高くないこの場所。でも、きっとデザイナーの彼らには岡田さんに見せたい景色があって、ここへと足を運ばせたのかもしれません。街をゆく岡田さん、その隣ではグスタヴォが歩みを揃えています。彼らとこの町での時間を共有した岡田さんの脳裏には「ヨーロッパでも特に好きな国」だというポルトガルの記憶が蘇ってきました。かつてこの地は、彼の国の植民地。「のどかな雰囲気、そして古い建物や町の色使いも含めて、ポルトガルの魅力がぎゅっと詰まったような町でした」。

岡田さんはグスタヴォの親族の船で湾内も巡りました。少し沖のほうへ行けば、小さな島や半島が点在していて、背後には深い緑の山々が迫ります。穏やかな湾の外には波立つ場所もあるそうで、グスタヴォはそこでサーフィンを楽しむといいます。街の人たちですら滅多に訪れないとういうここは、海と森、静けさと躍動感が同居する特別な場所です。

「時期によっては文学やジャズ、地元の酒カシャッサと音楽を楽しむ祭りも開かれるんです。時間を忘れてゆったり過ごしたり、大人が趣味を満喫するにはぴったりの町だと思いますよ」。海と山に囲まれ、古い町並みを大切に受け継いできたこの町には、何日か腰を据えて過ごしたくなる趣が漂っていました。

今回の旅で、岡田さんが一番気に入った町はパラティだったといいます。この町は満潮になると海水が道全体に浸水し、引潮とともに汚れを洗い流すよう設計されています。町全体に水が満ちたときには、色鮮やかな町の姿が路面に美しく映り込む。〈ラピマ〉が創作源とする、ブラジルの街と自然の風景を五感で感じ取った今回の旅路。それを振り返る岡田さんの目元にはやっぱり建築のような〈ラピマ〉の眼鏡が。そのレンズの向こうにはいつだって、そんなブラジルの風景が映し出されているのかもしれません。

PROFILE

岡田哲哉

都銀に勤めた後、大手眼鏡販売会社を経て、1998年に東京・渋谷に「グローブスペックス」をオープン。2017年からイタリアの「MIDO」展で2年連続「BESTORE AWARD」を受賞。世界一の眼鏡店に選ばれる。
Instagram:@tetsuya_globespecs

Text_Sana Tajika

INFORMATION

グローブスペックス ストア

電話:03-5459-8377
オフィシャルサイト

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