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【FOCUS IT.】知られざるヒップな国。2020年の海外旅行はジョージアがダントツおすすめです。

ジョージアという国をご存知でしょうか? アメリカ・ジョージア州ではなく、ヨーロッパとアジアの境にある小さな国のことです。“グルジア” といえば、どこかで聞いたことがあるという人もいるかもしれません。もともとは旧ソ連の構成国で1991年に独立しました。

北にはロシア、南にはトルコ、アゼルバイジャン、アルメニアに囲まれる、あまり日本人にはなじみのない場所です。

最初に結論から話すと、この国には早くに訪れることをおすすめします。理由はこれから紹介しますが、「物価がめちゃくちゃ安い」「お酒と料理がおいしい」「散歩が楽しい」というのが主なポイント。アジアからのツーリストが少なく、穴場的な観光地であるからです。

1週間遊び尽くしてかかった費用はたったの6万円。

ジョージアを語るにあたって、まずは物価の話からはじめます。首都であるトビリシに6日間滞在して使ったお金は宿泊費込みで約6万円ほど。昼から浴びるようにお酒を飲み、それなりにご飯を食べて、観光して、夜のディナーでまたお酒と食事を楽しんで、週末はそこに夜遊びが加わってこの金額。とにかく物価が安いのがジョージアの魅力なのです。

首都トビリシの景色。日差しが気持ち良く降り注ぐ場所。気候も東京と似ていて、過ごしやすい。

通貨の単位はラリ。12月25日現在で1ラリ=38.32円。レストランにもよりますが、トビリシでは平均すると1食約20ラリほどで満足のいく食事ができます。お酒も食事もとにかく安くておいしいし、交通費も電車やバスが1乗車0.5ラリで、タクシーも10ラリあればいろんなところへ行けてしまうので、こんなウマい話あっていいの? とつい勘ぐってしまうほど。

安くてウマくて大満足なジョージア料理とワイン。

首都のトビリシは〈ヴェトモン〉のデザイナーであるデムナ・ヴァザリアの出身地でもあります。なので、ファッションが盛んなのかと思いきや、実際そうでもありません(笑)。もちろん、まったくのゼロというわけでもなく、街には古着屋やスケートショップなどがあるにはありますが、他のヨーロッパ諸国と比較するとその内容に物足りなさを感じずにはいられないのが事実。とはいえ、パリやミラノなどと同様、毎シーズン、ファッションウィークも行われています。

街の中心である「リバティ スクエア」の景色。人が多く常に活気がある。


筒型のビルもなんだか目を引く。おそらくこれも旧ソ連時代のもの。

夕方くらいになると路地裏では子供たちが幸せそうに遊ぶ姿があった。


街には野良犬や野良猫があふれかえっている。しかしながら、自治体によってきちんと管理されていて、ウィルス予防の注射も打たれている。

街中には旧ソ連時代の建築が多く残っている一方で、街の中心地では新しいビルも建設されるなど、時代の過渡期にいるような気分を味わわせてくれます。賑わう大通りのすぐ裏手は住宅が多数立ち並び、ローカルたちの生活を感じることができます。

「Skola Coffee & Wine Bar」というお店。ドリンクはもちろん、ブラウニーなどもおいしかった。トートバックといったオリジナルグッズもクール。skolacoffeewine.business.site


「リバティ スクエア」の近くにあるパン屋「Good Mood Food」。パンはひとつ3ラリくらい。写真は揚げパンで、とにかくデカイ。

街には小商いのショップがたくさんあり(もちろん大手資本が絡んだ豪華なお店も)、歩いていて「ちょっとのぞいてみよう」と思わせるお店が多いのも魅力。とくにレストランやカフェ、バーの充実ぶりはさすがのひと言。物価の安さも関係しているかもしれませんが、とにかく散歩が楽しい街でもあるのです。

ちょっと高級感を感じる店構えの「WINE GALLERY」はバリエーション豊富にワインを取り揃えている。地下にはワイナリーもあって、余ったワインなどがワンボトル10ラリ程度で売られている。

ということで、トビリシの魅力として真っ先に伝えたいのが「お酒と食事」です。ジョージアはワイン発祥の国でもあり、街の至る所にワインショップがあります。そこではピンからキリまでさまざまなワインが揃っていますが、上質なもので1ボトル約40ラリほど。安物でも十分そのおいしさを堪能できます。そして悪酔いしない! というのもポイント。レストランでは約10ラリほどでデキャンタに入ったワインをオーダーできます。


「WINE BOUTIQUE」も同様にワインを多数取り揃えたお店。どちらかというと、クラフトよりなレーベルが多かった。写真にあるのがチャチャで、お店では5ラリで試飲も可能。www.facebook.com/wineboutiqueN17

また、“チャチャ” というウォッカの一種もおすすめ。別名 “ワインウォッカ”、“グレープウォッカ” と呼ばれていて、ワイン製造のあとに残るブドウの残渣からつくられています。ショットグラスでグイっと飲むのが一般的で、通常のウォッカよりもフルーティで飲みやすく、ついおかわりを頼んでしまいたくなります。

こちらは「BLACK DOG」というビアバー。地元のクラフトビールをタップでいただける。1.5リットルのペットボトルに入れて10ラリと破格。もちろんおいしくて、朝から飲んでいた。www.facebook.com/blackdogbars.georgia

ワインのおいしさに比べるとビールの味が霞んでしまうのですが、クラフトビアバーもいくつかあって、ビール党の人でも十分楽しめることができます。気に入ったビールはペットボトルに入れて持ち帰りも可。

ジョージア料理で代表的なのが “ヒンカリ” と呼ばれるメニューで、見た目も中身もまさに大きな小籠包。まずはじめにスパイスが効いたスープの独特な香りがやってきて、最初はそのクセの強さに戸惑うが、その後にくる肉の旨味との相性は抜群。しかもこれがワインとよく合う。

こちらは “ハチャプリ” と呼ばれるチーズパン。薄いパン生地にトロトロのチーズがこれでもかというほど乗ったシンプルな料理。チーズ好きにはたまらない一品だが、食べ過ぎに注意。

酒のツマミに最適なのがこちらの “バドリジャーニ”。ナスのソテーにくるみやニンニク、香草のペーストを合わせたもの。くるみの甘さが際立って、これまた美味。こちらもワインとの相性が抜群。

ジョージア料理はとにかくスパイスが効いているのが特徴なのと、ひと皿がとにかくデカくて量がたっぷり。できれば大勢で訪れてたくさんのメニューをオーダーしたいところですが、旅行だとそうもいかないので、上記3つをオーダーするのがおすすめです。ちなみに、ジョージアは農業も盛んで地産地消を地でいく国でもあります。なので、とにかく野菜が美味しいです。

「Sofia Melnikovas Fantastiuri Duqani」は雰囲気のいいレストラン。写真はスピナチのスープで、これが絶品。他にもチキンのピタサンドなど、ハイクオリティな料理を提供してくれる。個人的にはここのレストランがベストだった。www.facebook.com/Sofia-Melnikovas-Fantastic-Douqan-186216914838587

こちらはトビリシの中心地にある「rooms hotel tbilisi」にあるレストランのリゾット。塩味とチーズのマイルドさが絶妙にマッチした一品。ビールがすすむ味。roomshotels.com/tbilisi

チェーン店だがおすすめのアイスクリーム屋「Luca Polare」。無添加の食材でつくらていて、体に優しいけど、きちんとした味わいがある。コーン付きで4ラリくらい。お店によっては夜中1時くらいまで営業。lucapolare.com

もちろん、ジョージア料理以外もおいしいレストランはたくさんあります。洋風料理のお店がほとんどですが、中には和食レストランもわずかですが見つけることができます。とにかく料理のクオリティーはどこも高いので、気になったら迷わずチェックすることをおすすめします。

さまざまなカルチャーが成長を遂げるトビリシ。

先ほど散歩が楽しいという話をしましたが、街を歩いていて目に付くのがストリートグラフィティです。



地元ではKOSKAというライターが有名。ベルリン出身のアーティストで、現在はトビリシを中心に活動している。

とにかくどの街角にも小さなタグから大胆なグラフィティに至るまでさまざまなストリートアートを拝むことができます。とある夜に街を徘徊していると、中学生くらいの若い男子ふたり組が大量のスプレー缶を足元に置いて、壁を眺めながらあれこれと相談しあっている姿も。


建物の外観からカルチャーの香りがプンプン漂ってくる。fabrikatbilisi.com

裏庭はこんな様子。ベンチが多数あったり、階段にローカルたちが座ったりといい雰囲気。

レコードショップも併設。テクノ、ハウス寄りのセレクションで、地元アーティストの作品も販売していた。www.facebook.com/vodkastrecords

こちらは「MARGO SKATE SHOP」。ZINEやTシャツなども販売していて、中はスケーターだらけ。www.facebook.com/Margoskateshop

壁中グラフィティだらけなのは、「ファブリカ」というホステル。裏庭はレストラン、カフェ、バー、雑貨屋、スケートショップ、レコードショップなどがあり、小さな商業施設としても機能していて、ローカルの若者たちが集まるハブのような場所としても機能しています。

こちらは「MOMA」でおこなわれていた合同の写真展。作品はアゼルバイジャンの写真家、イルキン・ホセイノフというアーティストのもの。街の汚れを主に撮影した展示。www.tbilisimoma.ge


こちらも「MOMA」。カレン・ミルゾヤンは地元トビリシ生まれのフォトグラファー。写真にあるのはイラストを重ねたコミカルな作品だが、キリッと鋭いポートレートも撮影する。

「フォトグラフィー&マルチメディア ミュージアム」で開催されていたエキシビジョンは、壁に3つの映像を流し、それをミックスするというもの。その場で寝転びながら鑑賞するという演出を含めてよかった。tpmm.ge

アートつながりでいうと、トビリシには「MOMA」や「フォトグラフィー&マルチメディア ミュージアム」もあるので、そちらのチェックも忘れずに。ジョージア国内の作家や、近隣国のアーティストたちの作品を中心に展示しています。



こちらは「Dedaena Park」と呼ばれる公園で開催されていた、大規模なマーケットの様子。石野真子のレコード(ロシア版?)を発掘。

街中では蚤の市のようなマーケットも開催しています。日本には持ち帰れないであろう刀や、軍モノの流出品、謎の壺、アクセサリー、電化製品やアート作品、そしてレコードに至るまで幅広いラインナップで、隅々まで見ていたら半日はかかるであろう数の店があります。

公園から眺める夕焼け。右側に写っているのは街のシンボルでもある鉄塔。


レトロなゲーム。ボクシングマシンではローカルの猛烈なパンチを拝むことができた。

レストランでは、街を見下ろしながら優雅に食事を取ることも可能。ロマンチックな気分とちょっとした贅沢を味わえる。

歩き疲れてのんびりゆっくりしたいなら、「ムタツミンダ公園」という大きな遊園地に訪れてみてください。ここはカップルにもおすすめのスポット。丘の上にあって、きれいな景色を眺めながらゆっくりくつろぐことができます。アミューズメントパークも併設されていて、街を眺望できる観覧車や、ノスタルジーを感じずにはいられないローテクな乗り物や施設が勢ぞろいしているので、ファミリーで足を運ぶのもいいでしょう。

湖「トビリシ・シー」は街からタクシーで20分ほど。地元の人たちが数名泳いでいた。

街のはずれには「トビリシ・シー」という湖があり、湖畔でゆっくり腰を下ろしながらビールを飲むのも最高です。

神秘的なムード漂うモニュメント。

モニュメントには休憩所があって、そこでビールやスナックを購入することも可能。

夕日がまっすぐ差し込む設計はさすがのひと言。

湖の近くにある小高い丘には「The Chronicle of Georgia」という歴史記念日もあります。これは旧ソ連・ロシアの作家であるズラブ・ツェレテリが手がけたもので、ジョージアの歴史が刻まれています。古代からある遺跡のようなムードで神秘的なムードを感じられるのと、ここから見る夕日も絶景なので、ぜひ訪れて欲しい場所のひとつです。

世界のトップDJがプレイする、クラブ好きなら絶対に訪れたいバシアーニ。

忘れてはならないのがクラブカルチャーです。トビリシはテクノが盛んで、その根幹を担うのが「バシアーニ」というクラブ。

「バシアーニ」への強制捜査に関するドキュメント映画も制作された。タイトルは『Raving Riot』。

ここはドラッグによる死亡事故を背景に、パーティ中に警察の強制捜査が入った場所。結果的にその死亡事故はクラブとは無関係だったことがわかり、そうした政府の圧力的な姿勢に市民は抗議デモを行いました。内務大臣が謝罪声明を発表したことでも有名です。

ベルリンにある「ベルグハイン」と同様に、こちらもバウンサーによるフェイスコントロールを通過しないと中に入れない。入る前にスマホのカメラにシールを貼られる。もちろん撮影不可。

ユニークなのが、その立地。街の中心にある「ボリス・パイチャーゼ スタジアム」の地下にあり、あの格闘漫画の地下闘技場で行われているトーナメントのような盛り上がりが毎週末、昼過ぎまで繰り広げられています。

中のショップで購入した「バシアーニ」のTシャツ。ロゴがプリントされただけのシンプルなデザイン。www.facebook.com/bassiani

パーティにもよると思いますが、中はほぼ真っ暗。一般的な体育館ほどの大きさのメインステージと、200人ほどのキャパシティのサブフロアがあり、どちらも多様性にあふれる人たちでパンパンになっていました。入場料もパーティによってまちまちだと思いますが、平均すると50ラリほどで、中で売られているお酒は大体15ラリほど。本場のアンダーグラウンドカルチャーを知りたいなら絶対に行くべき場所です。

こちらは「Art-Cafe Home」の様子。火曜の真夜中3時でこの状態。本場のバキバキなテクノを聴きながら、激しく踊るローカルたち。www.facebook.com/HOMEartcafe

ちなみにトビリシでは「KHIDI」や「Art-Cafe Home」もおすすめです。後者のクラブはキャパシティの規模こそ違いますが、平日でもお構いなくパーティが開催され、その盛り上がりは週末のそれと遜色ないほど。ローカルの人々にとって、いかに音楽が救いであるかが分かります。

1泊だけ自然の景色を堪能するためにカズベキへ。

ジョージアで訪れるべき場所はトビリシ以外にもあります。もし都会に飽きたなら、山間の村・カズベギにも見所があります。

ディドベ駅の様子。付近ではマーケットが連日開催されている。

トビリシからはタクシーに乗って4時間ほどの距離。地下鉄のディドベ駅から乗り合いタクシーを探し、ひとり30~50ラリ(激安!)ほどでカズベギまで連れていってくれます。


ドライバーが道中でトイレ休憩を挟んでくれる。そこで降りた場所も素晴らしかった。途中、事故車も発見。

移動中は、某車窓番組のような田舎風景が広がり、景色を眺めているだけで4時間という移動時間があっという間に感じるほど。ちなみにジョージアのドライバーはみんな運転が荒く、崖沿いの道でもおかまいなしにスピードを出してトラックを追い越します。

一番奥に見えるのがカズベキ山。

カズベキ村はたくさんのハイカーが訪れる場所で、バックパックを背負った人々を見かけます。なによりも素晴らしいのがその景色。カズベキ山の雄大で堂々たる姿を見ていると、いつの間にか心が洗われ、リラックスしている自分に気付かされます。


ホテルの内装も素晴らしく、まさにヒップなホテルという感じ。スタッフの人柄もよかった。roomshotels.com/kazbegi

気合を入れれば日帰りも可能ですが、それだと弾丸滞在になってしまうので、この村で一泊するのが基本。ホテルは「rooms hotel」が断然おすすめです。眺望が素晴らしい部屋はもちろん、サウナ、ジム、プール、ラウンジバーなども充実しているのが魅力。ホスピタリティ精神にあふれたホテルで、ロングドライブの疲れを癒しましょう。


色とりどりの食材があるビュッフェ。食べ終わった後はテラスで絶景を眺めながらコーヒーを飲んでゆっくり過ごすのもあり。

朝に一流ホテルのそれと同じレベルの豪華なメニューが並んだビュッフェを食べられるところも、このホテルの優れたポイントです。卵料理にベーコンやソーセージ、スープ、新鮮な野菜とフルーツ、ケーキやグラノーラ、ヨーグルトといったベーシックなものから、ガッツリとした肉料理まであり、至れり尽くせり。このビュッフェのために訪れてもいいレベルです。


まるでハイジの世界に迷いこんだかのような景色。教会には番犬もいた。

朝食を楽しんだ後は、カズベキ山の中腹にある「ゲルゲティ・サメバ教会」へ。ホテルがタクシーを手配してくれます。運賃はちょっと高めの25ラリ。ホテルから15分ほどの距離ですが、きちんと往復してくれます。山の景色に囲まれた教会は “天国に一番近い” と称されるほど神秘的な景観が望めます。そのままカズベキ山を登ろうとするツワモノの登山家たちもいました。村自体には観光できるような場所はなく、教会を楽しんだらトビリシに戻るのがいいでしょう。

気になる日本からのフライトや現地の交通、滞在費。

日本からトビリシへは、ドーハを経由して約16時間ほどの距離です。航空券は往復で11万円が目安で、特にビザを取得する必要はありません。

言葉はジョージア語、ロシア語がほとんど。若い人たちの大半は英語が通じるので、何か困ったことがあれば若い人たちに相談するのがいいかもしれません。

宿泊はAirbnbがおすすめで、町の中心である「リバティ スクエア」駅の近くに泊まったところ、5泊の滞在で約2万円でした。ただ、結構部屋が古くて施設自体はそこまでいいといえなかったので、ホテルの利用するのもいいと思います。時期にもよりますが、それでも宿泊費は1泊5,000~6,000円ほどでいい部屋に泊まれると思います。

公共交通機関は電車とバスですが、バスは時間通りに来なかったり、運行してなかったりもするので、タクシーを利用するのがおすすめです。前述の通り、日本よりも断然料金が安いので距離を気にせず乗れるのもうれしいポイント。ただ、白タクもいるので、Uberなどのサービスを利用するのが安心です。

2020年、1年の計画を立てている人もそうでない人も、ひとまずジョージアという国をチェックすることをおすすめします。1週間、低予算で豪遊が可能。楽しすぎて日本に帰りたくないとなるのはもちろん、むしろ住んでもいいと思えるくらい素敵な国です。

Photo & Text_Yuichiro Tsuji

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