オペラ観劇のために真っ赤なドレスに身を包んだヴィヴィアンがあらわれると、エドワードは「これを君に」とケースを取り出し、開けてみせる。ヴィヴィアンが覗き込み、恐る恐る手を差し入れた瞬間、エドワードは勢いよく蓋を閉じた。指を挟まれたヴィヴィアンはつかの間呆気にとられ、笑いが爆発する。
『プリティ・ウーマン』のあまりにも有名なこのシーンの名脇役が〈フレッド(FRED)〉だった。ヴィヴィアンが目を輝かせたケースのなかには、〈フレッド〉のハートをモチーフとしたネックレスが鎮座していた。
映画はエドワードがバラを携え、ヴィヴィアンを迎えに行くところで終わる。もしそのまま結婚していたなら、ふたりはここで紹介するブライダルリングをきっとつけたに違いない。
細身のリングにダイヤモンドを敷き詰めた繊細極まりない「フレッド フォー ラブ」、メゾンのアイコンであるケーブルデザインをブラッシュアップした「フォース10」、フランス語で “一目惚れ” の意となる、丸みのあるスクエアフォルムを具現した「クードゥ フードゥル」──。ブライダルリングならではの気品を備えながら、ブライダルリングの “型にはまらない” 独創性がある。オペラを観に行くときにはもちろん申し分のないリングだけれど、普段使いに物足りなさや気恥ずかしさを感じることもない。カジュアルなスタイルをいい塩梅でドレスアップしてくれるリングだ。
ちなみに、ふたりが足を運んだオペラを調べたら、『椿姫』だった。裕福な男性と恋に落ちる娼婦の話である──というオチで担当に送稿しようと思ったら、『プリティ・ウーマン』は公開からすでに30年も経っていた。馴染みのない読者のために付け加えれば、『プリティ・ウーマン』は現代のシンデレラ・ストーリーともいうべき物語で、ジュリア・ロバーツがヴィヴィアンよろしくスターダムにのし上がった出世作だ。相手役はリチャード・ギアが務めた。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa