ロンドンのサヴィル・ロウからその名をとった〈ザ・ロウ(THE ROW)〉は文字通り最高峰のテーラリングとファブリックを追い求めている。
〈ザ・ロウ〉はメアリー=ケイト・オルセンとアシュリー・オルセンが2006年に立ち上げたブランドだ。10年にニューヨーク・ファッションウィークでランウェイ・デビューを果たし、12年に「CFDA」のウィメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞。そうして満を持して18年、メンズコレクションをローンチした。
彼女たちの魅力を一言でいえば、透き通るようなクリーンなデザインワークに尽きる。ミニマルなパターンは上で挙げたこだわりをくっきりと浮かび上がらせる。
ステッチレスの襟元や比翼仕立てといったつくり込みからは確かにサヴィル・ロウへのオマージュが感じられる。老練のテーラーもうなるだろう。
ヴィンテージと見紛うテクスチャーは選り抜きのコットンに丁寧に洗いをかけた賜物だ。
しかしなんといっても見逃せないのがニューヨーカーの息遣いである。ボクシー、かつショートなパッチポケット付きのフロントジップジャケット、あるいはメタルスライダーをあしらったベルトを通したミッドライズのクロップドパンツ――その手触りは、エフォートレス。
Photo_Hiroyuki Takashima(Still Life)
Text_Kei Takegawa