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底知れぬアートコートの影響力。ゴーパーキーが仕掛ける5ヶ所目の舞台は、江戸川区の高架下。

先日の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」。来年のパリ五輪への出場権を見事に獲得した日本代表に釘付けだった読者も多いのではないでしょうか。それからほどなくしてNBAも開幕。八村塁に渡邊雄太。もう誰がなんと言おうとバスケの波が来ている昨今の日本において、アートのパワーでバスケシーンに一石を投じるプロジェクトが進行中なのをご存じですか?

仕掛けたのは、公園内のバスケコートのリノベーションを通してアーティストと地元民を繋ぎ、地域一丸となってアートコートを創り上げる団体「ゴーパーキー(go parkey)」。その第一弾となる「浜町公園」での取材から約1年半。新たな舞台は、東京都江戸川区にある「松本第二児童遊園」です。なんだかアングラ感漂う高架下のハーフコートを、見事にアートコートへと昇華。11月某日、ローンチを間近に控えた「ゴーパーキー」の海老原奨さんとアートワークを担当したimaoneさんのもとを訪れました。


PROFILE

海老原 奨
go parkey 代表

幼少期より公園でバスケットボール活動を続け、アメリカを中心に世界中の公園コートでの大会に参加。2019年に一般社団法人「go parkey」を設立し、地域のキッズ・自治体・民間企業がアートとスポーツを通じて一体となり、街の新たな空間を創り上げるプロジェクト「リノベーション・アンド・アートコート」を展開。ちなみに、parkey(パーキー)とは、公園バスケを愛する人々を表す造語。
Instagram:
@go parkey
@ab_tokyo

PROFILE

imaone
アーティスト

国内外で活躍する日本人アーティスト。ミューラル(壁画)に特化したアーティストエージェンシー「THA」アートディレクターを務める。代表作に、ドイツ連邦共和国大使館、韓国・京畿道美術館、Facebook JAPANオフィスへの壁画などがある。
Instagram:@imaone

肌で感じるアートコートの影響力。

ー 日本橋浜町のアートコート取材から約1年半。まずは、ここ「松本第二児童遊園」のアートコートがローンチするまでの活動について伺いたいです。

海老原:アートコート自体は5つ目になるんですが、中央区「浜町公園」と同じく〈スポルディング(SPALDING)〉さんのサポートを受けてつくるのは、ここが2つ目ですね。それ以外だと、新宿区「大久保公園」、世田谷区「池之上青少年交流センター」、埼玉県吉川市「アクアパーク」があります。いずれも、子供たちへのクリニックや3×3の大会など、イベントを開いてバスケットボールをより身近に感じてもらえるよう、地域の方たちと交流を深めています。

ー 着々とアートコートが増えてますね。

海老原:おかげさまで。今回のリノベーションは、「ゴーパーキー」として初めてのプロジェクトである「浜町公園」のアートコートづくりに〈スポルディング〉さんがサポートしてくださったことに起因します。「誰もがスポーツをできる環境づくり」という考えが一緒だったこと、そして、継続的に連絡を取り合っている流れで、今回もいろんな要因が重なり実現することができました。本当にご縁ですね。

ー この流れで日本中にアートコートができていくと、もっとバスケシーンが盛り上がりそうですね。実際、これまで手掛けた4つのアートコートの反響ってどうですか?

海老原:子供たちや自治体も含めて、前向きなフィードバックをいただいてます。一番多いのは、やっぱり使いやすくなったということ。デザイン性については、素晴らしい、カッコいいって感想をくださるんですけど、ぼくたちがこだわっているところに、野晒しになっていた場所を使いやすいように手直しするっていう点があって。なので、滑りにくくなったとか、ラインがはっきり見えるようになったとか、カラフルなコートでプレイできて楽しいって言われるのは嬉しいですね。あとは、海外のバスケファンやカルチャーアートファンの方々が来たりするっていうのを聞くと、なおさら良かったなって思います。

ー 旅の目的にもなっているんですね。

海老原:このコートはどこで見られるのか、無料でプレイできるのかとか、そういった問い合わせも増えました。海外メディアで取り上げられることも多く、先日、優れた運動施設を表彰するアワードで、大久保公園が『フューチャー・プロジェクト』部門賞と、全部門を通じての大賞(MVP)である『プロジェクト・オブ・ジ・イヤー2023』をダブル受賞しました。


海外から取り寄せた、機能的なコート専用塗料。

ー 今回、5人目のアーティストとしてimaoneさんにオファーするに至った経緯についてお伺いできますか?

海老原:先ほど、リノベーションしたら良さそうなコートとそれに合うアーティストを常に探しているっていう話をしましたが、そのなかの一人にimaoneさんがいて、前々から声をかけていたんですけど、なかなかタイミングが合わず、今回ようやく実現した感じですね。

imaone:そうだね。「ゴーパーキー」には、エビちゃん(海老原さん)と、もう1人、小澤さんって人がいて。小澤さんとはかれこれ20年くらいの付き合いになるのかな。仕事も一緒にしてましたし。なので、ずっと知り合いでした。

ー なるほど。普段の創作活動のなかで、コートに絵を描くようなことってありますか?

imaone:壁画の流れでちょこっと床を塗る程度はあったんですけど、 ここまで大きいのは初めてですね。しかもコート専用の塗料で。

ー コート専用の塗料ですか?

海老原:一般の塗料とは違って、いわゆるスポーツ施設用の塗料っていうのがあるんですけど、機能面においても最高級の塗料を海外から輸入して使っています。

imaone:これは大きなポイントですよね。普通使わないですから。

ー デザイン性だけじゃなくて、ちゃんと実用性も兼ね備えていると。

海老原:そうですね。これは浜町からずっと同じです。

imaone:この塗料が初めてだったんで、やっぱり面食らいましたよ。全然使い方が違うんで。さっきエビちゃんが言ったように、機能性を保つのであれば、ヘラでベトって塗るんじゃなくて、刷毛とかローラーで綺麗に伸ばしながらやらないととか。素材選びから頭の使い方、実際の作業工程まで、普段の創作活動とかなり違いましたね。正直大変でした(笑)。

ー 制作期間はどれくらいだったんですか?

imaone:整地も含めて3週間くらいですね。

ー かなりのスピード感で。デザインする上で、注意した点はありますか?

imaone:横から見たり上から見たり、車で通ったときとか、全体としてどこからどう見えるのかは意識しました。いつもは大きな壁画とかキャンバスに描いていますが、さっきも言ったように普段と頭の使い方が違うので、今回は描くというより力で持っていく作業に近いというか。遠目から見ても目立つよう大きな線で見せていくのが、ひとつの条件なんだろうなっていう解釈で進めていきました。

ー この配色には何か意味があるんですか?

imaone:初めて来たときに、高架下で天井がコンクリートの印象が強くて、ちょっと薄暗い雰囲気を感じたので、それを払拭させるポジティブなカラーにしたいという思いがありました。

海老原:たしかに、ここは元々アスファルト道路と同じような古びたコートでしたよね。

imaone:いつもは1体のキャラクターを綿密に描いていくスタイルなんですけど、 それよりもっと賑やかな感じにしたくて、 結果的にキャラクターを散りばめた、柄みたいなデザインにしました。ここに来た人の気分が高ぶってくれたらいいなと思って。

ー 海老原さんはいかがですか?

海老原:さっきimaoneさんも言ってましたが、imaoneさんの絵って大きいキャラクターのイメージなんです。だから、最初にこの柄が出てきたとき、純粋にびっくりしました。まったく予想してなかったので。同時に、めちゃくちゃワクワクしましたね。

海老原:あと、これまでのプロジェクトは、いわゆる施工業者さんや工事業者さんに依頼する部分もあったんですけど、今回は技術面を含めて、全部「ゴーパーキー」とimaoneさんだけでつくっているんです。休日には〈スポルディング〉のスタッフさんがペイント作業を手伝ってくれたり。というのも、バスケットコートにアートを描く場合、「コートとしての機能性」と「アートとしての美しさ」の両方を実現しなければならない。そうした制作過程において、細かい大事な技術ポイントが結構あったりして、自分たちだけで完結させた方が完成度高く、かつスピーディに進められるんです。そういったことを、過去4つのコートづくりから学び、試行錯誤しながら活かしています。


使われて初めて完成するのがアートコート。

ー ちなみに、作品に対して出し戻しって結構あるんですか?

海老原:これまでのプロジェクトもそうなんですけど、可能な限りアーティストさんが表現したいものをフルに出せるよう配慮しています。

imaone:普通アートって、額に入れて飾るっていう用途が多いと思うんですけど、コートの場合はプレーして踏まれるもの。そこがこのプロジェクトならではの面白みなのかなと思っています。アートコートの中でプレーしていることも全部込みでアートっていうか…。プレーして汚れていくうちに完成形になるのかなって。

ー これからの「松本第二児童遊園」に期待することはありますか?

11月11日(土)に行われたオープニングセレモニーの様子。

海老原:まずは、子供たちでいっぱいになってほしいですね。日本のバスケットボールって、やっぱりスゴイ真面目で。チームを抜けると引退っていうのがあって、いわゆる競技バスケットだと、引退以降は中途半端にやるもんじゃないみたいな風潮があるんです。でも、公園のバスケットボールに引退はないですし、ここにふらっと来れば、自分とコートがあって、好きなバスケと繋がり続けられます。imaoneさんの絵もあるし、誰かしら別のモチベーションで来た人と友達になるかもしれない。そういう交流のきっかけになってくれたらいいですよね。もちろん大人も、ふらっとシュートを打ちに来てほしいですよね。

あとは、バスケしか興味がなかった子たちが、imaoneさんの作品に触れて、アートに関心を持つようになったり、ミューラルアートを観るようになったり、アートとバスケのシナジーも期待ししています。

imaone:たくさんの人に来ていただいて、たくさん踏んでもらって。知らずのうちにアートに触れることで、アート自体の敷居が下がればなって。ガシガシ使ってもらって、アートコートが身近にある世の中になるといいなって思います。

ー 「松本第二児童遊園」のオープン後、ここを使った取り組みの予定はありますか?

海老原:ちょうど1年後に〈スポルディング〉さんと周年イベントを企画しています。いまはまだピカピカですけど、1年後にはたくさんの人たちに使われて、バッシュの跡だったり、汚れだったりが付いているはず。そうしたアートの変化とともに、周りの景観にフィットしていくことをいまから楽しみにしています。

ー 最後に、訪れる人、利用する人にひと言お願いします。

海老原:ただただ、自由に使ってほしいです。バスケするのもいいし、見てるだけでもいいし。写真を撮って帰るだけでもいいし。

imaone:そうですね。自由に楽しく使ってもらえたら嬉しいです。世代に関係なく、いいスポットになるといいですね。

Photo_Yuya Wada
Text_Jun Nakada

INFORMATION

松本第二児童遊園リノベーション・アンド・アートコートプロジェクト

場所::松本第二児童遊園
住所:東京都江戸川区松本1-38
主催:一般社団法人go parkey(ゴー・パーキー)
協賛:SPALDING
後援:江戸川区役所
参加アーティスト:Imaone
Instagram:
@go_parkey
@spalding_japan
@imaone

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