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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.81 “こういうのでイイんだよね”と、つぶやきたくなるテッキーなベスト。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップがすべて入れ替わり、この連載も遂に11シーズン目に! トップバッターを飾る第81回目は、桜上水のニューフェイス「モーニンストア(MOANINʼSTORE)」の原田大さん。どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


原田大 / MOANINʼSTORE ディレクター
Vol.81_CANYON RIVER BLUESのナイロンジップベスト

―原田さんは元々、ストリート寄りのインポートセレクトショップ出身ですが、古着畑のお店と比べてセレクトするアイテムやノリに違いってありますか?

多分違うと思います。まず“古いモノ”に対しての価値の付け方がそうで、それがどんなに年代の古いヴィンテージであろうと、「いま、格好良く着ることが出来なかったら意味がないでしょ」って感覚がぼくの中にはあるので、「去年まではナシだったけど、いまならアリ」とか、むしろ流動的に変わっていく世の中のバイブスや気分に適応出来るアイテムを揃えるっていう、柔軟性は大事にするように意識しています。

―その前提がある上でお聞きします。あなたにとってニュー・ヴィンテージとは?

いまは、高いお金を出したり頑張って探さずとも普通に手に入り、かつ10年後、15年後に振り返った時に「そういえば、アレって面白かったかも」と記憶に残るモノ。ですかね。その上で、古着的に価値の付いていないモノを“古着としてちゃんと売る”のであれば、モノ自体のクオリティレベルは重要。例えばですが、最近“Y2K”というキーワードで取り挙げられているアイテムはぼくも好きですが、その中には将来“古着にならないモノ”もいっぱいあるんですよね。なので、そこの見極めはやっぱ必要かなって。

―今回紹介するアイテムはその辺りもクリアしていると?

そこで、こんなベストを用意しました。〈キャニオン リバー ブルース(CANYON RIVER BLUES)〉というブランドで、アメリカの百貨店「シアーズ(Sears)」やディスカウントストア「ケーマート(Kmart)」で、独自に展開されていたオリジナルブランド。いわゆるストアブランドってやつですね。どうやら1980年代には既に存在していたようで、両社の公式サイトを見る限り、まだブランドは継続しているようです。古着でもチョイチョイ出てくるので、見かけた覚えのある人も意外と多いかと。

CANYON RIVER BLUESのナイロンジップベスト ¥13,200(モーニンストア)

以前、「アーリートゥエンティ(Early20)」の重光さんが00年代のモール系ブランドを紹介していましたが、それとノリ的には近いような。

ですかね。ぼくの場合、店をはじめる際に「レギュラーもので勝負したい」という思いがあり、その視点から「00年代のアイテムにも古着の仲間入りが出来るモノはあるでしょ」と改めて掘り起こしていく中で、目に止まったのがこのブランドです。今回紹介するベストは2000年初頭のモノで、同時期にアウトドアテイストやテックなディテールを取り入れたモノがチラホラ作られていて面白いんですよ。

―これはまさにですね。

ポイントは、フロント胸部と腹部にデザインされたポケット。腹部はダーツを入れて立体的に成形したフラップポケットを左右に。胸ポケットを開くと内部にもポケットが配置されていて、クリアラバー素材の胸パッチやジップ引き手がY2Kムード。また、背面にもポケットがデザインされています。

―これってどんな用途を想定したポケットなんですかね?

ね、何用なんでしょう?(笑)。背面ウエスト位置のポケットっていうと、サイクリングウェアではよく見かけますよね。行動食とかドリンクボトルを入れたりするような。それなのかなって思ったんですが、フラップが邪魔だし、運転しながらだと荷物が取り出しづらそう……。なので正直ぼくは、ただのギミックとして捉えています(笑)。必要性があるのかはなんとも言えませんが、オモチャ感覚というかステルス性があって単純に面白いっていう意味では、十分に加点材料です。

―若い世代のテック系のアーカイブ好きやゴープコア好きからの反応が良さそう。

そうですね、個人的にアウトドアブランドやスポーツブランドが作ったテッキーなアイテムって、ちょっとオーバースペックだと感じていたりして。もちろんだからこその格好良さというのも理解は出来るんですが、街で着るのにちょっと気張りすぎかなって。むしろそういった一流ブランドの本格アイテムを真似して、その雰囲気だけをすくい取ったようなアイテムをファッションとして着る感じが、いまウチのやりたいテンションなので、そこにもすごくハマる。もちろんストアブランドということで大量生産品ではあるものの、作り自体はしっかりしていますしね。

―先ほど、古着市場でチラホラ見つかるという話はありましたが、それは現在進行形で?

ぼくが古着のバイイングを始めた頃はそこら辺で普通に売っていたんですが、最近は見つけづらくなっているように感じます。アイテム的にはネルシャツやデニムジャケット、デニムパンツのイメージが強く、こういったシェル系は意外と気付いていない人も多くて狙い目。しかもこのベストはアウターにもミドラーにも使えるし、ちょっとギミックが効いてイイ雰囲気で着られる。ぼくはチャリに乗るんですが、その際にも活躍してくれそうです。

―それは機能性を備えつつも“あくまでファッションとしての服”ということですね。

そうです。ぼくの店はアウトドアウェアやスポーツウェアの専門店ではなく、あくまで小さな服屋なので。ただひとつ留意いただきたいのが、〈キャニオン リバー ブルース〉の場合も他ブランドと同様に年代によっての良い・悪いはあるということ。そこを見極めることが出来れば、めっちゃ面白いと思うので、ぜひ探してみてください。

原田大 / MOANINʼSTORE ディレクター
原宿の某インポートショップで長年メインバイヤーを務めつつ、同系列のスケートショップでオリジナルアイテムのデザインなどを手掛けたのち、2023年4月に自身が手掛けるユーズド&セレクトショップ「MOANINʼSTORE」を桜上水にオープン。移動の足はもっぱら自転車で、絵や写真も嗜む。
公式サイト:moanin.theshop.jp
インスタグラム:@moaninstore

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