2023年11月、〈オメガ(OMEGA)〉の歴史を紐解くエキシビション「プラネット オメガ」がニューヨークで開催された。スペース(宇宙)、ジェームズ・ボンド、スポーツとオリンピック、オーシャン…6つのエリアで構成された会場をぐるりと回れば〈オメガ〉の来し方が堪能できるそのエキシビションは盛況のうちに幕を閉じた。
多くの著名人も来場して盛り上げにひと役買ったこのエキシビションで、アンバサダーのダニエル・クレイグが身につけて話題になったのが「スピードマスター ムーンウォッチ」だ。
視認性を最重要課題としてデザインされた初代スピードマスターはブラックダイアルにホワイトの針とインデックスを組み合わせた。以来その配色はスピードマスターのヘリテージとなった。今回のモデルはこれをあえてテレコにしたのだが、そこにはまた別のヘリテージへのオマージュが込められている。
そのカラーパレットは、ひとつが〈オメガ〉にとって切っても切れない縁にある船外活動の宇宙服、そしてもうひとつが「NASA」の極秘プロジェクトとしてつくり上げた「アラスカ Ⅰ」に倣っている。そこに差した赤も単なるアクセントカラーではない。前者=階級を表すライン、後者=保護ケースから拾った色なのだ。
ムーンウォッチでははじめてとなる、ラッカー仕上げを施したホワイトダイアルは、水面のようなきらめきをたたえている。
ムーブメントは宇宙飛行士が全幅の信頼を置いたキャリバー321の最新バージョン、コーアクシャル マスター クロノメーター キャリバー 3861。「ドット オーバー 90」のタキメータースケールや5つのアーチ型リンクで1列を構成するクラシカルなステンレススティール製ブレスレットも見どころだ。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa