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フイナムテレビ ドラマのものさし

2014 April-June vol.04 7/8up

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2014 April-June vol.04 7/8up
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公式HPより
『続・最後から二番目の恋』フジテレビ 木曜22時 第9~10話(終了)
『続・最後から二番目の恋』が全10話で最終回を迎えた。人によっては「毎回だらだらと同じような話を繰り返してるだけで、ちっともドラマチックじゃないな」と思うかもしれないが、そういう人には「ドラマチックじゃない。これがドラマだ」と言おう。
まあ、あまりにも歳が若い人(とお酒を飲まない人)にはこのドラマの本質は理解できないのではないか、などと言いたくなるほど、オトナのせつなさ、やるせなさ、おかしさに満ちていたわけだが、第9話で長倉和平(中井貴一)と吉野千明(小泉今日子)が一緒に人間ドックに行くエピソードには、そこはかとなく「老い/死」の気配が漂っていた。
健康には自信があったものの検査結果が思ったほど芳しくなく、もう若くはないことを自覚せざるを得ない和平52歳。一方、不摂生な生活から検査にビビりまくっていた千明48歳はいたって健康という皮肉。鎌倉に住むようになって健康的になったのかもしれないと思い当たる千明は、和平の体を心配し、「人の痛みとかわがままとか吸収して受け止め過ぎなんじゃないですか」とたしなめる。「さみしい人を吸い寄せちゃうんですよ、あなたも鎌倉も。優しいんですよね。だから、みんな好きになっちゃうんです。鎌倉も長倉も。カマクラ、ナガクラ。似てません?」
この連載のvol.2で書いた「カマクラとナガクラの類似」について千明が指摘していて思わず「よし!」とうなづいたのだが、よそから来た縁もゆかりもない千明にとって、カマクラもナガクラも、自分を家族のように受け入れてくれる居心地のいい場所だったのだ。人間ドックのあと、海を見渡す清々しいレストランでビールを飲んだふたりは、「こんな健康的なところにいると、そろそろ不健康なところに行きたくなりますね」という千明の提案から、行きがかり上「昼キャバ」に行くはめになるのだが、お気づきのように、カマクラ、ナガクラときて、キャバクラというオチがついているのである。
さらに9話の終盤では、和平が死別した妻との過去の記憶を「成仏」させるくだりがある。和平が毎朝海辺を歩き、桜貝を拾うのは亡き妻の習慣を引き継いだからなのだが、妻の目的は、拾った貝殻で「喫茶ナガクラ」の看板に装飾を施すためだったということがわかる。長倉家の面々に千明も混ざり、和平の妻ができなかったことを代わりに成し遂げるのだが、これによって、和平は妻との思い出にようやくカタをつけることができたのだろう。千明が亡き妻の願いをともに叶えてくれたのである。それは、和平が千明を長倉家に迎え入れるために必要な儀式だったのだ。
最終話は、全編長倉家のリビングと庭しか映らないという斬新な展開だったが、単に奇をてらっているわけでも、ロケに出る時間がなかったからでも(おそらく)なく、これにはちゃんと意味がある。第9話の「儀式」によって長倉家に迎えられることになった千明が、本当の意味で長倉の「家」の一員になっていく話なので、長倉家しか映らないのはなんら不思議ではない。言ってみれば、スティーブン・キングの『シャイニング』の主役がホテルそのものだったように、ここでは長倉家がひとつの人格をもった主役になっているともいえる。あるいは保坂和志の小説『カンバセイション・ピース』の舞台となる、かつて主人公の伯父が住んでいた過去の記憶が渦巻く民家を連想したりもする。
冒頭、カメラは長倉家のリビングの隅に置かれたソファから、まるで空間をいつくしむようにゆっくりと右方向へパンしていく。ここでまずソファが映ることにも意味があって、それは終盤、和平が語る両親の記憶とリンクしている。
長倉家の各部屋はそれほど広くないのにリビングだけがやたらと広いのは、「家族や家族じゃない人たちが、まるで家族のように常に集まってわいわいやっている」のが、この家を建てた和平の父親の理想だったからだ。和平が小さい頃、夜中に起きてリビングの前を通った時、父と母がソファで寄り添って寝ている光景を目にしたことがあるという。「笑っているように寝ていた」両親の顔を見て、「子どもながらにふたりがすごく幸せそうに見えた」光景を、和平はいまでも忘れられずにいる。
やがて、両親が亡くなり、金銭的に困って家を売ろうと思ったこともあった和平だったが、そんな時、いつもエサを上げていた通い猫を見て、家がなくなったらこの猫ももう来られなくなると思い、「ここにいるのは家族だけじゃない」と気づき、家を手離すのを思いとどまったのだ。
その話を、膝に通い猫を乗せた千明が聞いている。ここで、千明もまた長倉家に居ついた猫なのだということがわかる。毎朝、長倉家で朝食を食べる千明は、かつてここに通い、エサをもらい、長倉家の売却を思いとどまらせた猫の生まれ変わりなのかもしれない。
そんな長倉家のリビングでは、べろべろに酔っぱらった和平と千明の「酔いどれプロポーズ」へとなだれ込むのだが、やがて朝日に包まれ寄り添うようにして眠る和平と千明の姿をカメラは捉える。そう、和平の両親が幸せそうに寄り添って寝ていた、あのソファで。こうして家族の幸せな記憶は受け継がれ、リビングはふたたびあたらしい歴史を紡いでゆく。
もし続編があるのならぜひ楽しみにしたいところだが、『続々・最後から二番目の恋』というのもヘンだし、『続・最後から二番目の恋season2』『新・最後から二番目の恋』になると、もはやその恋が最後から何番目なのかよくわからなくなる。
連ドラは無理でも、年1回のスペシャルででも、このふたりと長倉家の面々の成長を見続けたいと思う。さながら「歳をとるサザエさん一家」のように。「また彼らに会いたい」と思わせるドラマほど、強いものはない。還暦の和平さんを見てみたい。
さて、そんなことを書いているうちに早7月も第2週、新ドラマがスタートする時期になってしまった(すでに始まっているものもある)。
今期の注目は、何はさておき『おやじの背中』だろう。「ドラマは脚本家で見ろ」を実証するように、10人の脚本家が1話完結のドラマを書く、脚本家バトルともいえる異例の企画だ。
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公式HPより
『おやじの背中』TBS 日曜21時 7月13日スタート
集められた脚本家は、『続・最後から二番目の恋』も手掛けた岡田恵和をはじめ、映画『復讐するは我にあり』の池端俊策、『GOOD LUCK!!』の井上由美子、『金曜日の妻たちへ』の鎌田敏夫、『すいか』の木皿泉、『北の国から』の倉本聰、『最高の離婚』の坂元裕二、『僕の生きる道』の橋部敦子、『古畑任三郎』の三谷幸喜、『ふぞろいの林檎たち』の山田太一という錚々たるメンツ。
日曜21時という、『華麗なる一族』『半沢直樹』のヒットを生んだ時間帯だが、かつては1話完結ドラマの『東芝日曜劇場』を放送していた枠なので、むしろ先祖がえりをしたと言っていい。7月13日放送の第1話は、岡田惠和脚本、田村正和、松たか子が父と娘を演じる『圭さんと瞳子さん』。嫁にいかない娘をもつ父親という小津安二郎風な王道の設定らしいが、果たしてどうひねりを効かせるのか。
つづく第2話は、役所広司がボクシングコーチの父、満島ひかりが選手である娘を演じる『ウェディング・マッチ』。坂元裕二の脚本と役所・満島の画づらから、イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー』を思わず想像するが、あんなにヘビーな話ではないのだろうな、おそらく。
第3話は倉本聰脚本の『なごり雪』。主演・西田敏行、演出・石橋冠は、あの名作ドラマ『池中玄太80キロ』のコンビだ。
今のところ詳細が発表されているのはここまで。が、放送日は未定ながら、山田太一脚本の『よろしくな。息子』では渡辺謙と東出昌大が共演、これって渡辺の娘・杏と熱愛中の東出に対しての「娘をよろしくな」なんだろうか、などと、期待はふくらむばかり。
まあ、「東芝日曜劇場」を思い出すと、1話完結というスタイルは結構食い足りない印象もあるので、過度な期待をせずに、うすぼんやりと楽しみにしていたい。
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公式HPより
『若者たち 2014』フジテレビ 水曜22時 7月9日スタート
今期注目のもう1本は、これはもうキャストからして「見なきゃ損でしょ」なドラマ『若者たち 2014』。
1966年に放送された大ヒットしたドラマ『若者たち』を、『北の国から』や映画『最後の忠臣蔵』を演出した杉田成道がリメイクするのだが、杉田の呼びかけに集まったのが妻夫木聡、瑛太、満島ひかり、蒼井優、長澤まさみ、橋本愛ら人気若手俳優たち。オリジナルは、江口洋介主演のドラマ『ひとつ屋根の下』の元ネタになった名作ドラマだが、高度成長期の若者たちの苦悩をどう現代に変換するのかが見ものだろう。案外、若者をめぐる問題は過去と地続きなのか、あるいは「今どきそんな奴いねーよ」になるのか。
テレ東深夜は『孤独のグルメseason4』(7月9日~)や人気コミックのドラマ化『アラサーちゃん 無修正』(7月25日~)などに食指をそそられるが、このあたりはドラマというよりバラエティに近いつくり方、見方をされる路線なので、あまりここで採り上げてとやかく言うこともないだろう。
島本和彦の自伝的マンガを、島本を師匠と呼び、そのイズムを継承すると公言する福田雄一がドラマ化する『アオイホノオ』(テレビ東京・7月18日~)、『モテキ』の久保ミツロウが原作、映画『デトロイト・メタル・シティ』の李闘士男が演出を手掛け、久保が大ファンという早見あかりが主演する『アゲイン!!』(TBS・7月22日)あたりも注目作ではあるが、はてさて。

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