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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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いまはガマンですよ

2009.10.20

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 昨日のオープニングセレモニーの件、コメントありがとうございます。皆さん、いまの安物衣料、もとい、ファストファッションにはやはり物申したいというか何というかそんな気分なのですね。ぼくもそうです。立場上、会社上言えないこともあるのでどうもペン先も鈍ります。ってキーボードでタイプしてますが。

 とにかくここんとこのファッションのニュースは安物衣料、ああまた間違えた、ファストファッションかあるいはスーパーの投げ売り衣料のネタばかりです。少しは始まったばかりの東京コレクションについて言及するメディアとかあってもバチは当たらんと思うのですが。どうでしょう。

 ファッション関係の皆さん、デパート関係の皆さん、いまは嵐が頭上で暴れ回っていますが、夜明けはもうすぐです。こんなブームはいまがピーク。徐々に顧客は戻ってきますよ。楽観的に行きましょう。何も命を取られる訳じゃないですからね。

 ただ、費用対効果とでもいうのでしょうか、適正な価格の製品でないと今後難しいなというのは、身にしみて感じています。

 そのオープニングセレモニーで見た、バンドオブアウトサイダーのブロードBDシャツ、上代が4万
4千なんぼでした。普通買いますかね、綿ブロードの既製服のシャツをこの値段で。シルクならまだしも綿ですからね。大体、服のコストはわかります。しかしコストから原価率を掛けて上代を決めるようなことをしていないでしょう、こういうブランドは。かといってマーケットイン的なもの作りではなく、あくまでプロダクトアウト。製品の出来上がりの面構えとコストのバランスで、上代を取り決めているという他の業種ではあまり行わない価格の取り決めをしていると思います。間違っていたらごめんなさい。そういうアパレルが多いもので。

 しかしそれはブランドとしての付加価値であるし、否定はしません。コスト1000円のものを5万円で売ろうが、3900円で売ろうがそれはその企業の考え方、商売の仕方です。

 当然高いと数は出ない。しかし利幅は大きい。安いと量はさばけるが、利幅が少ない。最終的にシーズンの終わりでどっちが多くの利益を出せるかは、ブランド力、お店の立地、商品の絶対価値などの要素が加わるのでなんとも言えません。つまり全社がラグジュアリーブランドの商売で後者が、ユニクロ的な商売ですね。

 顧客の皆さんはその左右の振り幅の中で右に振れたり左に振れたり、たまには真ん中ら辺で買い物したりしているわけです。セレクトショップとかね。つまりいまはその振り幅のもっとも強いところでしょう。がまんしましょうというのはそういうことです。

 変な比喩ですが、こんな話も付け加えておきます。

 ぼくの住む町は、そこそこ有名な大学があります。駅からその大学まで15分ちょっと。その途中は商店街になっています。昔はそれこそ地場の店主さんがやっていた飲食店やクリーニング屋やそういうお店が連なっていたのですが、いまではチェーン店の飲食店と携帯電話屋ばかりです。

 安くてそこそこ食えるチェーン店の飲食店もいいけれど、住んでいるぼくらからするとやはり店主のおやじさんが作るスローで安全な飲食物の方がいいわけです。そこに両方の選択肢があれば文句ありません。しかしその商店街は、まるで大きな嵐でなぎ倒されたかのように個人的なお店は吹っ飛び、みんなが知っている画一的なチェーン店が無個性に並んでいます。

 経済を優先した結果、見るも無惨、金太郎飴商店街の完成です。シャッター商店街よりマシだろなんて声も聞こえてきそうですが、これはこれで情けないですよ。

 いま日本のファッション業界もどうもこんな風になりそうな予感がします。いまのままでは。大きな嵐になぎ倒されないよう、個性的な服を作っている、あるいはきちんとした哲学のある服をこさえているブランドの服を買いましょう。

 それが日本のファッションの文化を守る道だと思います。ちゃんとした人たちをきちんと応援しましょう。

Comments: 7

全く同感です。

ヨウジヤマモトの民事再生とユニクロ最高益、ドンキの激安デニムの
ニュースを流すマスコミにも気を使ってもらいたいです。。。

昔やってた12chのファッション通信とか、もっと盛り上げるような
番組をまたやって欲しいですね。

終わりの始まりにならないように。

単なるブームで終わるとイイのですが少し怖いですね。例えばセレクトショップのオリジナルとユニ◯ロの商品自体の品質は以前よりも明らかに縮まっていると誰もが感じていると思います。いや、逆に服好きの人間が手に取っても驚きの商品が多数あるハズ。それでは逆に、単純にですが..どうやったら昔のように様々なお店が賑わいを取り戻すのでしょうか? 個人的にはここ数年、"魅力ある商品"やそれを販売する"魅力あるスタッフ"が欠けていたと思います。それから..以前の蔡さんのハナシにありましたが、まず店舗数を減らし、わざわざでも行きたくなるお店にする事。スタッフを一軍で揃える事かな。昔みたいに借金してでも買いたくなるようなね(笑)。

ファストファッションはアパレル業界のバブル崩壊であり、革命である。本当の物と値段の価値を見極める素晴らしい時代の幕開けですね

時々しれっと放送倫理も越えちゃうマスコミはそんな気遣いなんてしませんよ。
ニュースとして落差が大きいほど、他との差異が際立つほど、インパクトがある訳ですから、
例えば山一證券の倒産やトヨタ最高益、デパ地下の激安タイムセールと比べても
伝える側のテンションは何ら変わりないのでは?

ドンキは『激安の殿堂として黙っていられない』らしいのですが、
ほんとにそんな言葉とマーケットの動向で説明できちゃう理由しかないならとっととやめてほしい。
肌着とジーンズだけの衣料品参入なら、もうそれは「荒らし」でしょう。
安すぎる価格からスタートした競争はどこに行き着くんだろう。
傷は浅いに超したことないはず。

きちんと応援します。
是非ちゃんとした人たちを紹介して行ってください。

今はオシャレをするのにバックグラウンドがいらない時代のような気がします。
僕らが子供の頃は情報が殆どなかったので、ショップに足繁く通って、
何とか格好いい店員さんの着こなしを盗んでやろうと常に考えていたし、
そうして少しづつスキルをアップしながら、洋服とは何ぞや的な事を
学んで(って言ったら大げさですが)いったように思います。
セレクトショップですらもっと緊張感がありました。

ですが今はインターネットがあれば簡単に情報が手に入りますし、
何が流行っていて、どういう着方をすればいいのかまで懇切丁寧に
教えてくれます。
そうするともう、洋服に対して殆ど知識の無かった人ですら、明日には
それなりの格好になれてしまえる。いわゆる脱オタというやつです。

私見ですがここ数年で脱オタさんの数が異常に増えた気がします。
ご存知の通りファッション業界はここ数年でずいぶん裾野が広がりましたが、
その現象に対して、昔から洋服が好きな人は「なんか違うんだよなー」と
首をかしげる人が、自分を含めて多いのではないかと思います。

今のファッション業界(とその渦中にいる人達)は何か決定的なものが
欠けているような気がするんです。
それがつまりバックグラウンドではないかと僕は思うのですが。

ですが今の世の中、商品を作る側もある商品が流行ればすぐに調べて
コピーを作り、次の週には店頭に並んでしまう時代です。
もうバックグラウンドなんて必要ないのかもしれません。
僕は変わらず自分がいいと思った物を買い続けます。

ファストファッションもちゃんとしていると思います。
そうでなければ、一時的でも理解もされないでしょう。
僕は、消費者の買うことに対するクオリティが低いのではないかと考えます。
ファッションの知識がなく、すなわち興味がなく、なぜそれを買うのかを深く堀り下げていないのでしょう。
買うクオリティが上がれば、自ずとすることができるのではないでしょうか。
そのために、発信者たち(カスタマーインでもプロダクトアウトでも)は質の高いモノ・コトを創らなければいけないのだと思います。

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