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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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会社更生法にパッチギを

2010.01.29

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 代官山に最初の事務所を開いたのが94年。物件の契約は、まだ新年開けてお屠蘇気分が残っていた頃のような気がする。調べてみたらリレハンメルオリンピックの年だった。今年もちょうどバンクーバーでオリンピックがある。オリンピックは4年ごとなのでちょうど16年か。ずいぶん経ったなあ。

 その事務所は恵比寿西という住所であった。住所名からすると恵比寿寄りな気がするが、そうではなくて代官山駅に近く、歩いて3〜4分というイメージ。駅を出て左に進路を取って最初の十字路を右に曲がって二軒目だか三軒目かのマンションだ。その交差点を左に曲がった二軒目の地下にイタリアンの名店「カノビアーノ」がある。

 さて、そのマンションだが名前を「光雲閣」という。音でいうと「こううんかく」。「幸運」と語呂合わせができるので、いわゆる出世マンションと言われていた。とても古いビルなんだが、ここに入居したいた人たちは成功するなんて、まあ迷信というか都市伝説のようなものですね。

 我々が借りていたのが408号室。エレベータを降りて廊下をくるりと裏に回る左手にドアがあった。部屋はそんなに広くなく、スタイリスト3人とぼく、そして数名のアシスタントたちでちょうど良い広さ。内装や装備品などは、ちょっと身入りのいい仕事で小金を稼いだ時期だったので、ポケットマネーからすこし奮発し、それなりの雰囲気のものを揃えた。後でうちに入ってきて、いまでは独立して立派になったスタイリストの本間良二が、初めて事務所に来た時すげえカッコいい事務所だななんて思いましたよ、なんて言っていた。

 当時もいまもそうだけど、一階は店舗のテナント。美容室やら服屋やら雑貨屋など。ぼくらがいた頃は店舗の出入はほとんどなかったけど、その後、いろいろ入れ替わりがあったようだ。みんな成功して巣立っていったんだろうな。

 そのビルの一階にとあることでちょっと知り合いになった女性が働いている事務所があった。テナントの裏側、廊下を隔てたところとでもいうのだろうか。記憶があまり確かでないのだけど、たぶんぼくらと同じ場所だと思うので108号室だったような気がする。

 その頃のぼくはまだ雑誌の編集の仕事をしていたので、確かその女性に頼んでプレスリリースをもらったり、ちょっとした仕事上でのお付き合いがあった。といってもそれくらいで後はばったり会うと挨拶を交わす程度。

 その後、ぼくらも忙しくなり彼女とその会社のことをすっかり忘れていたらいつの間にかその会社は、移転していた。ああやっぱり、幸運を掴んだのだなあ。

 ある日、ある後輩筋から誘われたフットサルのゲーム会場で、その会社の社長さんを紹介された。世の中はやはりそんなに広くない。共通の知り合いがどうやらいっぱいいたようだった。向こうはどうか知らないが、こちらからは何か一方的に縁を感じさせるそんな会社だなあという印象を持っている。

 その会社の快進撃というか、活躍ぶりはその後、いろんなところで耳にすることになる。社長のインタビューを新聞や雑誌で何度か読んだことがある。やっぱり幸運閣なんだよね。

  しかし今朝のニュースを見て耳を疑った。シネカノン、会社更生法申請へ。負債約47憶とある。え? 幸運閣出身なのに? 映画館への投資がうまく行かなかったのか。

 ぼくらがそこにいたのは4年くらいだったか。その後、スタイリストの岡尾と大橋という雑誌オリーブの一時代を気づきあげたいわゆるツートップに事務所を又貸しし、ぼくらは並木橋方面へ落ちる。

 成功したかって? 

 いまのところ良く分からない。良い時もあったし、悪い時もあった。いまは、どうだろう。良くもないし悪くも無い。こんな時代にそう言えるだけ恵まれているのかも知れない。

 栄枯盛衰。諸行無常。

 情熱を持った社長と良いスタッフ、良い作品というアーカイブがあるので、会社は間違いなく復活するでしょう。というかそれを期待しています。

 ぼくのオールタイム邦画ベスト1は「フラガール」です。またあんな素敵な映画をぼくらに見させてくださいね。



 

Comments: 2

業界は違いますが、僕らも独立して二年目。今年が、基、今年も勝負だと思っています。先輩たちの起業話はどんな話でもおもしろいです。ちょっと勇気をもらいました。

1985年 当時のボクは東京に住んでいて 好きだった青山や代官山をよく散策してました。行く度にワクワクしてたなあ。アノ頃の代官山。

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