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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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中国へ?

2010.07.15

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「中国に知り合いはいませんか?」

 朝イチの打合せで会ったデザイナー開口一番のセリフである。もう日本は人口が増えないので、雑誌などのデザインの仕事も中国でやったほうがいいかなと思って、と。おいおいそんなに大変なのかよと心の中でつぶやく。

 確かに人口は減るし、少子化で若者が減る方向にシフトしているのは分かるけど、この10年、20年でそんなドラスティックに時代は動くかなというのが正直なぼくの感想。しかしそれは甘い考えで、もしかするとデザイナー君の感じている危機感の方が正しいかも知れない。

 確かに最近の雑誌の元気の無さは異常かも知れない。中には好調をキープしている本もあるが、大多数は広告減、部数減でオロオロしている。最前線で仕事しているデザイナー君にとっては最大関心事である。先行き不安になるのも仕方がない。

 一方でそうしたデザイン会社から独立してSOHO的な個人事務所を開く若いデザイナーも最近多い。退職しました、事務所開きましたというメールが月に何本か届く。老婆心ながらこのご時世、仕事あるのかななんて取り越し苦労な心配をしてしまうが、それなりに勝算あっての独立なんだろうから大丈夫なんだろう。

 エディトリアルのデザイナーはある程度の修行期間が終わると、大体独立する。ほんと、面白いように独立する。政治に向いている人間は安定したいい仕事を取ってこれるのでそれなりにオフィスを拡大し、人員を増やせる。一方でコミュニケーションが得意でない職人肌のデザイナーたちは、ソロか少人数でバジェットの苦しい単発仕事に集中するしかない。仕事が減っているこういう時代、それなりの組織に属し安定した仕事をこなせる場所にいないと苦しいのではないかと想像する。雑誌はともかく、CDやADひとりのオフィスに売上に直結するような制作物の依頼をできる企業は少ない。企業側は常にリスクも判断している。ひとりのCDが事故にあったらどうするんだ?

 結局、バジェットの大きめな仕事はそれなりの規模のデザイン会社にしかいかないのでSOHOデザイナーの行先は暗いかも知れない。むしろ中国に目を向けるのはSOHO規模のデザイナーたちではないか。

 それならそういうSOHOデザイナーを集めてマネジメントして中国の需要をとっぱらって来る会社を作ればいいのではないかなんてアイデアも湧く。SOHOデザイナーと言っても大抵が有名デザイン事務所で仕事をしていたわけだから、腕はある。発展途上の中国の職人たちより腕は上だろう。

 でもそうなると独立したデザイナーたちはまた組織に絡め取られるか、それなりの搾取の憂き目にあう。それがイヤで独立したのに。

 冒頭のセリフを聞いただけで、瞬時にここまで考えた。ともかく大事なのは中国語である。20世紀の覇権はアメリカだったが、今世紀は間違いなく中国。近未来は軍事力でなく、経済が世界をリードする。世界共通語になる可能性はたぶんないけど、英語スピーカーが10憶くらいというから使用人口は最大の言語かも知れない。北京語話さない少数民族もいるし、広東語とか使う人も多いのでなんとも言えないが。

 だから中国語できればこれからの仕事にはかなり有利。デザイナーもこれからは中国語だ。それぞれの仕事用語に特化した中国語特練学校なんて作ると流行るかも知れない。

 少なくともこれから社会に出る若い人は、英語か中国語ができたらそれは有利だろう。家内制手工業的な仕事ならともかく、それなりの組織で働くには多言語化はマスト。

 ああ、なんだかイヤな時代になっちゃったな。ガラパゴスって意外に居心地良かったのに、これからケツに鞭打ってグローバル化しなきゃなんない。

 楽天とかユニクロの英語公用化というニュースからもある種の経済植民地化という負の側面からの見方もできる。あくまでポイントオブビューの問題なんだけど。

 

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