白のゲレンデ - 代官山通信（蔡 俊行）

　飲食店を数軒経営している友人が突然事務所に訪ねてきて、雑談など。従業員がお金をちょろまかして頭にくるとかそんな話。こういうのは昔も今もどんなジャンルの仕事でも多かれ少なかれある。

　しかし話を聞く限りいま飲食業は大変そうだ。

　ひとつのビッグヒットから次に中ヒットをかっ飛ばし、その勢いでドンっと勝負をかけたところそこがブレークしない。傍から見るとそれでも充分じゃないという感じなのだが、返済やその他を考慮するとまだまだだそうだ。そんな彼のところにも別の友人から店を閉めようかという相談のような連絡が少なくないという。

　少し前の事件で心中を計って内縁の妻と子供に手をかけ、信州あたりの山中で遺体で発見された飲食店オーナーの話があった。確か白のゲレンデワーゲンだった。ワイドショーで見た。

　偶然だがこの友人も白のゲレンデオーナーだ。

　しかし事件とは関係なく、そろそろ売ろうと考えていたらしい。ちなみに下取り価格を聞いたところ買った金額のおよそ4分の1。それで売る気が無くなったそう。でも話しているうちにやっぱり売ると言って帰っていった。

　それがいい。なんだかあのニュース映像がちらちらする。