“変わっていくこと”もエッセンシャル。
取材中、尾花さんが使っていたコーヒーカップは〈ケメックス(CHEMEX)〉のもの。こうした何気ない日用品選びにも、尾花さんらしいこだわりが自然に表れている。
ーなるほど。尾花さんといえば温泉・銭湯通としても知られていますが、バッグの中には入浴セットも常に入っているんですか?
Oka: 『UOMO』で湯巡り連載をやっていた頃は温度計まで持ち歩いていましたけど、最近はないかな(笑)。いまだと絶対にバッグに入れておくのがワークアウトアイテム。グローブとかトリガーボールとか。国内・外問わず出張の際にも必ず持っていくようにしています。
ートリガーボールとは、どんなモノですか?
Oka: 身体にゴリゴリ当てて凝り固まった筋肉をリリースするアイテムですね。ちなみに、〈バーサグリップ(versa gripps)〉のパワーグリップは引き上げるときに無駄な握力を使わず、狙いたい筋肉に集中できるというモノ。そのなかでも自分はXtreamシリーズが気に入っています。〈コブラグリップス〉のエリートグローブもウェイトを持ち上げるとき、手首を固定することでやはり無駄な力を使わず、上げることだけに集中できて。手のひらにタコができるのも防げるので、パワーグリップ同様に自分には必需品です。
気になるバッグの中身も拝見。出張先や旅行先にも忘れず持って行くのが、ワークアウトグッズたち。写真ではチラリとしか写っていないが、キャップや水着も含めワントーンで統一されているのは尾花さんのストイックな姿勢の表れか。黄色いインナーバッグは視認性が高いので、モノを取り出すときの判別にひと役買ってくれる。
ーシューズは〈ニューバランス(New Balance)〉なんですね。
Oka: 以前ウチでつくった〈ニューバランス〉とのコラボモデルです。いい意味でクッション性が低く、ソールの厚みが抑えられているから、素足感覚で調子がいい。まぁ、この辺は常に持ち歩いている感じですかね。
ー筋トレがライフワークだとは伺っていましたが、かなり本気でやってらっしゃるんですね。正直、バッグ自体よりもエッセンシャルな熱量を感じました(苦笑)
Oka: じゃあ、こっちに変えます?(笑)
ー〈エルメス〉でお願いします(笑)。出張先や旅行先でもジムに行かれるんですね。
Oka: ホテルを選ぶときにも、ちょっと贅沢だけどプールやトレーニングルームがあるようなところを選びますね。それだけでもホテル選びが面白くなってくる。
ー筋トレを始めたことでライフスタイルも変わったと。その変化はモノ選びだったり、自分自身に対する意識の部分に関しても同様でしょうか?
Oka: たしかにトレーニングをするようになってから変わったかもしれませんね。年齢を重ねるにつれ、肉体は劣化していくわけで。だから身だしなみも意識して整えるようにしています。プラスにしたいというより、マイナスが出るのってイヤだと思って。
ー今回紹介いただくバッグのように、昨今はクラッシュやフェードといった古着のダメージをプラス要素として捉える流れがありますよね。そこの感覚とも何となく繋がる気がします。要は“どう捉えて、そこに向き合うか”という部分で。
Oka: ファッションにおける年齢制限の話をよくしますが、自分は20代でブランドを立ち上げた頃から、「何かの事件に巻き込まれたの?」ってくらいボロボロの服を着ていたんですよ(笑)。ただ最近の若い世代はもっとすごい。先日もL.Aに行った際に立ち寄ったローズボウルのスワップミートで、当時のぼくのボロさを凌駕するような格好をしている若者たちがいて。擦り切れたり穴が空いているなんてレベルではなく、前身頃が縦に裂けちゃってるくらいの服を着ているんです。センスの有無でいえば疑問符が浮かぶけど(笑)、それも突き詰めたらファッションだし、若いが故に儚くて格好良く成立する。かといって、年相応がいいということではなく、ボロいものでも向き合い方と合わせ方で、いまの自分にフィットさせることもできるわけで。逆にいうと歳を重ねないとその発想もないし、年齢と服の関係はやはり面白いですよね。
ーここで改めて、尾花さんにとってのエッセンシャルの定義を教えてください。ちなみに、過去のインタビュー記事では、「偏ったものや歴史があるもの、人物やできごとに対する強い思い入れがタグされたもの。あとは、未来が感じられるまったく新しいもの。月並ですが、それが自分にとっての魅力的なプロダクトの条件です」と話されています。
Oka: 進化し続ける意識は常に持っています。自分にとってのベストに出会っても、そこにとどまることに、ものすごく不安を感じちゃうたちなので。プロダクトという視点でいえば“新しく出会う過去から存在しているモノ”がすごく刺激があっておもしろい。最近買った〈クロムハーツ(Chrome Hearts)〉のリングなんかもそうかもしれません。
ー尾花さんと〈クロムハーツ〉。何だか意外な取り合わせに感じます。
Oka: ですよね(笑)。でも、実際に触れたり、所有したりしてみないとわからない世界って絶対にあって。これまでは「それ、いっちゃうんだ…」的なモノにあえて手を出すこともありましたけど、そうやって生きてきた分、いまは王道といわれるモノに触れてみて自分が何を感じるか、何故ここまでメジャーになったのか、そこで得られる感覚が大事なんじゃないかなって。
ー変化を受け入れ、“あえて”から何を感じるか。ですね。
Oka: それによって人との会話や、新たなコミュニケーションも生まれますし。なので、ちょっとでも気になるなら、自分が避けてきたモノも手にしてみるといいと思います。自分の中でブレることなくひとつのモノゴトに執着することがひとつのエッセンシャルだとすれば、“変わっていくこと”も自分にとってのエッセンシャル。使えば使うほどボロボロになっていくアマゾニアという素材に惹かれるのも、そういうことなのかもしれません。
- 1
- 2