金運を上げるには財布を毎年買い換えるのがいいと巷間いわれている。いわゆるプラシーボ効果の一種だろうし、サステナブルな時代にはあまり褒められた行為ではない。賢明な読者には、むしろ1年や2年じゃ変えられないとびきりの財布をすすめたい。大枚叩いた財布なら間違ってもぞんざいにはしない、必然お金も大切に扱う、金運がよくなる、という寸法だ。というわけでHERMÈSの財布を三つ、紹介しよう。
「シチズン・ツイル」は童話『ガリバーの冒険』の著者、ジョナサン・スウィフトからその名を採ったカーフスキン、ヴォー・スウィフトをボディに採用している。微細なグレインが特徴で、角度によってはフラットに見える。〈エルメス〉自ら “大変にしなやかなレザー” と太鼓判を押すだけあってその手触りは別次元にある。プリントシルクで覆われたライニングと相まって、贅沢の極みである。
「MC2・コペルニクス」はジョッキーのジャケット、カザックをモチーフにしており、7つのレザーピースを縫い合わせているという。この労を惜しまないものづくりもまた、〈エルメス〉の魅力だ。スモールグレインのカーフスキンは手に吸いつく肌触りがある。
「ジップアンゴー」の見どころは “H” をかたどったファスナートップ。つまむのにほどよいサイズ感も手伝って、用もないのに開け閉めしたくなる。こちらもスモールグレインで覆われたカーフスキンを採用しており、卸したときからしなやかで、使い込めば上品な艶を帯びる。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa