セレクトショップの存在意義。
ーお三方のブランドを「ミッドウエスト」で取り扱うようになって、およそ4〜5年と伺っています。大澤さんは、展示会やイベントなどを通じて感じるこの3ブランドの強みってどういうところにあると思いますか?
大澤: ひとたらしなんですよね。
一同: (笑)
ーと、言いますと?
大澤: 服はもちろんそうなんですけど、デザイナー本人の魅力が強いのかなと思ってて。それぞれにちゃんとコミュニティが存在していて、イベントをやれば全身ブランドで固めたお客さまがいらっしゃるし、ファンといっしょに成長している感じが伝わってくる。何かお取り組みしたいと思うのは、服の良さは大前提で、みなさんのお人柄あってこそなのかなと思っています。
神谷: ぼくは純粋に、お客さんに楽しんでほしいってのがあるんですよね。お2人(後藤さん・岡本さん)もきっとそうだと思うんですけど。ビジネスとして狙っていかなきゃいけない部分ももちろんあるんですけど、それ以前にお客さんをワクワクさせたいというのが軸になっている。なので大澤さんが“ひとたらし”って言ったのはそういう部分なのかなって。狙ってどうこうじゃなくて、自然にそうなってるんですよね。
ーお互いのイベントや展示会に行くこともあるんですか?
神谷: 行きますね。
後藤: ダイリクくんは呼んでくれないですけど。
一同: (笑)
後藤: まあパリのショールームとかでは合同で出してたりするんで、そこでは見てますけど。
岡本: すみません。次は誘いますね(笑)
ーバイヤーとしての動き方はお店ごとによってさまざまだと思います。大澤さんは展示会で、「こういうアイテムをつくってほしい」ということをブランド側に伝えることはありますか?
大澤: たまに「こういうのがあると…」といったニュアンスのことを言うこともありますが、基本的には口を出しません。当たり前ですけど、ブランドさんはうちだけと取り引きしているわけではないですからね。「ミッドウエスト」で売れるものが他店ではあんまりなこともあれば、その逆も然り。あくまでその見極めがぼくの仕事であり、ブランドさんのMDに縛りを与えてしまうことは違うのかなと。
ーデザイナーのみなさんも、小売店に合わせてつくるわけではないですもんね。あくまでブランドの世界観、そしてシーズンテーマに紐づくものを展開していくというか。
後藤: うーん。ぼくは割と卸先さんありきみたいなところはありますよ。
後藤: とくに会話をしなくても、バイヤーさんのオーダーを見ていると感じることってあるじゃないですか。こういうのが刺さるんだなぁとか、前シーズンはこうだったけど今シーズンはこうなんだ、みたいな。〈エム エー エス ユー〉はお店を持っているわけではないから、やっぱり買っていただかないことには始まらないので。具体的にヒアリングする場合もあれば、察する場合もあります。つねに気にしてはいますね。
神谷: 「あ、〇〇さんが好きそうなのできた」とか思ったりしますよ。
後藤: たしかに、それもあるね。
神谷: ポップアップで自分が店頭に立つこともよくあるので、そのときの光景がデザインするときにふと浮かんだりするんですよ。あのお客さん、こういう視点だったなぁとか。
ー岡本さんも同じくですか?
岡本: そうですね。買ってくださるひとありきです。それはこんな時代だからこそ、かもしれません。
ーこんな時代…。つまり情報社会のことを指すと思うのですが、こんな時代におけるセレクトショップの役割とはなんなのでしょうか? SNSやオンラインストア、そして直営店があれば、セレクトショップは不必要という意見もあると思うのですが。
後藤: こんな情報社会だからこそ必要、な気がしますね。要は整い過ぎててハプニングが起きづらい世の中なんです。SNSで発表されたコレクション、そしてオンラインで売られているアイテムがそれ通りに陳列されている店内では、ブランドの世界観をストレートに伝えることはできても、どうしてもお客さんにとって想定外のハプニングが起きないんです。一方でセレクトショップは、〈エム エー エス ユー〉のアイテムを目的に訪れたとしても、自然と他のブランドのアイテムも目に入りますよね。想定外のハプニングを起こすことで、お客さんの世界を広げる。そういう役目を持っていると思うんです。
あとこれは個人的な意見かもしれないですけど、コレクションブランドって“かっこつけないといけない”みたいな風潮があると思ってて。ブランドのことを語りたいけど、カジュアルに語っちゃうと安く、軽く見えてしまうのではないか、みたいな。そういう意味では、セレクトショップはぼくらのことを理解してくれて、お客さんにいろんなことを伝えてくれる。ある意味ブランドの代弁者的な存在だと思っているんです。だから結論、どちらも必要。直営店もセレクトショップも、共犯関係になれていたら理想的だとぼくは思っています。
ー神谷さんは中目黒に〈カミヤ〉の直営店「THE PHARCYDE」をお持ちですよね。
神谷: はい。そこでは〈カミヤ〉の世界観を構築していて、いわばひとつ家があるような状態です。なので、セレクトショップで〈カミヤ〉のことを知ってくれたひとが、じゃあ次は直営の方に行ってみようかなってときに、招き入れる場所があるのはすごく利点かなと思いますね。
神谷: それからセレクトショップって、セレクトショップそのものにファンがつくんですよ。とくに地方にポップアップで行ったときに強く感じるんですけど、地域のコミュニティからショップそのものが愛されていたり、オーナーが愛されていたりするんです。例えばオーナー行きつけの飲食店の常連さんがポップアップに来てくださったりとか。そうすると、いい意味で思いもよらぬ出会いがあったりするんです。そういう広がり方って素敵だなと思うし、セレクトショップならではって感じはしますね。
ー岡本さんはいかがですか?
岡本: コミュニティの存在の大きさっていうのはすごく実感しますね。自分も地方にお邪魔することがよくあるんですけど、ネットにはない繋がりがそこにはあって、人間本来のコミュニティみたいなのを再確認できるんです。そこで新たにできる繋がりがあってこそ、いまのブランドがあるとも思っています。
直営店については神谷と同意見で、家のような自由に表現できる場として自分も将来的には持ちたいなと思っています。ぼくは映画が好きなので、映画館とまではいかないですけど、例えばDVDがレンタルできるショップにできたらいいなとか、自分のブランドならではの表現というのを直営店で示せたらいいなと思っています。セレクトショップと直営店、持ちつ持たれつ、いい意味で“共犯関係”でやっていけたら素敵ですよね。
ーそんなデザイナー3名の話を聞いて、大澤さんはいかがですか?
大澤: 身が引き締まる思いです。お客様に喜んでもらうこと、ブランドさんがビジネスとしてきちんと事業を行えること、そしてぼくらが楽しく仕事をすること。その三方が等しくいい形というのがぼくたちの理想です。そのどれも欠けてはいけないなとあらためて思いました。
ーお客様に喜んでもらうため、という視点でいうと、デザイナーズブランドよりも手の届きやすい“セレクトショップオリジナル”を販売することも方法のひとつかなと思うのですが、それについての考えを聞かせていただけますか?
大澤: ぼくたちは“セレクト”ショップなので。それがすべてです。ブランドさんとあくまで対等な関係であるべきだし、ぼくたちだけが旨い汁を吸うことに抵抗があるんです。ビジネスとして継続していくために売り上げは重要ですけど、目先の売り上げばかりにとらわれず、未来のブランド・デザイナーさん、未来の顧客さん、そういうところにつねに焦点を合わせていたいですね。
後藤: セレオリって敬遠されがちですけど、完全に“悪”ってわけでもないと思うんですよね。補うために必要だったりもするんで。
ー補うため、とは?
神谷: セレクトショップの良さ・視点がミックスされて提案されますからね。ぼくらがお客さんに提案しきれない部分をフォローしてくれるというか。
岡本: 熱量にもよりますよね。
後藤: そうなんだよね。ぼくらデザイナーからすると、同じレベルのもの、同じクオリティのものを、同じ熱量で店舗で売ってくれるのであればいいと思うんです。
神谷: うん、なので一概には言えないですね。そういうお店もあれば、そうじゃないお店もあるだろうし。
岡本: セレクトショップという枠を超えて独立しているなら、それはありなのかなとも。例えばショーをやるとか、ルック撮影に手間暇をかけるとか、アイテムに芯や軸が見えるものならば、それはショップオリジナルブランドとして成立してると思います。
大澤: そういう意味では、中途半端になってしまうくらいなら、ぼくたちはやらないという結論ですね。小売とはなにか、ぼくらが目指すもの、世の中に届けたいものが何なのか、セレクトショップとしてそれはつねに考えて動いていきたいです。
ー最後に「ミッドウエスト」の今後について、聞かせていただけますか?
大澤: ファッションのなかでもデザイナーズ・コレクションブランドというのはすごくニッチな世界です。どこまでブランドさんの為を思って動けるか、どれだけお客様の喜びを創造できるか、そこには駆け出しのブランドもベテランのブランドも関係ないのかなと思っています。
大澤: 直営店の有無も、海外でショーをやることも、ぼくらはブランドさんが階段を順調に駆け上がっていけるよう可能な限りサポートをするだけ。この先10年、20年、30年、ショップが続く限りその姿勢は崩さずに日々前進していけたらと思います。
- 1
- 2