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内田 斉 -
今野 智弘 -
栗原 道彦 -
阿部 孝史
PROFILE
「ジャンティーク」「内田商店」を展開し、国内古着カルチャーの骨子を築いた大ベテラン。トレンドや定番に囚われず、かつて身を置いた「サンタモニカ」時代からの経験に裏打ちされた独自の審美眼を発揮。時代がまだ見落としている価値をすくい上げ、新たな視点を提示する。
Instagram:@uchidahitoshi
PROFILE
〈ネクサスセブン〉主宰。近年も多種多様なブランド別注や、独自のギミックと高い実用性を両立したマテリアル&プロダクト設計など、多角的な活動を展開。デザイナーならではの構造的な視点と、長年培った偏愛的なヴィンテージクロージングへの深い造詣を持つ。
Instagram:@nexus7konno
PROFILE
奥渋谷のショップ「ミスタークリーン」のオーナーであり、日本屈指のヴィンテージバイヤー。国内外の最新のマーケット動向を冷静に見極め、アイテムに宿る歴史的ストーリーやカルチャーの背景を精緻に紐解く。単なるディグに留まらない知的なハントスタイルを徹底し、古着の真の魅力を現代へと伝える。
Instagram:@michihikokurihara
PROFILE
大手アパレル「ベイクルーズ」にてECのコンテンツ制作などを担当。長年本連載を支える羅針盤であり、溢れる古着愛を等身大の言葉で語る。流行の価格高騰に左右されない「本当にいま着たいもの」を信条に、指名買いのヴィンテージから現行品までを縦横無尽に楽しむスタンスが共感を呼ぶ。
Instagram:@abeabc1976
第一講 今野智弘
「リペアするにも限界があるなと、裁ちばさみを使って袖を根元から切り落とした」。
Late ’70s〜Early ’80s Varsity Vest(Custom Made)
今野:ひとつめはカスタムベストです。もともとは70年代から80年代初頭頃のスタジャン(ヴァーシティジャケット)だったんですよ。よく古着であるじゃないですか、ウールの身頃はまだ生きているのに、レザーの袖だけがバキバキに硬化して銀面が剥離しちゃってるやつ。
内田:あるね。表面がスウェードみたいになっちゃってるやつ。
今野:はい。これも白いレザー袖が付いていたんですけど、肘から下がボロボロで裏地が露出するレベルまで劣化していて。2018年か19年のコロナ前くらいに手に入れたものの、リペアするにも限界があるなと思い、自分で裁ちハサミを使って袖を根元から切り落としたんですね。
栗原:この生地感だけ見ても、たぶん普通の洗濯機で洗われていたんじゃないかと。だから余計に革のダメージが進行していたんでしょうね。
阿部:普通にハサミで切ったの?
今野:はい。スタジャンって、独特のパターンで袖が付けられているから、ただ切っただけだと肩口が横にボコッと浮いちゃうんですよね。まさにヤッコさんのパターンというか。だから袖を切った後、直しに出して肩傾斜だけを少し落とすように、綺麗にライン修正してもらいました。
内田:スタジャンをベストにリメイクするっていう発想は自分にはなかったな。ぼくらがピックする時って、袖の革がダメな時点でどうしてもスルーしがちだし。ただ、スタジャンってなぜか小さな個体ばかり出てくるのに、これはサイズもしっかりあるね。
今野:そうですね。これは、おそらく44相当で身幅がゆったりしているから、いろんなレイヤードに使えて。
阿部:タグもないし、〈マックトラック〉(1900年に創立されたマックブラザース社を前身とするアメリカのトラックメーカー。現在もボルボ傘下としてブランド自体は継続中)の販促だったのかな?
栗原:その可能性もありますし、もしかするとユニフォームとしてスタッフに支給されていたものだったのかもしれませんね。ただ、今野くんや内田さんも言うように、スタジャンって、ヴィンテージ好きにとってはクリーニング問題が常に付きまといますよね。いまやレザーコンビをクリーニングに出すと1万円くらいかかっちゃう上に、革が縮んだり傷んだりするリスクもある。だから、袖を落として自分で洗えるようにしちゃうのは実用的かもしれないですね。とはいえ、それもまた、それなりのコストがかかりそうですけど(笑)
内田:そもそもスタジャンに使われているレザー自体のクオリティが低いんですよ。だから(前オーナーも)わざわざクリーニングに出すような代物でもないと、割り切っていたんじゃないかな。もちろん、ボタスタ時代(1940年代頃まで主流だった前開きがスナップではなくノーマルボタンタイプのもの)は、良い革を使っている個体もあるんだけど。
今野:確かに、古いボタスタだと、ディアスキン(鹿革)が使われていたり、意外と水に強くて持ちが良かったりしますよね。ただ、これがさらに60年代後半から70年代以降になると、“ナウガハイド”と呼ばれる合成皮革(ビニールレザー)も出てきて、経年劣化でベタベタになっちゃう。じつはナウガハイドのベタつきが出たスタジャンも、過去に一着同じように袖を切り落としました(笑)
内田:(バイイングなら)もうベタベタな時点で間髪入れず弾いているでしょ?
栗原:まあ、そうですよね。
フイナム:ナウガモンスターのアレですよね?
栗原:そうですね。〈ユニロイヤル〉(旧ユナイテッド ステイト ラバー カンパニー)という企業が開発して1960年代にポピュラーになったビニールレザーのことですね。
今野:古着屋でもたまに見かける「ナウガモンスター」ってぬいぐるみがあるじゃないですか? あれは、当時このナウガハイドの販促物としてセールスマンが持たされたもので。モンスターのぬいぐるみにケチャップやマスタードをわざとぶっかけて、「サッと拭くだけでこんなに綺麗になります」って実演販売していたみたいです。
栗原:衣類以外には車のシートやダイナーのソファ等に多く使われていた、当時としては画期的な代替皮革だったんじゃないかと。
今野:もしかすると、動物愛護的な理念があったのかもしれないですね。そのための“モンスター”というか。
阿部:確かに。ないとは言い切れないね。
今野:ちなみにこのマックトラック、じつは来期に〈ネクサスセブン〉でコラボ企画が進行中です。
阿部:ブランド自体は現存しているんだよね?
今野:はい。アパレル商材などは、すでにライセンスとして他社が管理していたんですが、今回はもともとMackやブルドック系の古着を集めていたことから企画がスタートすることになりました。
「この手のDIYリメイクには結構昔から注目していた」。
’50s〜’60s WINCHESTER Remake Vest
今野:2つめもベスト繋がり。アメリカのDIY文化が色濃く出た一点物です。ベースになっているのは〈ウィンチェスター アミュニション〉という有名な弾薬ブランド(1892年に創業した大手オーリン社の傘下ブランド)の、ショットシェル(散丸銃の薬莢)の回収用キャンバス袋。使い終わった薬莢を放り込むための頑丈な袋を、当時のハンターかシューティング好きが解体して、ベストにセルフリメイクしたんだと思います。50~60年代あたりの雰囲気ですね。
内田:こういうのはぼくも大好物。裏もちゃんとパッチが残っていて、いい具合に使い込んでいるね。同じ生地を贅沢に組み合わせて、パイピングまで綺麗に打ってある。かたちも面白いし、これは完全に好きな人が作っているよ。アメリカには小麦粉や飼料用の袋をパッチワークして衣類に仕立て直す“フィードサック”の文化が古くからあるけど、そのハンティング版というか、一点物ならではの凄みがあるよね。海外でもこの手のワンオフ(一点物)ってめちゃくちゃ評価高いじゃないですか。被りのシャツなんかもたまに出てくるけど、やっぱり独特のオーラがあるよね。
今野:そうなんですよね。同じ〈ウィンチェスター〉でも、プリントの配置や個体差によって全く表情が違う。ぼくもこの手のDIYリメイクには結構昔から注目していて、しばらくeBay辺りで〈ウィンチェスター〉の袋だけをコツコツ買い集めていた時期があったんですけど、何せ数が集まらない。そうこうしているうちに、海外での評価もどんどん上がって、最近は袋自体が高騰しちゃいました。
阿部:もはや袋ですら集まらなくなってるんだ。古着とはまた違うファン、コレクター層があるんだろうね。
栗原:このブランド、雑貨だと20~30年代くらいのカレンダーをよく見かけますね。ハンターと猟犬とかのイラストが描いてあって。
阿部:そうなんだね。じゃあ、ブランドロゴの書体とかでも年代判別ができるのかも。でも、こういうDIY系もまた、アメリカ古着の面白みではあるよね。〈フロストライン〉とかもそうだし(1966年コロラド州デンバーで創業されたアウトドアブランド)。
今野:ありましたね。単に完成品を販売するのだけでなく、生地やパターンがキットになっていて、説明書に倣ってユーザー自身が作るダウンやシェルパーカがあって。たまにまだ作られていないサラのキットが出てくることがあるんですね。
内田:作り手の個性がモロに出るね。
今野:ぼくは以前、デニムのパッチワークで作られたダウンジャケットを購入したことがありました。
阿部:ぼくもヨークだけドット柄の個体を見たことがあって。あれも、おそらくセルフビルドなんだろうね。
フイナム:〈ホルバー〉(1946年コロラド州で創業されたアウトドアブランド)でも同年代にキット販売があったような?
栗原:ありますね。あれも70sがメインですね。
今野:確かに。なるべく文明に頼らないDIYの精神性というか、当時のヒッピーカルチャーからの影響があったのかもしれないですね。
「いろいろ調べた結果、テストサンプルということが判明」。
’80s U .S .ARMY ECWCS GORE−TEX PARKA TEST SAMPLE(MADE BY MARMOT)
今野:そして今回、ぼくがいちばん気合を入れて掘り下げたかったのが、こちらのミリタリーパーカです。古着好きなら誰もが知っている「ECWCS(拡張式寒冷地被服システム)」のGORE-TEX®パーカなんですが。
内田:でも、この個体は色も薄めだし、明らかに普通のGORE-TEX®パーカとは違いますね。民生品ってワケではないの?
今野:はい。じつは15年ほど前、栗原くんから譲ってもらったものなのですが、いろいろ調べた結果、テストサンプルということが判明したんですね。ミリタリー、アウトドア好きの間で「原型となったのは〈マーモット〉のオールウェザーパーカだったんじゃないか」と、かねてから言われてはいたのですが、ぼくが先に手に入れたのは、この〈レイヴン〉というタグが付いたものだったんですね。
内田:栗原くんは知っていたの?
栗原:いえ。実は当時2着手に入れたうちのひとつを今野くんに買ってもらって、もう1着はまだ自分でも持っているんですが、その時は詳しいことはわからなくて。
今野:そもそもの歴史を遡ると、1976年に世界で初めてGORE-TEX®をアウターに採用したといわれているブランドのひとつが、アウトドアブランドの〈マーモット〉でした。その後の1978年にGORE-TEX®社と米軍のナティック研究所が接触して、軍用パーカの開発が始まるのですが、その時点では採用まで至らなかった。その後、1983年に本格的にECWCSの開発予算が3年分下りたタイミングで、〈マーモット〉へ再度が試作を依頼したのですが、同社単独だと軍の求める膨大な物量を量産するだけの工場規模がなかった。そこで、1985年から量産テスト分の生産を引き継いだのが、こちらの真ん中にある〈レイヴン〉だったと。
阿部:そうなんだね。じゃあ、〈マーモット〉製もあるってこと?
今野:はい。それがこの個体で(冒頭の物撮りの個体)。
内田:ライニングがリップストップなんだね。
今野:そうなんです。じつはこの個体、サンフランシスコで美術学校の教員をやっているトムさんという方から譲っていただいたもので。以前からぼくがGORE-TEX®パーカを集めていることを覚えてくれていて、「ちょっと変わったモノが出てきたから」と、画像を送ってくれたのが、この〈マーモット〉社製でした。
阿部:すごい話だね。じゃあ、やっぱりオールウェザーパーカが原型だったんだね。
今野:手に入れてからいろいろ調べたところ、ニックさんという兵士に支給されていて、その方はGORE-TEX®社と当時から蜜月関係にあったようです。
栗原:ぼくも今年、アリゾナのディーラーから〈レイヴン〉の個体を1着買い付けたのですが、それも出処は退役軍人でしたし、プロトタイプの時点で実際に兵士に支給されていたのは間違いないですね。
今野:この〈レイヴン〉社製のテストサンプルもとにかく面白くて。ディテールが製品版と全く違う。まず、最大の特徴は、前立てのボタンがむき出しになっていること。そして、採用品はアームのポケットが左側に付くんですけど、こちらは右側に付いている。利き手の関係なのか、試行錯誤の跡が見えますよね。さらに、デッドストックの未使用品を見ると、通常のミルスペックタグではなく、横長の簡易的なタグが付いていて、部隊のユニット名を書き込む欄が未記載のまま残っています。
内田:緑色のトーンが明るめなのも何か意味があるのかな?
今野:一説には、南極や極地での着用試験のために視認性を高める目的でこの明るいグリーンが採用されたという証言が、当時の退役軍人のネット上の記録に残っていました。1984年にマリーンズやネイビーシールズ、アーミーで実際に試作品の着用試験が行われた記録があるんですが、おそらくその時のものだと思います。これが製品版(ファーストの初期型)になると、前立ても短くなりボタンはフラップで隠され、ポケットは左側に固定され、色のトーンも落ち着いたウッドランドになります。そして90年代に入ると、フードにファーを取り付けるためのスナップボタンが追加されますよね。
栗原:以前にこれをネットで調べていた際、フリマアプリ等で民生品として安く販売されていたものを何枚か見たことがあったので、未だ知らない人はかなり多いんじゃないかと思います。
阿部:これは大発見だね。ストーリーとしても、資料としての価値も高すぎる。
今野:こういう、あまり知られていない歴史のパズルが、やっぱり古着の醍醐味ですよね。ぼくもナティック研究所の公開アーカイブをChatGptも駆使しながら必死に調べたんですけど、一次文献の発注記録までは辿り着けなくて、まだ軍人の証言ベースの部分もある。これからもっと知識を体系化していきたいジャンルのひとつです。
第二講 内田斉
「どうにかカジュアルなファッションとして提案できないか長年試行錯誤している」。
’60s〜70s PENDLETON & TOWN CRAFT FLANNEL GOWN
内田:ぼくのひとつめは、秋冬の立ち上がりというタイミングで、お店(ジャンティーク)でも毎年提案し続けている、60~70年代中心のフランネルガウンを持ってきました。ウール素材の〈ペンドルトン〉製と、コットン素材の〈タウンクラフト〉製の2種類です。
今野:めちゃくちゃ良い感じのチェックですね。ガウンってネルシャツよりも生地の面積が多い分、羽織った時の存在感が抜群ですよね。
内田:もともとはパジャマの上に羽織るナイトウェアやスモーキングジャケットがルーツなんだけど、「サンタモニカ」時代から、これをどうにかカジュアルなファッションとして提案できないかっていうのは、ぼくに限らず先輩方も試行錯誤していましたね。
阿部:この辺りが一般的に認知されたのは、内田さんの功績が大きいと思うんだけど。
今野:そうですね。くわえて、特に若い世代には、カート・コバーンの影響も大きかったと思います。2000年頃にガウンやパジャマが再評価されましたよね。
栗原:この〈ペンドルトン〉の個体は、現行シャツ類の価格から考えても当時はかなり高価だったはずですよね。いまや新品のボードシャツも4万円近くしますからね。
今野:古着からの流れから、最近は新品でも〈ペンドルトン〉がとんでもない人気になってますよね。今シーズン、〈セトルマイヤーズ〉っていう老舗ファクトリーとスタジャンを作ったんですけど、その身頃に使うメルトンウールを〈ペンドルトン〉社製で指定したんです。そうしたら納期が大幅に遅れてしまって。理由を聞いたら、世界的に〈ペンドルトン〉が再燃していて、新品市場からの発注量が爆発的に増えたせいで、うちのような小ロットの注文が後ろに押し出されちゃったらしいんです。
内田:えっ、そうなんだね。まあ、これだけ贅沢にウールを使っているし、当時もそれなりに高価だったとは思うけど、さすがにシャツに4万円は気軽に手が出せないね…。
阿部:ネル素材の無地ってあまり出てこないですか?
内田:全くないワケではないけど、襟や袖口にパイピング、胸に刺繍が入ってくるのが一般的だから、カジュアルというより、クラシックなイメージになっちゃうかも。
阿部:そうなんですね。年代による見た目の違いなどをあるんですか?
内田:特にはないと思います。とはいえ、40sくらいまで古くなるとスモーキングジャケットの流れが色濃くなるし、ことカジュアルユースとしての提案とあると、やっぱり60~70年代がメインになってくる。この〈タウンクラフト〉製は、80年代にかかってきているけど、比較的丈が長めの個体を選べば、スプリングコート代わりにざっくり羽織れるから、女性や小柄な男の子がオーバーサイズで着てもすごく雰囲気が出るんだよね。
栗原:ただ柄、状態の良いものはなかなか出てこないですよね。
内田:そうね。もちろん需要はネルシャツの方が断然高いんだけど、なかなかまとまった数を一気に見られないアイテムではあるよね。
「この変わった生地を昔から何と呼んだらいいのかわからなくて」。
’50s〜’70s WARM-UP JACKET
内田:2つめは、素材がちょっと気になっていたので皆さんの意見を聞きたいなと。モノ自体は、50年代後半から70年代初頭にかけて作られていた、スポーツ用のウォーミングアップジャケット。特にバスケット系が多いと思うんだけど、このちょっと変わった生地を昔から何と呼んでいいのかわからなくて。
栗原:いわゆるフリースの一種ですかね。
内田:そう、フリースのハシリではあるよね。
今野:表面を見るとループ状になっているので組織的にはパイルなんですかね。
内田:パイルなんだ。この素材が気になっていて長年探しているんだけど、あまり出てこない。チームロゴやタグから推測するに、そんなに古いものではないんだけど。おそらく60~70年代頃が最盛期だったのかなと。
阿部:このグリーンとホワイトの2トーンの個体は50(年代)ぽさもありますね。
内田:そうそう。とはいえ、それぞれ微差もあって。一部は〈コディアック〉(名門〈キャンパス〉が50~60年代にかけて展開していたサブレーベル。ヒョウ柄やカウ柄などアニマルパターンを纏った毛足感のあるフェイクファーで知られる)のような質感もあるし、もしかすると50年代頃からあったのかも。
今野:3つともコットンとアクリルの混紡素材ですね。いまこれを再現しようとすると、この独特の番手と編み仕様から見て、かなり贅沢な価格になりそうです。
栗原:半袖のウォーミングアップジャケットって、用途が絶妙に謎ですよね(笑)。着てみると結構肉厚で暖かいのに半袖っていう。
内田:そう、競技としては野球やバスケットのベンチウォーマー用だったと言われているんだけど、とにかく着る時期を選ぶから、80年代以降の機能素材の台頭とともに市場から完全に姿を消してしまったジャンルだと推測していて。
栗原:チアリーディング系もありそうですね。
内田:あるある。でも、チア系はなぜか胸元と背面にスナップボタンが付いていて、何かを着脱できるようになっているものが大半で。
栗原:背番号とかなんですかね?
今野:これ、どうやってスタイリングするんですか?
内田:あえてデニムじゃなくて、綺麗なスラックスに合わせるのが大人っぽくて可愛いと思う。初夏から秋口の立ち上がりにかけて、インナーに白シャツなんかを仕込んで着る。この完成されていない、洋服としての歪なバランスがヴィンテージならではで愛おしいよね。車のドアを触る時の静電気だけはちょっと怖いけど(笑)
今野:ぼくはあの静電気、結構好きなんですよ。ちょっと距離があると光ったりするじゃないですか。あれが厨二病的なカッコよさがあるというか(笑)
一同:(笑)
「定番や王道の躍進の中で埋もれていったマイナーブランドの魅力を、今一度評価したい」。
’40s〜’50s BALL BAND & SKIPS CANVAS SNEAKER
内田:3つめは、〈コンバース〉のチャックテイラーが王道として君臨している中、かつて先輩バイヤーたちから教わって以来、一生懸命集め続けているのが、この〈ボールバンド〉(インディア州北部のミシャワカを拠点としたミシャワカラバー&ウール マニュファクチャリング社が展開したシューズブランド)をはじめとする、40~50年代のマイナーブランド製ブラウンスニーカーです。当時はこのサイドテープの形状から、“わらじ”なんて呼ばれ方もしていたディテールが特徴的ですね。
栗原:この時代のキャンバススニーカー、経年劣化が少なくて普通に履けるコンディションのものを見つけるのはなかなか難しいですよね。
内田:そうなんですよ。まずゴムがしっかり生きているかが大切。しかもブラウンが個人的な狙いどころなんですが、市場に出回る大半は黒や白、あるいはネイビー。とはいえ、ぼくのサイズ(大きめ)だと一応、年2足ずつくらいは見つかるので、状態が良ければ買い足している感じかな。
栗原:この辺りのスニーカーは東海岸で多く出てくる印象ですね。
内田:確かにそうかも。
栗原:僕が回る西側に限るともう何年も見ていないですね。それに、ブラウンのスニーカーってファッション解釈が浸透する60年代以降はほとんど市場で見かけないじゃないですか?
阿部:当時はなぜブラウンがあったんだろうね? 革靴に寄せているのかな?
栗原:元々スニーカーは古ければ古いほど革靴に近いデザインになるので、カラーリングも革靴に倣っていたのかもしれませんね。
阿部:内田さんはコレクションではなく、実際に履いているんですよね?
内田:うん。ぼくはこれをテーパードの効いたパンツに合わせて、あえてドレスシューズっぽく履くのが好きで。定番の〈コンバース〉より、ぼくにはこういうマイナーブランドの方が魅力的に映るんだよね。もちろん〈リーバイス〉も王道として大好きだけど、ぼくは「サンタモニカ」に入ってから〈リー〉の魅力に取り憑かれた人間だから。
阿部:〈リー〉のパンツと合わせるんですね?
内田:〈リー〉のウエスターナーとか101Bって、〈リーバイス〉と比べて裾幅が少し広く、エンジニアブーツや〈レッドウィング〉の筒の太さとも抜群に相性が良い。とはいえ、その裾幅のバランスのまま、スニーカーを合わせると絶妙なクッションが生まれるから、ウエスターナーならウイメンズのビッグサイズに合わせることが多いかな。
今野:内田さんはどれも絶対ご自身で愛用されますよね。収集ではないというか。
内田:そうですね。自分が愛用することでモノ自体の良さがわかるし、定番や王道の躍進の中で埋もれていったマイナーブランドの魅力を、今一度改めて再評価したいなと思い持ってきました。
第三講 栗原道彦
「これを着て渋谷や下北沢を歩いていると、二度見されて爆笑されたり、話しかけられたりしますよ(笑)」。
Late ’90s〜Early ’00s JOKE T-SHIRT
栗原:ひとつめは、古着サミットでも過去に何度かプリントTシャツを紹介したと思うのですが、もうこのカテゴリー自体が世界中で高騰して、普段着として着づらくなってしまったので、ここ5~6年の間、ぼくが密かに集めていたジャンルを持ってきました。
阿部:エロ系?
栗原:はい。まあ、正しくは“ゲス系”ですかね(笑)。元ネタの多くは1930年代から70年代にかけてアメリカの小学校で広く使われていた『Dick and Jane(ディック&ジェイン)』っていう、かなりポピュラーな幼児向け教科書の挿絵みたいで。
内田:年代的にはそれほど古いものではないよね?
栗原:そうですね。ボディから察するに、おそらく90年代終わりから2000年代初頭頃のものだと思います。5、6年くらい前に何枚か見つけて店で売ったことがあったのですが、その後にまた色々と違うパターンが出てきたので、気にして集めるようになって。
阿部:会話がゲスなの?
栗原:もとの絵自体は真面目なものなんですけど、フキダシを大人向けの卑猥なジョークに改変して量産した二次創作、ミームみたいなものなんでしょうね。女の子が「Puppy Love(初恋)」って純真な目で言っているのに、男の子が後ろで「Doggy Style(バックでやりたい)」って考えている(笑)。最悪なギャップですね。
今野:どこで売っていたんだろう(笑)
内田:土産屋とかスモークショップとかなのかな。
栗原:内容と同様に、民度の低い人間が当時ガシガシ着ていたからなのか、なぜかボロくて汚い個体しか出てこないのも特徴で(笑)
一同:(笑)
阿部:実際に着てるの?
栗原:程度が良いものは自分でも着てますが、向こう(アメリカ)の若いバイヤーの間ではぼちぼち認知されているようで、最近だと値段を聞いたら100ドルとか言われることもありますね。一方、日本ではTシャツにプリントされた英語の意味まで気にする人があまりいないからか、まだあまり知られていないかもしれません。ただ、最近は日本にも外国人観光客がもの凄く増えたじゃないですか。これを着て渋谷や下北沢を歩いていると、二度見されて爆笑されたり、話しかけられたりしますよ(笑)
阿部:(笑)。内田さんはあまりプリントTシャツのイメージがないんですが、その一方でコカ・コーラ関連は熱心に集められているじゃないですか? コーラ関連なら着たりするんですか?
内田:着ないかな。ファッションを最初に意識して手に入れたのもフットボールTだったし、スポーツ系は着ることもあるけど、基本的にプリントTってほとんど着ないかも。
「完全廃業したコスチューム業者が所有する全アイテムまとめて放出したもの」。
Costume Rental Corporation
栗原:2つめは、「CRC(Costume Rental Corporation)」という、ロサンゼルスにあったハリウッド映画やテレビドラマ向けの巨大な衣装レンタル会社が、昨年閉業した際にオークション等で放出した撮影用衣装たちです。
内田:へえ。どれもCRCって手書きで書いてるけど、知らなければただの落書きだと思うよね。結構な数が出たの?
栗原:そうですね。おそらく数万点は。
阿部:同業他社の古着もたまに市場にでてくるよね。
栗原:Western Costume(ウエスタンコスチューム)社(1912年創業の老舗レンタルコスチューム業者)が有名ですね。ウエスタンコスチュームの方は何年かに一度、古いものや使わなくなったものを放出しているみたいんですが、このCRCは完全廃業だったため、所有する全アイテムがまとめて市場に出てきたんですよ。
内田:じゃあ、ロスの方では結構出回っているんだ?
栗原:そうですね。向こうのディーラーやコレクターの間でもちょっとした話題になっていて。
今野:このプリズンパンツ、よく見るとうっすら当時の囚人番号を消したような痕跡があるけど、これは新たに設えたものではなく、実物をそのまま衣装として流用していたものなんだろうね。
栗原:はい。CRC含めハリウッド系コスチュームの面白いところは、本物のヴィンテージピースをそのまま衣装として使うパターン、ワークウェアにプリントを入れて囚人服にしたり、年代の違うミリタリー物のディテールを変えて古く見せたりして古着をカスタムして使用したパターン、現行の既製品を後から加工したパターン、そして撮影用にゼロからレプリカを新規製作するパターンの4つが混在しているところで。
阿部:それならクリくんのところに限らず、西海岸買付メインの古着屋からも出てきそうだね。
栗原:この一見USエアフォースのメカニックパンツはかなり謎なアイテムで、先日CRCのものを調べていた時に福岡のお店で売っていたのを見つけて通販させてもらったものなんです。軍納入品とは微妙にディテールが異なる民生品なんですが、これは近年ではなく60年代頃に作られたものだと思います。ウエスト内側に「David’s Outfitters」というニューヨークのユニフォームショップのタグが付いているんですが、CRCからの放出品の中には軍納入品なのに同じタグが付いているものも交じっていたので、もしかするとこのタグ自体がCRCによって後から付けられたものなのかもしれません。
内田:確かにこのエアフォースパンツの民生品って見たことないかも。
栗原:はい。過去には映画『ジュラシックワールド』で使われた〈カーハート〉のジャケットを見つけて販売したこともあるんですが、それはブランドタグを取って、ボタンのロゴを削って古そうに見せる加工がされていましたね。そのジャケットの他に〈ヘインズ〉の無地Tシャツも5枚くらいあったんですが、撮影中に何かアクシデントがあっても着替えて次のシーンと繋げられるよう、全て同じところに汚れ、ダメージの加工がしてありましたね。
今野:そういうバックグラウンドや歴史的ストーリーを紐解いていくのも、放出品の醍醐味だね。とはいえ、このクリくんの話を聞いてなければ、ただ落書きされた古着に見えちゃうだろうけど。
「もしかするとアポロ8号の乗組員のために数枚だけ刷られたものなんじゃないかと」。
’68 NASA SNOOPY SWEAT SHIRT
栗原:3つめは、アメリカで見つけたNASAのアポロ8号ミッションに紐づく、1968年製のフロッキープリントスウェットです。フロントにはスヌーピーのイラストとともに、アポロ8号の司令船の機体番号である「SC103」、そして「CREW」の文字がプリントされていて。初めは単純にちょっと変わったスヌーピースウェットだと思っていたんですが、よくよく調べたらいろいろ見えてきて。
内田:というと?
栗原:アポロ8号の乗組員は3人しかいないんですが、管制官や地上のスタッフ等、NASAのスタッフをクルーと呼ぶのは違和感があるし、これはもしかすると乗組員3人だけの為に刷られたうちの1枚なんじゃないかと思いはじめて。しかも、出処がNASAのお膝元、ジョンソンスペースセンターがあるヒューストンなんです。
内田:あり得る話だね。当時の着用画像とかはなかったの?
栗原:残念ながら着用画像は見つからなかったんですが、同時期にNASAが関係者に配った記念メダルやステッカーのデザインとも完全に一致していて。
内田:後からスーベニアやフェイクを作るなら、もっとわかりやすくアポロ8号とかにするだろうし、この「SC103」という限定的なコードを使っている時点でオリジナルの可能性はグッと高まるね。
今野:もう、オリジナルと言い切っていいんじゃない?(笑)
内田:もし本物だったら飛行士たちが活動時に着用した宇宙服並みに資料的価値の高いものだよね。
栗原:ですね。それこそスミソニアン(スミソニアン航空宇宙博物館)レベルなのかもしれないですね。
阿部:NASAマニアからも、スヌーピーマニアからも注目されそう。最近またスヌーピープリントのスウェットが高騰しているし。
阿部:確かに昨今の高騰っぷりは凄まじいですよね。原因はやっぱりNIGO®さんなんですかね?
栗原:NIGO®さんの影響は大きいと思います。あの展示(2022年に文化学園服飾博物館にて開催された『未来は過去にある”THE FUTURE IS IN THE PAST”-NIGO’s VINTAGE ARCHIVE展-』)の模様がSNSなどにアップされたり、その翌年に開催されたオークション(2023年にジュピターが開催した『NIGO:FROM ME TO YOU』)で出品されたピーナッツスウェットのロットがかなりの高値で落札されたりと、それらを見たアメリカの若いディーラーたちが存在を認識してから一気に高騰したイメージですね。
今野:それにベートーヴェンプリントの再評価も〈スプルース〉(1950年代にアメリカで誕生したスポーツウェアブランド〈メイヨー スプルース〉の略称)人気を押し上げる原因のひとつだったと思う。作曲家シリーズって3種類しかないから(Beethoven(ベートーベン)、Brahms(ブラームス)、Bach(バッハ)の3種があり、それぞれの頭文字から3Bとも呼ばれている)、すぐにコンプリートできちゃうけど、ピーナッツシリーズは何種類もあるから、1から集める楽しみもあったんじゃないかと。
内田:このNASAプリントはいつ頃手に入れたの?
栗原:去年です。昔に見つけていたらあまり気にしなかったかもしれませんが、阿部さんや今野くんの言うように、ちょうどスヌーピースウェットが再高騰しているタイミングだったので、しっかりチェックしたという経緯があって。でも、これは流石に「かもしれない」で適当に売ってはいけないアイテムだと思うので、もう少し色々と調べてみたいと思っています。
第四講 阿部孝史
「自分で言うのもなんですが、全然似合ってないんですよね…(笑)」。
’70s Lewis Leathers CYCLONE
阿部:ぼくのひとつめは、〈ルイスレザー〉のサイクロンです。最近、年齢のせいなのか、死のことばかり考えちゃって(笑)。直接的な死というよりは、人生の残り時間を意識するというか、一種の終活マインド。そう思った時に「他人の目や似合う似合わないは一度置いておいて、自分が本当に着たいもの、憧れてきたものだけを手元に置こう」と決めたんです。それで指名買いしたのがこのサイクロン。黒も持っているんですけど、ネイビーカラー好きとしてはこっちも欲しくて。
内田:コンディションがめちゃくちゃ良いけど、年代は?
阿部:70年代だと思います。ただ、フロントジップのヘッドは交換されていると思います。
今野:でも、まずネイビーとか、カラーモノ自体が全然出てこないじゃないですか?
阿部:そうね。この間、同じくサイクロンのターコイズブルーがヤフオクに出ていたんだけど、とんでもない価格で落札されたみたい。
今野:えっ。もうそんなことになってるんですね。でも、なぜ〈ルイスレザー〉なんですか?
阿部:ブランド自体よりもサイクロンが良かったんだよね。エポレット(肩飾り)がなくて、着丈が長めだから、スタイリングがしやすいし、何よりフォルムが綺麗。現行品ももちろん良いんだけど。
内田:でも、やっぱりこの時代の肉厚でしなやかな革質は格別だよね。
阿部:ですね。英国のヴィンテージを扱っている友人に聞いたら、英国のバイヤーからも「ヴィンテージのサイクロンは日本人が買い尽くして、良い個体は全部日本にあるだろ」って言われたそうで(笑)。いまは世界中のマニアが探しているって言ってましたね。
内田:まあ、そもそもアメリカでは全く出てこないからね。ただ、阿部ちゃんぽくない武骨な印象だよね。
阿部:はい。自分で言うのもなんですが、全然似合ってないんですよね…(笑)。
栗原:なんだ、似合ってなかったらボロクソに言おうと思ったんですが、意外と似合ってますよ(笑)。
今野:ぼくが聞いた〈ルイスレザー〉のレアカラーの話では、ターコイズよりもはるかにイエローの方が出ないみたいですね。当時からオーダーする人が滅多にいなかったのか、イエローのヴィンテージが市場に出ると、世界中のコレクターがザワつくみたいです。
内田:イエローのルイスか、英軍のパラトゥルーパージャケットでフードが黄色くペイントされた個体があって、あれもカッコイイからサイクロンも想像しやすいな。そういえば、あの(パラトゥルーパー)ジャケットをリプロダクトしていたナイジェル(・ケーボン)さん、亡くなったみたいだね。
阿部:内田さんは繋がりがあったのでは?
内田:昔、ナイジェルさんから「今度本を出すから何か一筆寄書いてほしい」って頼まれたことがあったんだけど、「僕らは友達じゃなく、お店とお客さんという関係だから」って頑なに断っちゃった思い出があって。今となってはちょっと心残りだね。追悼の意を込めて先日エプロンを購入しました。
「今でも旧タグの個体を“ビッグE”的な感覚で探しています」。
’70s〜’80s SAINT JAMES Ouessant ,Naval
阿部:ふたつめは、ぼくの永遠の定番である〈セントジェームス〉のバスクシャツ。特にアームのブランドロゴが「SAINT JAMES」表記ではなく、「St.James」時代のものを学生時代からずっと買い続けています。
内田:明治通り沿いに直営店ができた頃は?
阿部:もう「SAINT JAMES」に替わっていましたね。
栗原:90年くらいが境目ですか?
阿部:年代を確定することはできないけど、90年代初頭にはすでに「SAINT JAMES」だった。首元の内タグもいくつか変遷はしているものの、同じく80年代まではプリントタグ。アームの表記が替わったタイミングで織りタグに移行していると思うよ。
今野:昔から“阿部くんと言えば”的な大定番ですね。やっぱり〈オーシバル〉でも〈ルミノア〉でもなく、〈セントジェームス〉にこだわりがあるんですか?
阿部:うん。やっぱりバスクシャツ=〈セントジェームス〉というイメージがあるんだよね。ぼくが学生だった頃のヴィンテージ市場では、この旧タグの個体を“ビッグE”的な感覚で探している先輩方が多く、ぼくも完全にその影響を受けてる。特に古い個体は洗濯でギュンギュンに縮んで横幅が狭まっちゃっているものが多いんですけど、スウェットと同じように濡らして適正に引っ張れば、生地を伸ばしてそれなりのサイズに調整できることが分かってから、消耗品だし、見つけたら買い足すようにしてるかな。
内田:日本における〈セントジェームス〉人気って、80年代のフレンチカジュアルの潮流がきっかけだよね。白シャツの上にセントジェームスを重ねて、ステンカラーコートを羽織るっていうのが、当時のトレンドだった。それがいまでもカルチャーとして根付いているんだろうね。アメリカではまず着ている人を見かけないもんね。
阿部:おっしゃるように、完全に日本独自のカルチャーですよね。90年代にパリの直営店に行ったことがあるんですが、とにかく日本人客しかいなくて。 店員さんのおばさんもなぜか、お煎餅を食べていました(笑)
今野:日本人観光客からの差し入れだったんですかね(笑)
阿部:ただ、ルーズフィットやモックネックなど現行も面白いデザインがたくさんあるので、新旧問わずに愛用してます。なので、ヴィンテージの文脈をリスペクトしつつ、現行品ももちろんめちゃくちゃ良いですよ、ということは、書いておいてください(笑)
一同:(笑)
「“出やすい星座”と“出づらい星座”が明確にわかれている」。
’70s BANDANA
阿部:で、もちろん最後は今回もバンダナです。70年代頃の星座柄。バンダナ界のドラゴンボールと勝手に呼んでいるシリーズの、12星座、完全コンプリートセットです。
今野:中央にレコードというか、まさにドラゴンボールの神球みたいな円があって、その周りに各星座のモチーフが描かれていますね、
阿部:そうなんですよ。RN(レジスタードナンバー)が14193なので、〈ワムクラフト〉社が作っていた片耳仕様なんですけど、これ、カラーバリエーションが星座ごとに固定されているのか、全星座に全色存在するのか、いまだに謎が多いジャンルなんだよね。“双子座だからピンク”とか、一定の法則があるワケではなさそうで。さらに、市場を監視していると、面白いように“出やすい星座”と“出づらい星座”が明確にわかれていて。
内田:そうなんだよね。ぼくも星座の種類は忘れたけど、今日ここにはないオレンジの個体を見たことがあるよ。
栗原:オレンジもあるんですね。
阿部:まあ、見つけたらダブっていても大体確保しているけど、魚座や獅子座、蟹座あたりはちょくちょく市場で見かけるものの、特定の星座がとにかく見つからない。わざわざ特定の星座を買うために、大阪まで行ったくらいだから(笑)。
内田:バンダナ一枚でも柄によっては、いまや相場が2万円弱する時代だけど、これを12枚すべてコンプリートする難易度と労力を考えたら、セットとしての価値はとてつもなく高いよね。
阿部:そうですね。そもそもバンダナを集め始めたきっかけが「サンタモニカ」でした。小さく畳んで並べるんじゃなく、額装してインテリアとして提案し始めたのって、まさに「サンタモニカ」時代の内田さんたちですよね。もし、あの頃「サンタモニカ」がバンダナをやっていなかったら、ぼくがコレクターになることはなかったと思います。
内田:額装はね、アメリカのインテリアの真似事として当時お店の天井の高い壁にディプレイしたらウケたんだよね。当時はアポロ柄とか、カウボーイ柄が主流だった中、変則的な幾何学模様をどうにか価値付けして面白がってもらおうと、みんなでいろんな名前を付けて、独自のポップを作っていたのは事実だね。
阿部:おかげで、僕の人生、いまだにバンダナ沼から抜け出せないでいます(笑)。
一同:(笑)