FEATURE
新時代を予感させる、10の日本ブランド。
MONTHLY JOURNAL SEP. 2026 Vol.01

新時代を予感させる、10の日本ブランド。

独自の視点とこだわりを持ってスタートした、新世代のドメスティックブランド。たしかな素材選びや緻密なパターンメイキング、伝統的なディテールの再解釈からコンセプチュアルな着想まで、そのアプローチは実に多様です。今回は、シーンに新しい風を吹き込む注目の10ブランドをピックアップ。日本のファッションの「いま」と「これから」を感じさせるラインナップを、デザイナーへのミニインタビューとともに紹介します。

01_HOMMENA

PROFILE

〈ボッター〉や〈ニナリッチ〉で経験を積んだデザイナーによって、2024年秋冬からスタート。仏語の男性(homme)と女性名詞の語尾(a)を合わせた造語通り、性のグラデーションを肯定し、ディテールに宿る静かな違和感と柔らかな色彩で、現代の新しいエレガンスを表現する。
Instagram:@hommena_official

ー数多くのブランドがある中で、ブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

デザイナーとして経験を重ねる中で、自身のクリエイションを最も純粋に表現するためには、自らのブランドを立ち上げることがいちばんだと考え、〈オムナ〉を始めました。精神的な性はより自由に、グラデーションのように広がっていると捉え、その曖昧さを美として受け止めています。生まれ持った身体構造を見つめながら、マスキュリニティとフェミニニティのあいだの揺らぎを服に表現しています。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

正しさからすこし外れたところにある美しさを大切にしています。服づくりの基本やセオリーを尊重しながら、その正解を疑い、わずかな違和感を加える。平面ではなく立体でデザインすることで生まれる独自のシルエットも特徴です。素材についても、その特性を理解した上で加工を加えたり、本来とは異なる使い方をしたりすることで、既存の正解からすこし外れた表現を探っています。

ー26AWシーズンのコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

26AWの“I’m Mama’s Boy”は、「無償の愛」を服という形で見つめ直したコレクションです。植田工氏の作品「A Mother and A Child」をきっかけに幼少期のアルバムを見返し、当時は当たり前で気づかなかった母からの深い愛を、いまになって改めて感じました。しまっていた記憶にもう一度袖を通すように、懐かしさや時間の痕跡、愛が持つ温かさと少しの息苦しさを、服の構造やディテールに落とし込んでいます。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような新しい価値やスタイルを提案していきたいとお考えですか?

〈オムナ〉の服を通して、自分自身のスタイルや価値観を肯定してもらえたらと思っています。性や美しさにひとつの正解があるのではなく、すこしそこから外れていても、それをそのひとらしさとして楽しんでほしい。同時に、まだ見たことのないものに出会ったときの高揚感も、ファッションのかけがえのない魅力だと思っています。

PICK-UP ITEM

Crumped Denim Jacket ¥88,000
カバーオール型のデニムジャケットは、ラグランスリーブをはじめとする立体的で複雑なパターンメイキングが目を惹く一着。それに加え、随所に配されたスナップボタンにより、服そのもののシルエットを変化させられるというギミックも。無骨なデニム素材を使用しながらも、全体を覆うピンクがかったフェードや、アーキュエイトステッチならぬハート型のステッチ、小ぶりの襟など、随所にブランドならではの繊細さと遊び心が光ります。

02_restrunt

PROFILE

2027年春夏にデビュー予定のブランド。「ベイクルーズ」運営の〈フォル〉でデザイナーを務めていた平沢幹太が、独立後に立ち上げた。料理店の意味を持つ“restaurant”に由来していて、自分たちの目で素材を選び、時には原料選定や基礎構造にも自らの手を加えながら、独自の工程を通して日常着を製作していく。
Instagram:@restrunt_official

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

これまで約8年間、洋服づくりに関わらせていただく中で、私たちの手でつくった洋服と日々を共に過ごしたい、それをさまざまなひとと共有してひとびとの生活に関わりたい、と考えるようになり、ブランドを始めることに決めました。「rest」「run」を掛け合わせた「restrunt」のブランドの綴り通り、休むときも走るときもそのひとに寄り添うことが出来る「日々のための洋服」が私たちのコンセプトであり、ブランドの信念です。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

「日々のための洋服」において最も大切だと考えている「素材」「身体との距離」は全ての製品をつくるうえでの原点となっています。繰り返す日々に溶け込み、馴染むことができる素材を目指し、選ぶだけでなく生地企画や染色・加工工程、時に原料の選定から素材づくりに取り組んでいます。また製品が着用者の身体と適切な距離となることを目指したパターンメイキングとサイズバランスも、素材への考え方と同様にとても大切にしています。

ーデビューシーズンの27SSコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

27年春夏、season01は「本棚」をテーマとしています。思考の集積所でもある本棚はひとに見せるためのものではない個人的なものですが、とても個々の審美眼や時間軸を感じさせる唯一無二の場所だと考え、テーマに決めました。私が洋服が好きになってからずっと変わらない考え方や、洋服づくりに関わることで新たに好きになったこと、モノなどをひとつずつ整理し、これからのブランドのスタンダードとなるコレクションを目指して取り組んだ20型です。ご自身のクローゼットやワードローブを思い浮かべながら、洋服をご覧いただけたら嬉しいです。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

正直とても恐縮なテーマで、簡単に新しい価値やスタイルをご提案することはできないと考えていますが、洋服づくりとブランドを通じて、ひとりでも多くの方が自身の日々の着ることや身に纏う洋服について考えるきっかけとなれたら嬉しく思います。生活の基本となる「衣食住」のひとつに関わる仕事として、誠実に目の前の洋服づくりに取り組んでいく次第です。

PICK-UP ITEM

secondskin sweater ¥36,300
糸・素材・パターンに至るまで、緻密に計算された16Gのハイゲージニット。素材はオリジナルで、インド原産の超長綿スビンコットン原料の1番摘みファーストピックと、米綿の長綿テキサスコットン原料を混紡。その100番単糸を三子撚り形状で、なるべく撚りをかけないように仕上げています。それによりしっとりとした肌触りで、色味も素朴な表情に。ゆったりしたサイジングでありながら、全体を真円構造で設計したり、裾と袖のリブの具合や仕末を工夫することで、ルーズになりすぎません。

03_MIDTHINGS

PROFILE

2025年秋冬にデビューしたブランドで、〈アタッチメント〉出身の近藤晃裕がデザイナーを務める。物事のあいだにある曖昧なものを大事にしており、ひとつのジャンルで括れない服を製作している。デビュー年には日本服飾文化振興財団主催の「JFLF AWARD」を受賞した。
Instagram:@midthings_official

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

自分の中に残っている記憶だったり、普段だったら気にも留めないようなものを、自分の見方で服にしてみたい と思ったのが始まりです。MIDTHINGSの「MID」は中間という意味で、物事をはっきりふたつに分けたり、ひとつの意味に決めてしまわないこともブランドの根っこにあります。理由はうまく説明できないけど惹かれてしまうものや、身近すぎて見過ごしているものを拾って、それを服にするとどう見えるのかを考えています。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

いちばんこだわっているのは、何をデザインの題材にするかと、そこからどこまで世界を広げられるかです。古着だけじゃなく、子どもの頃の記憶とか日用品、動物、車など、自分がおもしろいと思えば何でも入口になります。 それをそのまま服にするというより、一度自分の中を通して、最終的に〈ミッドシングス〉の空気を持ったものにしたい。服だけを見て終わるんじゃなくて、その向こう側の景色まで想像してもらえたらおもしろいなと思っています。

ー26AWシーズンのコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

26AWでは「誰かに見られる前の、まだ編集されていない感覚」について考えました。子どもの仕草だったり、家のなかの風景だったり、昔から身近にあったものだったり。普段は意識していないけど、生活のなかにずっと残っているような感覚を拾っています。日常的なんだけど、どこか少し緊張感がある。自分の中では「生活感のあるモード」みたいなものをつくりたいと思ったシーズンです。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

ひとって、身近なものほど意外とちゃんと見ていない気がするんです。記憶も曖昧だし、なんで好きなのか自分でもよく分からないものもある。目まぐるしいスピードで新しいものが生まれていくファッションの中で、 〈ミッドシングス〉は、そういうズレや説明しきれない感覚、見過ごしているものをもう一度見たり、自分なりに捉え直したりすることにも意味があると思っています。いつものものが少し違って見えて、退屈な日常がちょっとおもしろくなる。そんな服をつくっていきたいです。

PICK-UP ITEM

SHRINK JACKET ¥77,000
ウールサージを縮絨して仕立てたジャケット。元々はイギリスのテーラードのように裾へ向かって自然に開くシルエットで設計されていますが、強い縮絨を加えることで、少しズレをつくっています。整っていた輪郭がゆがみ、縫い目が沈み、端はほつれたような状態になり、アノニマスな印象です。三日月型の小さなポケットは、ファーストシーズンからつづく形で、ブランドのアイデンティティがほんのり香ります。

04_daisuke tanabe

PROFILE

京都大学を卒業後、西陣織の老舗「HOSOO」でテキスタイル開発に携わったデザイナー、田邉大祐が2023年に立ち上げ。日本の伝統的な手仕事や高度な織物技術をベースに、現代の日常に馴染むモダンなワードローブへと昇華させている。
Instagram:@daisuketanabe_official

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

幼い頃から映画や音楽、ファッションが好きで、それらに関わる仕事をしたいと思っていました。大学ではパターンを学び、卒業後は「HOSOO」でテキスタイルや商品開発に携わりました。服の構造と素材を自分の方法で結びつけたいと思い、ブランドを始めました。核にあるのは「巨人の肩の上に立つ」という考え方です。先人の技術や表現をいまの生活や自分の実感に引き寄せ、そこから想像を膨らませて別の見え方をつくることを大切にしています。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

見慣れた服や伝統的な技術を、一度ゼロから捉え直すことを大切にしています。世界各地のタンナーやファブリックメーカーとやり取りしながら素材からつくり込み、その使い方や服の形、着方、コレクションの見せ方まで実験を重ねています。ただ高級で質のいいものをつくるだけでなく、どこか意外性があり、背景を知らなくても「欲しい」「着てみたい」と思ってもらえる服を目指しています。

ー26AWシーズンのコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

2026年秋冬の「season 04 “atom”」では、不安の中でもいまの自分を肯定することに希望を見つけたいと考えました。そこから、身体を守るだけでなく、気持ちの拠り所にもなるような服を目指しています。マットなカシミヤの内側からベージュゴールドのシルクがのぞく生地や、抑えた色調に差し込んだブルーなど、静かな佇まいの中に温かさを感じられる素材や色に注目してほしいです。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

ぼくがいい作品だと思うのは、ひとの想像力をかき立てるものです。服であれば、「これを着て、あのひととあの場所へ行きたい」という身近な想像から、背景にある物語を通して未知の文化や価値観に興味を持つことまで、服を買うという行為が、着るひとの時間や視野を少し豊かにする体験にもなるような価値を提案したいです。

PICK-UP ITEM

wallace ¥264,000
カーブを描きながら深く重なるアシンメトリーな前合わせや、レザーをあしらったスタンドカラー、そしてループ留めのボタン仕様。過去の何かを彷彿とさせるクラシックなフォルムでありながら、特定のルーツを感じさせない、そんな無国籍な佇まいが魅力のジャケットです。ホワイトカシミヤとシルクを2層に織り上げたダブルフェイス生地は、縮絨後にカシミヤ面のみを起毛させることで極上の肌触りと奥行きを表現。裏地を排して生地の裏面をそのまま活かした贅沢な仕立てや水牛ボタンなど、テキスタイルに精通するデザイナーの美意識が細部にまで宿っています。

05_Gurank

PROFILE

デザイナーの佐々木英治が大手の商品企画で経験を積んだのち、2022年に立ち上げたブランド。国や年代にとらわれず、ミリタリーウェアやワークウェアなどの優れたヴィンテージのディテールを踏襲しつつ、現代的な解釈や独自の生地・パターンで再構築している。普遍的で、使いつづけるほどに味わいが出る服を目指している。
Instagram:@gurank_official

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

コンセプトは「日常の普遍的なデザイン、無意識に使い続ける服、物」「使い古されるほど磨かれ、使い続けたくなる服、物」。ブランドがたくさんあるとか、〈グランク〉は数多いブランドの中でも隙をつけるとか、そういうのは関係ないというか、あまり考えてません。かっこいい服をつくりたいなと思うのでつくってるだけというか。あまりトレンドも意識する気もなく、ただただつくりたい物をつくりたいクオリティでつくりたいと思っております。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

周りを見てかっこいいなと思うブランドはたくさんあります。他のブランドにはない強みというのも、他のブランドをざっくりとしか捉えていないので、あまり比較できないなと思っております。申し訳ございません。トレンドなどを追わないで純粋に好きなものだけをつくろうとすれば自然とブランドの個性にはなるかなと思っております。新品のときよりも着まくった方がかっこよくなるように、小綺麗ではなく野暮ったくかっこつくもの。そんな意識をしてつくっております。

ー26AWシーズンのコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

ブランドコンセプトだったり、先に述べた意識していることは、ずっと変わりはなく、その中で回数を重ねるにつれ、具体化できたり、細部にこだわってみたり、より分かりやすくつくれているかなと思います。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

ぼくがつくっているのは自分のスタイルです。手を抜かずに一生懸命わがままをやってるというか。流行に流されずに自分なりに着こなしていればそれがいちばんかっこいいと思います。

PICK-UP ITEM

Camo cargo pants ¥55,000
アメリカ軍のM-51をベースにデザインされた1本。極太のワイドシルエットでありながら、ウエストをベルトで絞ると、独特のドレープ感と上品さが出るパターン設計にしています。生地はブランドオリジナルのカモフラ柄。80年代のBritishArmyグルカショーツの古着をイメージしていて、柔らかいツイル生地を採用し、特殊なインクによる手捺染プリントを施しています。裾にはドローコートも装備していてシルエットの調整が可能。これぞブランドを体現する “温故知新” なパンツです。

06_PASTOR NOVA

PROFILE

2023年秋冬シーズンにデビュー。天然素材であるウールと最先端の化学繊維を掛け合わせることで、クラシックなテーラリングの美しさとギアとしての高い実用性を両立。都市生活に溶け込む洗練された佇まいを持つ、次世代のファンクショナルウェアを展開する。
Instagram:@pastor_nova_official

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

アウトドアメーカーを中心に生地開発に携わってきた経験から、「生地開発からデザイン」と捉えたブランドを立ち上げたいと考えていました。その際にウールが持つ機能性の高さに惚れ込んだことで、ウールの機能性にフォーカスしたブランドを設立しようと思いました。世の中には化学繊維を主としたテックウェアや、高級素材を用いてクラシックウェアをリファレンスしたブランドは存在しますが、そのどちらとも異なり、天然素材であるメリノウールが持つ「上質な風合い」と「高い機能性」の両立に着目しています。天然素材ならではの心地よさや美しさを活かしながら、現代のライフスタイルに求められる機能性を再設計することをコンセプトとしています。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

特にこだわっているのは、独自で開発している素材です。開発には長くて3年以上費やしたものもあります。ウールの機能を最大限に活かしながら、ウールが抱えるデメリットを打ち消し、風合いや快適性にこだわり、開発を進めています。デザインにおいて大切にしているのは、ワードローブとしての「安心感」と、ファッションとしての「魅力」。それを一着の中に共存させることを意識しています。

ー26AWシーズンのコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

26AWは、素粒子物理学からインスピレーションを受けたコレクションです。テクニカルな素材や構造を基盤としつつ、違和感のある要素を組み合わせることで、相反する要素を共存させています。単に「テックウェア」という既存のカテゴリーに当てはめるのではなく、素材や構造、着用時の快適性など、さまざまな視点から「機能」を捉え直し、新たな機能性を表現している点が大きな特徴です。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

「機能」というと、既存のスペックや性能をイメージされることが多いと思いますが、〈パストルノヴァ〉では、実際に服を着て、生活する中で得られる実体験としての「機能」に着目しています。そこから生まれる価値を、服として提案したいと考えています。実体験から得た「機能」を軸に、クラシックをそのまま踏襲するのではなく、いまの時代に合わせて再定義していく。その積み重ねによって、〈パストルノヴァ〉にしかない「スタイル」が少しずつ確立されていくのだと思っています。

PICK-UP ITEM

DIAGONAL TECH HOODED JACKET ¥69,300
建造物の構造をヒントにした、ダイナミックな斜めのカッティングが印象的なテクニカルジャケット。ブランドの強みであるウールとポリエステルを掛け合わせた撥水生地を採用し、斜めの切り替え部分には通気性を促すメッシュのベンチレーションが密かに隠されています。ギアとしての高い機能性を備えながらも、洗濯を繰り返すことで生地が柔らかく馴染み、経年変化を味わえるのがこのブランドならでは。フロントに配された止水ジップの開閉によって、首元の立体的なニュアンスを自在にアレンジすることも可能です。

07_HELS

PROFILE

〈コム デ ギャルソン〉出身のグラフィックデザイナー出口壮夫が手掛け、2026年春夏から本格始動。「人間とフィギュアが同じ服を着る」という斬新なコンセプトを掲げ、自作ドールと人間用に同一デザインのプロダクトを展開。人形の服を着せ替えるような感覚でファッションの拡張性を提示する。
Instagram:@helswg

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

ファッションをできるだけ簡単なものにしたい、という思いがあります。そのひとつの試みとして、一部の商品では人間用と同じデザインを1/6スケールの人形向けにも展開しています。着せ替え人形のように、人間も服を選び、着て、コレクションする。そうしたファッションの原始的な楽しさを強調したいと考えています。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

人間らしさという点にこだわっています。人形向けの服を想定することで、何がシャツをシャツらしく、服を服らしく見せているのかを意識しています。長い歴史の中で培われてきた服のコードを尊重しながら、できるだけ市井のひとが着るような服をつくる。一方で、グラフィックなど表面的な部分では、新しいアプローチを試す余地があると考えています。そういったケースでは、グラフィックデザイナーとしての自分の経験がブランドの強みになると思っています。

ー27SSシーズンのコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

シャツはマクドナルドのクルーユニフォーム、パンツはIKEAのスタッフ用ジーンズをベースにするなど、企業の制服を着想源にしています。これは、従来の着せ替え人形が、さまざまな制服を着て、その職業に扮する商品展開を参考にした発想です。実用面でも、多様な人種や体型のひとが着ることを前提につくられたユニフォームの考え方は、ファッションをより簡単なものにする上で非常に有効だと感じています。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

洗練やかっこよさだけでは測れない、ファッションの価値や楽しみ方はもっと広いところにあると思っています。たとえば、好きなアーティストのグッズを集めたり、着られなくても欲しい服があったりすることも、ファッションの一側面です。服をおしゃれに着ることがファッションの大きな魅力であることはこの先も続くと同時に、一方で、もっとライトな感覚で楽しむファッションにもフォーカスしていきたいと考えています。

PICK-UP ITEM

S/S Shirt ¥28,600
グラフィカルなブランドロゴが目を惹くチェック柄の半袖シャツは、なによりもその着想源がユニーク。インタビューでも語られている通り、デザインのベースには、マクドナルドのクルーユニフォームが採用されています。「着せ替え人形が様々な職業の制服に扮する」というアバター的なアプローチは、「人間とドールが同じ服を着る」という〈ヘルス〉ならではのコンセプトを体現するもの。リアルとトイの世界を軽やかに繋ぐ一着です。

08_kiivu

PROFILE

2025年春夏にデビュー。1925年からつづく歴史ある機屋を背景に、広島は尾道のアトリエで服づくりをしている。生地のアーカイブをベースに新しいアイデアを加えてオリジナルのファブリックを制作。女性の職人によって丁寧に仕立てられる服は繊細で美しい。
Instagram:@kiivu_official

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

1925年創業の染色工場を背景に、長年培ってきた染色技術やテキスタイル開発を、より多くの方へ届けたいという想いから〈キフ〉を立ち上げました。テキスタイルの開発から縫製までを一貫して行う体制のもと、女性縫製士による繊細な手仕事を掛け合わせながら、「生布(キフ)」を起点に布のルーツや可能性を探求しています。伝統的な技術を現代の感性で再編集し、新たな価値を持つプロダクトを提案しています。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

私たちはまずテキスタイルを開発し、その素材が最も美しく活きるプロダクトを考えます。工場主体のブランドでありながら、技術だけを見せるのではなく、小さなアトリエに集う職人やクリエイターの感性を掛け合わせることで、素材・縫製・デザインが一体となったものづくりを大切にしています。テキスタイルの開発から、染色、加工、縫製まで、全ての工程を一貫して自社で手掛けています。

ー26AWシーズンのコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

今シーズンは、約100年の歴史を持つ染色工場とともに開発した柿渋デニムを軸に、新たなデニムラインを展開します。伝統的なトラッカージャケットや5ポケットデニムをベースに、プロポーションやシルエットを再構築することで、普遍的な意匠を現代的な佇まいへと昇華させています。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

日本には世界に誇れる技術や素材が数多く存在しますが、それらが十分に伝わっていないことも少なくありません。〈キフ〉では、伝統技術を守るだけでなく、現代の感覚で再編集し、日常に自然と溶け込む衣服として提案していきたいと考えています。職人の技術と新しい感性をつなぐ存在であり続けることが、私たちの目指す価値です。

PICK-UP ITEM

ZIP UP JACKET – 12.5oz Rainbow Denim + SUMI Chintzfinish – ¥57,200
ワークジャケットをベースに、クラシカルな魅力とモダンなエッセンスを同居させて仕上げたジャケット。デニムは経糸に7番のインディゴ糸、緯糸にピンクとグリーンの糸を混紡したMIX糸を使用して織り上げていて、墨顔料をプリントし、さらに特殊チンツ加工を。デニムですがレザーのような質感です。パターンはテーラードジャケットのように立体的ですが、ボクシーでリラックス感のあるサイジングも魅力。アクションプリーツなど細部のディテールもこだわり抜いている。

09_CEIVE

PROFILE

2025年春夏デビュー。国内メゾンでパタンナーを16年間務めた麻生綾祐がデザイナーを務める。シーズンごとに大きなテーマは設けず、「着る人のスタンダードになり得る」アイテムを提案していく。
Instagram:@ceiveofficial

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

時代に左右されない「長く愛される続ける服」をつくりたいというのが始まりです。コンセプトは、「本質とは何かを思考し続け、全てにおいて理由のある服」。アイテムひとつをつくるにしても「一過性ではない本質的ないいものとは何か」を考えてつくることで、デザイン、パターン、素材、仕様、全てに理由が生まれるという考え方です。デザイン上のテーマは「0.5歩先のデザイン」。シンプルな日常着にほんの少しの「違い」を加えることで「わずかな新しさ」を提案しています。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

規模感もまだまだ小さいブランドということもありますが、デザインに対して自らパターンを引いて、自らトワルを縫うことにはこだわっています。自らパターンを引くことで見た目のデザイン以外の部分をデザインできることは〈シーヴ〉の強みだと考えています。

ー26AWシーズンのコレクションについて教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

シーズンごとのテーマは特に設けていませんが、毎シーズン異なる“シーヴのデニムに合う色”を提案しています。今シーズンはブラウンがキーカラーで、ウール、ファー素材、コーデュロイなどの素材でブラウンを使用しています。また毎シーズン新しいシルエットのデニムをつくっています。今シーズンは斜めにパンツを穿くことをテーマに「TWIST」というシルエットと、そこから派生させたワイドシルエット「TWST WIDE」も提案しています。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

まず〈シーヴ〉の服を皆さんに知っていただき、存在感を高めていくことが大前提として重要ですが、服を卸したらおしまい、売ったらおしまいではなく、その後のことを考えていかないといけないと思っています。まだいつになるかはわかりませんが、ブランドとしてさまざまなサービス面を充実させて「循環型ブランド」にすることは服をつくって売る身としては重要だと考えています。

PICK-UP ITEM

P018 TWIST WIDE ¥53,900
デザイナーの麻生さんはデニムへの知見が深いこともあり、デニムをブランドのアイコニックなアイテムとして展開しています。しかもパタンナーということもあり、シルエットへのこだわりは並々ならぬものです。こちらは13オンスのデニムを使用していて、シルエットを変形させた新型デニムのワイドバージョン。脇線を斜めにずらした状態で設定し、膝から下を捻じった立体裁断によって成形しています。平面では独特な印象ですが、着用するとシルエットが美しく大胆に浮かび上がり、表情も豊かになります。

10_AS

PROFILE

デザイナー非公開のままプレコレクションを発表し、issue 001より本格ローンチを迎える。古くからある服の基本形を起点に、いまの都市、いまの身体、いまの生活に馴染む現代のかたちへと翻訳。フォーマルさと日常性を高いレベルで両立させ、時代の流れに左右されないタイムレスなリアルクローズを提案する。

ー数多くのブランドがある中で、ご自身のブランドを立ち上げた経緯と、その核となるコンセプトについて教えてください。

長くデザイナーとして服を作る中で、自分自身も歳を重ね、環境や価値観が変わり、いまの自分は何を着たいのか、これから何を提示したいのかを考えるようになりました。そこで辿り着いたのが、自分なりの“OLD TO NEW”。時代を超えて残るものには必ず理由がある。その根源を“Authentic Source”と捉え、いまの技術や素材、自分たちの感覚を通して次の形へ翻訳する。それが〈エーエス〉の核です。

ーデザインや素材選びなど、モノづくりにおいて最もこだわっているポイント、あるいは他にはないブランドの強みはなんですか?

服単体としての強さや完成度は、デザイナーとして当たり前。その先に、ちゃんと人間が存在しているかを大切にしています。冷静と情熱、その間にある感情や余白を“Among Shapes”という言葉に重ねています。ぼく自身、いまでも服をたくさん買うからこそ、服好きが見たときに少しゾクッとする素材や仕様、構造を忍ばせたい。着るときも、脱いだ後も、そのひとの生活の中で美しく存在する服をつくりたいと思っています。

ーデビューコレクションとなるissue 001について教えてください。テーマや着想源、あるいは特に注目してほしいポイントはなんですか?

〈エーエス〉初のDebut Collectionとなるissue 001。その核となる「Maris」(Marine Jacket)は、夏を考えたときに浮かんだバケーションやリゾートというイメージから、“City Resort”という着想へと発展させました。Marine Jacketをベースに、表地にはシルクコットンのネップ素材、裏地には贅沢にトルコ産オーガニックコットンのグレー基調のギンガムチェックを使用。街で着るための新しいMarine Jacketとして再構築しています。

ー今回の特集テーマは「新時代を予感させる日本ブランド」です。これからの日本のファッションシーンにおいて、ご自身のブランドを通して、どのような「新しい価値」や「スタイル」を提案していきたいとお考えですか?

いま、日本を代表するブランドの多くは、5年、10年と時間を積み重ねてきた先輩ばかりです。そこにこれから自分たちが入っていくと思うと、正直ビビる部分もあります。ただ、展示会では著名な方々をはじめ、編集者、エディター、スタイリストの皆さんから想像以上の評価をいただき、大きな手応えも感じました。焦らず、でも確実に。〈エーエス〉らしい新しい風を、これからの日本のファッションに少しずつ吹かせていきたいと思っています。

PICK-UP ITEM

Maris ¥143,000
セーリングジャケットを現代的に解釈した一着は、衿元やポケットから覗く愛らしいギンガムチェックの裏地が目を惹くダブルフェイス仕様。表地には表情豊かなネップ感のあるコットンシルクを採用し、クラシックな風合いを絶妙に引き立てています。水の侵入を防ぐために二重構造で設えられた腰ポケットをはじめ、ヴィンテージウェアの合理的なディテールを丁寧にサンプリング。さらに、片側だけをスマートに折り返せるカーコート風のカフスなど、細部のパターンメイキングにも余念がありません。

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