FEATURE
スポーツウェアの新解釈。謎多きブランド、SOMEWHATに迫る。
MONTHLY JOURNAL SEP 2026
SPORTS and FASHION Vol. 01

スポーツウェアの新解釈。
謎多きブランド、SOMEWHATに迫る。

スポーツとファッションの交差、交配はこれまでにも多くのひと、ブランドが試みてきました。ですが、その多くがスポーツかファッション、どちらかに寄っていることが多かったのではないでしょうか。過不足なくスポーティであり、心底ファッショナブルである、そんな調子のアイテムを探していたら、今年スタートしたばかりのブランド〈サムワット(SOMEWHAT)〉に辿り着きました。寡黙で謎めいたブランドのファウンダーに話を聞きました。

PROFILE

SOMEWHAT

2026年にスタートした新鋭ブランド。スポーツウェアを標榜。製作陣は非公表。
@somewhat__official

ー〈サムワット〉はすごく面白いものづくりをしていると思うんですが、それが情報として全く表に出ていないので、今回はいろいろと伺えたらと思っています。

SOMEWHAT(以下、S): よろしくお願いします。

ーインスタのプロフィールには「Sportswear」と一言だけあります。つまるところどんなブランドなんでしょうか?

S: 説明するのがなかなか難しいんですが、個人的に数年前からテニスにハマっていて結構熱心にやっているんですけど、そのときのウェアとしていわゆるスポーツブランドのものをいろいろ着たんですが、なんだかしっくりこなくて。で、結局〈ポロ ラルフローレン(Polo Ralph Lauren)〉の短パンとか海パンをはいて、トップスには古着のTシャツを着てたんです。

ーどんな意味でしっくりこなかったんですか?

S: 僕の日常には合わなかったんです。テニスだけではなくてウォーキングしたりジムにも行くんですけど、そういったシーンを全部網羅できるアイテムが欲しかったんですよね。テニスウェアとか、ランニングウェアが欲しいわけではなくて。でも、そういうのって世の中に全然ないので、だったら作ってみようかなという感じで〈サムワット〉は始まりました。

ー“そういうの”とはつまり、機能もそれなりにあって、もちろんファッショナブルなアイテムということですか?

S: そうですね。〈カルバン・クライン(Calvin Klein)〉のパフォーマンスラインとか、〈ルルレモン(lululemon)〉とかなんだかんだいろいろ着てきたんですが、どうもちょっとした違和感があって。

ーというと?

S: スポーツウェアって、基本、アスリートの身体をベースに作っているんです。それがどこの国籍の人なのかはわかりませんが、アジア人ではないことだけは確かなんです。なぜなら着ていればわかるので。

ーなるほど。作り的に違うと。

S: はい。細くて長いんです。それでサイズ展開をいろいろ試したりしてみたんですが、170センチくらいの自分には全くフィットしなくて。短パンひとつにしても股上、股下のバランス、ゆとりなどがどうも合ってない。ベースとしているだろう骨格とは、ヒップや腰骨の位置が全然違うので、同じアイテムで成立するわけないんですよね。

ーその違和感に向き合うことで、〈サムワット〉のアイテムはできているんですね。ちなみにどんな体制でものづくりをしているんですか?

S: 各分野のプロフェッショナルに集まっていただいてます。あらゆるジャンルの洋服をつくってきたパターンメイカーに、スポーツウェアとファッションの両方に長年向き合ってきた方、そしてファウンダーである自分は〈サムワット〉をやる前に、とあるブランドを運営していました。

ー(チームメンバーがこれまでに関わってきたプロジェクトを聞いて)とんでもない人たちの集まりですね。どうりでものがいいはずですね。

S: 我ながらすごく贅沢なメンバーでやらせていただいていると思います。なので、ものを作ること自体はそこまで難しくないんですが、それよりもなんのために作るのかということを1年くらいずっと話し合っていました。

ー豊かな時間ですね、それは。

S: ウェルネスという言葉が出てきてから、一気にことが進んだ感じですね。そこから健康とかスポーツとか、そういう順番でコンセプトができていった感じがします。

ーそれで「Sportswear」になっていったんですね。

S: はい。スポーツウェアを日常に持ってくるのではなくて、普段着ているアイテムに機能を持たせられないか、という発想です。

ー日常着の延長で、スポーツできる洋服。たしかにありそうでないコンセプトですね。

ーここからはアイテムについてお伺いしていきます。

S: 自分が普段よく着ていた中綿のジャケットがあるんですが、形があまりピンときていなくて、それを改良して作ってもらったものです。袖ありと袖なしがあります。素材はナイロンのリップストップなんですが、そこまでの機能を持たせているわけではありません。

ーほどよいところで抑えている感じですか。

S: そうですね。それなりに撥水はしますけど、どちらかというと見た目ですね。ちょっとした光沢感というか。形は僕が好きなかぶりにしました。〈パタゴニア(patagonia)〉の「パフボール」とかが好きだったので、そのあたりの雰囲気は入っているかもしれません。

ー黒と白の2色展開ですが、白がなんだかとてもいいなと思いました。

PADDED VEST ¥49,500

S: いいですよね。この感じの白って全然ないんですよ。あとこの素材は、スポーツブランドやアウトドアブランドでは絶対に使えないんです。薄すぎるし、引っかかると穴が空いてしまう。

ーそうしたメーカーは、総じて基準が厳しいですよね。

PADDED PARKA ¥64,900

S: はい。物性(物質がもつ物理的な性質や特徴)の基準がすごく厳しくて、使える素材が一緒になりがちなんです。そうした制約があるがゆえに作れないアイテムってたくさんあるんですけど、ファッション目線で見れば、生地や色に関しても選択肢がすごく広がるんですよね。そのうえでスポーツウェアをしっかり作れる方がチームにいるので、ある種の説得力を持たせることができていると思っています。

ーっぽい感じでは終わらない。

S: そうなんです。スポーツウェアがファッションの方に寄ってきても、結局ファッションになりきれないので。

3L PARKA ¥74,800

S: 「ゴアテックス(GORE-TEX)」を使ったアウターがあんまり得意じゃなくて。あれって、硬いじゃないですか。

ーハリがある感じは、好みが分かれるかもしれません。

S: ああいう生地の柔らかいverで、スリーレイヤーになっているものって、これまたなかなか見つからないんです。

ー軽いですね、とても。

S: そうなんです、柔らかくて軽くてちゃんとスリーレイヤーです。あとポイントは、背中にベンチレーションが入ってることですね。これも例えば「ゴアテックス」を使った場合は完全防水がマストなので、この仕様は使えません。透湿性などのベンチレーションとしての機能もさることながら、この見た目が大好きなんです。

ー平面的ではなくて、奥行きが出ますね。

S: 個人的にですが、トレンチコートの背中と同じ雰囲気を感じるんですよね。機能的でもあるんですけど、ムードがある。

ーちょっとした色気というか。

S: こういうのが洋服の良さなんじゃないかなって思うんです。 「見た目がどうだ」っていうことで形を作ることの潔さというか。もちろん機能も大事なんですけど。

3L PANTS ¥47,300

S: スウェットパンツみたいに穿けるパンツです。

ーこれまた楽でスタイリッシュな面(つら)なんですが、スポーツにも対応している。

S: 普通だったら裾にドローコードがあったり、ファスナーを付けたりすると思うんですけど、目指したところが普段僕が穿いてるスウェットパンツなので、そういうのは省いていて、裾にはリブがあります。

ー少しゆったりめなフォルムで、生地はスリーレイヤーのシェルと一緒ですね。

S: はい。めちゃくちゃシンプルです。

S: 短パンは軽いナイロン素材でつくりました。

ー絶妙な丈感ですね。

S: 一応5インチとうたってるんですけど、正確にいうと5インチと6インチの間くらいなんです。

ーいかにも既存のものにはなさそうな長さですね。

S: まさに。6インチのショーツって探すとほぼないですよ。で、これはもう本当に僕の感覚なんですけど、スポーツをやるなら7インチだと長すぎるんです。5インチだとちょうどいいんですけど、普段履くには短すぎる。

ーそれでこの丈感に。

S: そうなんです。僕がなんで〈ラルフローレン〉の海パンを穿いてたかっていうと、5.75インチなんですよ。

ーちょうどよかったわけですね。

5” SHORTS ¥14,300

S: 〈パタゴニア〉のバギーショーツも良いんですけど、あれもスタイルのいい方がジャストで穿くとカッコいいものなので。

ーフォルムはちょっとゆったりめです。

S: ゆったりめで履けて、程よい丈感というのがポイントです。あと紐がコットンなんです。その方が見た目が可愛いなっていう理由で使っています。

ー普通というか、多くのアイテムはナイロンとかその手の素材を使うところですよね。けれどその意図は十分に伝わります。シャープすぎず、とてもチャーミングに仕上がっているので。

SWEATSHIRT ¥41,800

ーひときわ存在感のある穴だらけのスウェットには、どんなストーリーがあるんですか?

S: とある方が、こういう穴の開いたスウェットを着ていて。それは穴が開いたからその箇所を縫い直したというものだったんですが、それを元に、数年前に一回サンプルを作ってみたんです。そしたらそれを当時「レショップ(L’ECHOPPE)」にいた金子さんが気に入ってくれて、ちょっとだけ展開してもらったんです。

ーそうだったんですね。

S: 実はそのときにすでに「SOMEWHAT」というネームをつけてました。

ーちなみに「SOMEWHAT」ってどういう意味なんですか?

S: 「いくぶん」とか「少しだけ」みたいな意味です。ブランド名にあまり思い入れをつけたくなくて。

ーなるほど。それにしても、これ作るのすごく大変そうですね。

S: めちゃくちゃ大変です(笑)。レーザーで穴をあけて、手で縫い直すので。数年前は縫ってもらえたんですが、今回は縫ってくれる人が見つからなくて、結局身内で縫いました。

ーなんと。

S: だから、次のシーズンはどうしようかなって思ってるんです(笑)。

ーところで、このスウェットもスポーツウェアということなんですよね。

S: はい。これ着てテニスやってます。素材がT/C(※ポリエステルとコットンの混紡素材)なんで、めちゃくちゃ軽いんです。でもこれこそがスポーツウェアの発祥じゃないですか。

ーたしかに。ロッキーだってこういうのを着て走ってたわけですしね(笑)。

S: そうそう。ランニングしてるときにもボクシングしてるときにも着てるし、何用のアイテムなのかって言われたらスポーツウェアじゃないですか。もちろんもっと今っぽくすることもできるんですけど、僕の場合は十分なんです。普段も着るんだったらこれくらいじゃないと、デニムに合わせられないんで。

ーそのへんのチューニングは、〈サムワット〉のアイテム全部に緻密に施されてますよね。

S: スペックを追いすぎないのが大事なんです。この辺にしておこう、というか。

TIP’n’STAND TOTE / DYNM ¥41,800

S: このバッグは、古くからの友人である尾崎雄飛くんに作ってもらいました。以前やっていたブランドでも、カバンはたくさん作ってたんですけど、どうしてもちゃんとしたものになってしまうというか。重くて硬くて。

ー今回のバッグは、もっとカジュアルな感じですね。

S: こういうのでテニスに行ってたんです。エコバッグ的な。

ー素材が「ダイニーマ(DYNEEMA®)」ですよね。軽くて強い。

S: そうです。アウトドア業界でよく使われる高機能素材なんですけど、そっちっぽくするのも違うかなと。日常的に使えるカジュアルなエコバッグの延長線にありつつも、素材にはこだわるというのが僕の考えるバッグでした。

ーカジュアルな見た目でありながら、品がありますよね。

S: あと、床に置いたときに自立するのがポイントです。素材で補強しているわけじゃなくて、ハンドルのテープを骨組みっぽくすることで、軽量でも自立するようになってます。

S: Tシャツは全部ポリエステル100%です。どう見てもコットンにしか見えないんですが。

ーたしかに。これもありそうでなさそうです。あと特徴的なのはネック周りでしょうか。グッと詰まってますし、ステッチも3本入っていて、タフな印象です。

S: おっしゃる通りで、このネックは絶対ダレないです。何百回洗おうが構造上伸びません。そもそもネックが詰まってるスポーツTシャツってないんです。首元が詰まっちゃうと苦しくなるんで、開けるのが正解なんですよ。どんなスポーツウェアだとしても。

L/S TEE SOMEWHAT ¥14,300

ーそうですよね。ほんの少しでもストレスの種になりうるものは取り除かなければいけないでしょうし。

S: はい。ただ、普通のカジュアルなTシャツとして着るんだったら、ネックは詰まってる方がなんとなく気分だなって。

S/S TEE DAILY ¥14,300

ープリントも何種類かラインナップされていますが、いわゆるスポーツ的なものはひとつもないですね。

S: はい。なるべくスポーツっぽくない、大人が着れるフォトTというのを狙いました。

COTTON CAP ¥7,480

S: キャップはコットン製なんですけど、これめちゃくちゃ軽いんですよ。例によってテニスするときに使っていたものです。

ーコットンにした理由はやっぱり見えづらの部分ですか?

S: というよりもテニスを本気でやると、ナイロンじゃ吸いきれないくらいの量の汗をかくので、それが垂れて目に入ったりするんですよ。なので、コットンにしているっていう。

ーまさかの、機能面からくる理由だったんですね。

ー〈サムワット〉のアイテムは、いちいち個人的な理由から作られていて、とても興味深いです。

S: そうなんです。全部ベースは自分にあるので、人に伝えるのがすごく難しくて。

ーインスタにもなにも書いていないですしね。

S: 言葉を入れれば入れるほどよくわからなくなってくる気がして。でも今回のビジュアルを作ってくださったスタッフの方に「ヘルムート・ラングがスポーツウェアを作ったらこういう感じになるのかもしれませんね」って言っていただいて。それはなんかしっくり来たんですよね。

ーずっとモヤモヤとしていたものがプロダクトになっている感覚ですよね。

S: そうですね。ストイックに作ってはいますけど、シリアスではないという感じなんです。

ーところで〈サムワット〉のアイテムはどこで購入できるんですか?

S: オンラインサイトをようやく作りました。

ー実物を見たいっていう声もあるんじゃないですか?

S: そうですね。そのあたりも徐々にやっていくつもりです。ただ、今って、そんなに簡単に物が売れる時代ではないと思うんです。なので急いでなにかをやるという感じでもないのかなと。まずは自信を持って世に出せるものを作るというのが先にあって、あとは〈サムワット〉のことをわかってくれる人、興味を持ってくれる人に伝えるのが大事だと考えています。そしてそれは今のところ上手くいってると思います。

ー次のコレクションの予定もあるんですか?

S: はい。なんとなくは固まっています。すでに僕の頭のなかからは離れて、ものづくりのフェーズに進んでいます。納得いくものができなければ出さないだけなので、焦りはありません。展示会も年に1回かなと思っています。

ーシーズンがどう、というアイテムでもなさそうですよね。

S: そうなんです。スポーツウェアなので、短パンとTシャツが一番売れてほしいなと思っています。スポーツをするとなると、冬場でもTシャツと短パンって必要なんですけど、意外と売っていないんですよね。

ーたしかに。日常のすぐかたわらにあるスポーツウェア。すごく素敵なコンセプトのブランドだなと思います。

INFORMATION

SOMEWHAT

https://www.instagram.com/somewhat__official/

Photo_Kai Naito / Yu Teramoto / Kentaro Otsuka
Styling_Naoki Ikeda
Hair & Make-up_Yuka Toyama
Model_Manami Kinoshita / Yuichiro Ozaki
Edit_Sayako Ono / Sho Iwata
Direction & Production_Kai Tokuhara

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