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essential designs – あのヒトの欠かせないモノ –Case08 西野大士とニートのチノパンツ

essential designs – あのヒトの欠かせないモノ –
Case08 西野大士とニートのチノパンツ

あのヒトにとって、なくてはならないモノ。その必要不可欠な理由を知れば、モノ選びの視点や暮らしのこだわりが見えてくる。服も、日用品も、仕事道具も。ひとの数だけあるエッセンシャルのかたち。その一つひとつの裏側にあるストーリーを辿っていきます。第8回は、西野大士さんとニートのチノパンツ。

日本人のためのチノパンツ。

ーそんな西野さんが今回、エッセンシャルとして選んだのが〈ニート(NEAT)〉の「ニートチノ」。

西野: 本来なら自社製品ではない方がいいと思うんですけど、自分の中でチノパンツといえば〈ニート〉の「ニートチノ」しかないので。

太いけれどいつの時代でも穿ける日本人に合ったシルエットが魅力の「ニートチノ」。西野さんのカッコつけない美学にフィットするのはもちろんのこと、トラウザーズを主軸とする同ブランドにあって、実はNo.1ヒットアイテムだとか。「最近はこれにサイクリングシャツを合わせることが多いですね」と西野さん。

ートラウザーズを主体とする〈ニート〉が、なぜチノパンツをつくることに?

西野: ぼく自身も働いていた〈ブルックス ブラザーズ〉が1970年代にチノ素材でつくっていたトラウザーズをベースにしているので、つくり自体はスラックスなんですよ。チノパンツはどこのブランドにもあるありふれたアイテムなわけですが、「トラウザーズの仕様でつくっているブランドは案外ないかも。であれば、ぼくらがやる意味もあるよね」ということで2020年にデビューしました。

ー西野さん自身もこれまで色々なチノパンツを試されてきたんですか?

西野: それが…チノパンツはほとんど通ってなくて、唯一穿いていたのが〈ポロ ラルフ ローレン〉の「ポロチノ」くらい。意外に思われるかもですが、ぼくの中ですごくトラディショナルなアイテムで穿きこなすのが難しいというイメージもあって、敬遠していたんですよね。

「ニートチノ」のデザインソースとして見せてくれたのが、自身の古巣にして、アメリカ東海岸を代表するトラッドの雄〈ブルックスブラザーズ〉のチノトラウザーズ。ウエストサイズこそかなり大きめだが、これをベルトでギュッと絞って穿くことで、アメリカの普通のオジさんのようなラフな雰囲気が生まれる。

ー西野さんの好きが高じて生まれたものなのかと思っていたので、それは意外でした。

西野: チノとデニムの素材としての主張ってすごく強いじゃないですか。どんなつくり、どんなディテールでも、その素材さえ使っていればチノパンツやデニムパンツと呼ばれる。ここ数十年の日本のファッションシーンにおいて、この両方は特別なアイテムなんだなって改めて感じています。

ー先ほども話にあがった「チノパンツは穿きこなすのが難しい」という点については、サイズ選びが鬼門になっている気がします。

西野: そう、日本人がジャストサイズでチノパンツを穿くのって、実はかなり難しいんです。それを格好良くまとめるには、大きめサイズをギュッとベルトで絞ってルーズに穿くのが、ひとつの最適解。なので「ニートチノ」もウエストはジャストだけど、デカ穿きしているように見えるボリューミーなシルエットで設計しています。

ー〈ニート〉のトラウザーズは日本人に合うシルエットが人気の理由のひとつにありますが、この「ニートチノ」の場合もそうなんですね。

西野: ぼくらのトラウザーズの基本シルエットはほぼ全モデル共通していて、腰から太もものシルエットがポイントになっています。骨盤がしっかりしている欧米人と日本人では骨格が根本的に違うので、お尻回りや太ももにゆとりを持たせて深いタックを入れることで、きれいなシルエットが出るようにしているんです。

ー以前「ファッションの矢印が昔は外向きだったのが、いつの間にか内向きに変わった」と話されていますが、モノづくりにおいてもそうでしょうか?

西野: ことモノづくりに関して言えば、「自分自身が欲しい」という内向きの矢印、そしてそれを「みんなにも穿いてもらいたい」という外向きの矢印。その両方があるべきだと思っていて。

ー内向きの矢印でいえば、西野さんがファッションに興味を持ったきっかけが「中学時代、女の子にモテたくて」だとか。チノパンツというアイテムは、その点いかがでしょうか?

西野: いまは、むしろぼく自身がモテからは程遠いのでアレですが(笑)、チノパンツに関してはどうなんですかね。数多くのブランドが定番ラインアップのひとつとしてつくっているからには、売れているとは思うんです。ウチでも一番の大ヒット商品ですし。なのに、実際に穿いているひとってあまり見かけないですよね? いつもそこが不思議で。

ーたしかに若者は穿いていないかも。

西野: ぼくのようなオジさんが穿いているケースが大多数、ということは多分モテないです(笑)。デニムパンツに匹敵するバリューがあるはずなのに、なぜか陰にひっそり隠れてしまっている。デニムパンツとの大きな差はそこに尽きるでしょうね。

ーモノ自体についてもう少し詳しく教えてください。過去に「〈ニート〉ではいわゆるいい生地を使わない、ということをあえてしている」とも話されていますが、それはいまも変わらず?

西野: そもそも“いい”とは何なのかってことですよね。たとえばラルフローレンの「ポロチノ」は永遠の定番として評価されていますが、それがその時々のいい生地を使っていたかといえば、必ずしもそうではなく、一番世の中に出回っている生地を使っていたと思うんです。そう考えるならば、質や値段を根拠とした生地の良し悪しなんて、お客さんにとってはぶっちゃけどうでもよくて。それよりも「いいな」と感じてもらうことが大事だなと思っています。

ーそのアイテムにマッチした生地であることの方が重要であると。では、この「ニートチノ」の他にはない部分を挙げるとしたら?

西野: 製品洗いをかけている点が、まずひとつ。トラウザーズの工場では基本的にはあり得ない試みなんですよ、実は。着古した雰囲気を出したいからと、縫い終わった後にボタンなどの付属品を付けず、しつけ糸で縫い付けて洗いに出します。その後、しつけ糸を取ってボタン付けをする。めちゃくちゃ面倒くさい工程を踏むので、工場には嫌がられるのですが〈ニート〉ではやっています。あとは先ほど話したシルエットも重要。「ニートチノ」は、太いけれどいつの時代でも穿ける日本人に合ったシルエットでつくっているので合わせるアイテムを選ばないし、しかも飽きない。なので、手放したくならない。ぼくらは、日本人の食に欠かせない主食・米のようなものだと考えています。

ー先ほどモテについてのお話もありましたが、「ニートチノ」をどう着こなしたらモテるんでしょうか。

西野: もともと、ボロボロのTシャツにビーサンでもちゃんと上品に見えるというコンセプトで始めたブランドなので、古着と合わせることが多いですね。最近だと1960年代頃のサイクリングシャツとか。ただし、モテたければ、そもそも「ニートチノ」じゃないっていうのはあります(笑)。タック入りのチノパンツってオジさんのイメージがあるでしょうし、女性にオシャレとして穿いていると理解されづらい。だけど、ぼくの目指すカッコつけない美学にはすごくフィットするアイテムです。チノパンツのいいところって、やっぱりそこじゃないですか。日々の格好にすごく馴染むっていう。ぼく自身、チノパンツをカッコ良く穿ける大人になりたいとは常々思っています。

ー日々の格好に馴染むって理想的じゃないですか。頑張りすぎていない自然体のオシャレを女性は好むとも言いますし。

西野: あ、たしかに! そしたら、モテるのかもしれませんね、チノパンツって(笑)。

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