PROFILE

小学2年生の時に、約1ヶ月かけて父親の運転する車でアメリカを横断。移動中、さまざまな土地のホテルに滞在するも「どこも同じような景色で、日本のホテルにいるのとほとんど変わらない」と不満を感じたことを原体験に、2015年、ホテル事業を展開するL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を設立。北海道・富良野の「petit-hotel #MELON」や大阪・弁天町の「HOTEL SHE, OSAKA」、京都・九条の「HOTEL SHE, KYOTO」など、これまでに全国で計5軒をプロデュースした。客室にレコードプレーヤーを置いたり、期間限定で詩人・最果タヒとコラボレーションしたコンセプトルーム「詩のホテル。」を提供するなど、独創的なコンセプトや内装、確立された世界観が注目を集めている。現在23歳。
原動力は自分が日常生活で感じている渇き。

ー 北海道・富良野の「petit-hotel #MELON」の運営が龍崎さんの経営者としてのスタートですが、最近はホテル運営のみにとどまらず、ホテルを通じて新しいビジネスも展開されていますね。
龍崎翔子(以下、龍崎):はい。まだリリース前なのですが、ホテルをメディアに見立てた広告プラットフォームを展開したいと思っています。
ホテルって、プライベート性とパブリック性が絶妙に両立している中で日常生活が営まれるとても面白い空間だと思っていて。雑誌やウェブマガジンなどでライフスタイルにまつわる価値観やブランド・商品を伝えることができるように、ホテルというリアル空間で、ゲストにとって新しい情報や生活体験を提案することができるのでは?と考えています。
具体的には、ブランドと宿泊施設をつなぐプラットフォームを運営していきます。宿泊施設ごとの客層や空気感に応じて、そのホテルにぴったりなブランドの広告をマッチングさせる。たとえば、20~30代の自立した女性のためのブランドの場合、そのブランドの世界観に合致する宿泊施設を提案し、ホテルの空気観に合わせた導入方法を企画・提案する、という形です。

定番 ダッフルバッグ 231 ¥4,180 inTAX
ー これまでにありそうでなかったタイプのプラットフォームですね。どのようにしてアイディアを得たのですか?
龍崎:過去に、HOTEL SHE, でイベントを行った際に、協賛企業様の商品(ドリンク)を朝食でお客様に提供したことがありました。その時に気づいたのが、街中や店頭で配りっぱなしになるサンプリングとは異なり、ホテルは生活シーンに合わせた提供ができ、かつ、ホテルに滞在している間にお客様のリアクションや感想などを知ることができる。その経験が、今回のプラットフォームのヒントのひとつになっています。
SNSやスマホゲームなどのwebアプリケーションを運営した経験のある方とお話ししていると「ユーザーの時間をどれだけ占有できるか」をすごく意識されていたんですね。考えてみれば、ホテルは数時間、もしかすると十時間以上、人が滞在してくれている。そんな特殊な空間だからこそ提供できる新しい価値があるのではないかと考えました。そうした、いくつかのヒントが結びついて、今回のプラットフォームが生まれました。
他者とのコミュニケーションによって磨かれるもの。

ー 龍崎さんが大学在学中に起業して、23歳という若さでこれだけの実績を出せているのは、世の中に対する観察力や洞察力が優れているからなのではないかな、と思っているんです。いつも、どんな視点で物事を見たり、考えたりしていますか。
龍崎:常に、原動力になっているのは「自分がハッピーになりたい」という、とても個人的な思いなんです。生活者、あるいは消費者としての課題や欲求が最初にあって、それを満たすためにプロダクトをつくっていくことになる。ホテルプロデュースも、「自分ならこんなホテルに泊まりたい」という欲求から始まっています。
自分の欲求を極限まで突き詰めて作ったプロダクトは、他の人にも届くんじゃないかなとどこかで思っているんです。なぜなら、自分は他の多くの人と同じ時代に同じ教育を受けて、同じ娯楽を消費して生きているから。私の中にある「こういうものがあればいいのにな」という欲求と似たものを感じている人が他にもいるはずで、あえてパーソナルなものを作り込むことで、そこに共鳴する人が出てくると思うんです。
だからプロダクトを作っていくときは、自分の内面をディグっていくことがすごく重要。内面をディグり続けて、潜在的な欲求や欠乏感を研ぎ澄ました先に、本当に自分を満たしてくれる何かが見えてくるからです。
ー 特別な何かをするんではなく、ちゃんと自分の日常の中で感じることを極めていく感覚ですよね。
龍崎:そうですね。この〈アウトドアプロダクツ〉も、デイバッグの原型を作ったブランドなので、日常生活を見つめて、深めてきたところに共感しています。

ー どんなふうにして、内面をディグっていくんですか?
龍崎:たとえるなら、自分の中にアメーバがいるような感覚です。人と話したり、雑誌やSNSなどから情報を浴びていくうちに、触手がのびたり、アメーバが増えたり、くっついたりしていく。すると、あるときにいろいろなアメーバが一気につながる瞬間があるんです。「これとこれがつながる、あっ、ここも線になる、それなら事業にしよう」みたいな。
なので、人とのコミュニケーションはすごく大切にしています。会社のチームのメンバーとも、普段からいろいろ話します。雑談が進んでいくうちに、ビジネスのヒントになることも少なくない。会食などで社外の人と話すことで、助けを得られることもある。こういう取材も、質問に対して答えることで考えが整理されていくから、自分のための時間になっています。

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