「これってコクーン(繭)だね」と、誰かが言っていた。
ー 一方、ホテルに関してはいかがでしょうか?




ホテル各室内観。
岡:いまテナントの話がありましたが、地下1階と地上一階がこの施設の“動”の部分なら、ホテルの部屋はその反対で“静”の役割を担ってます。デザインを手がけたのはスウェーデンの「CKR」というチームなんですけど、いくつもホテルを見てきたなかで、彼らのつくったものは「こんなの見たことない」というものでした。
というのも、部屋に入ってまず目に飛び込んでくるのが筒状の藍染のカーテンなんです。下から上に向かってグラデーションが濃くなっていくんですけど、それが部屋の真ん中にドーンとあって、カーテンの中にはベッドが隠れているんです。
ー すごく大胆な構造ですね。
岡:誰が言い出したか覚えてないんですが、「これってコクーン(繭)だね」って言ってて。動の部分でいろいろな刺激を受けて興奮したまま寝るのではなくて、その日に何が起こったのかを考えてそれを飲み込んでから1日を終えるのが豊かな1日の締めくくりになるんじゃないかと思うんです。それができる場所になっていると思いますね。
本間:部屋に関しては最初から変化することなく同じコンセプトで進んでいったよね。おもしろいのは、CKRってパース画を最後まで描かないんですよ。ざっくりとしたマテリアルだけでプレゼンされるので、ぼくらの想像力では最初追いつかなかったんです。
岡:2ヶ月に一回くらい日本に来て、毎回マテリアルのサンプルを持ってくるんです。そこにはオレンジのカーペットとか、木材の色味とか、カラーガラスとかのサンプルがあって、「部屋はこれとこれの組み合わせ」みたいな感じで説明されるんですけど、ぼくらは「え? なにそれ?」みたいな反応しかできなくて(笑)。
松井:そういう感じのムードボードを出してくるんです。でも、いままで色んなプロジェクトでムードボード見てきたけど、CKRのやつがいちばんかっこよかった!
岡:普通はもっと具体的に「こうなります」っていう絵を見せてくれるんですけど。
本間:「カーテンが筒状?」「赤いお尻みたいなのはソファ?」みたいな。でもプロジェクトが進行していくにつれて、徐々にぼくらも追いついていって、「これ、めちゃくちゃかっこいいんじゃないか!?」っていう気持ちに変わっていったんです。
それも結局信頼関係なんですよね。彼らの人柄がすごくいいのと、彼らがこれまでに手がけてきたものもよかったし、なんなら彼らの着ている服がかっこよかった。じゃあ大丈夫だろうって思わせてくれる説得力をそもそも持っていたんです。

松井:彼らがすごいのは、ぼくらがいま座っている小さなスツールをつくったり、ホテル備え付けの鉛筆までデザインしてるんですけど、小さなものから建物まで全部がっつりデザインできるんですよ。そういう人たちって、デザインするものが大きくなってもディテールのクオリティが落ちない。それがすごいですよね。ブルックリンのためにビアグラスもデザインしてくれたんですけど、それは耐久性を考慮して、なくなく使用を見送ったんですが。
本間:そういう裏話いっぱいあるよね(笑)。