タグスワーキングパーティーがこれまで歩んだ道のり。
ー ブランドは2005年にスタートし、時代ごとにアヴァンギャルドな創作をつづけていますね。始動した経緯について教えてください。
森岡:文化服装学院時代に、ブランドをやりたくて仲間と始めました。卒業後はそれぞれ就職をしたので、自由が丘をアトリエに、宇野薫商店での展開などをメインに活動していて。“ワーキングパーティー”は作業班という意味ですから、チーム編成でモノづくりに励んでいる僕らにはぴったりのブランドネームなんですよね。

初めて作ったプリント入りのTシャツ。ここがすべての始まり。
ー 原点となるアイテムはありますか?
森岡:人生で初めてプリントしたのは、アンディ・ウォーホルとそのミューズであるニコのデザイン。学生時代に通っていた美容室の代表ABBEY松永さんが「Tシャツくん」というプリントキットを貸してくださって。ちなみに東急ハンズでも売っていますよ。ハサミで切ってコラージュしたものをシルクスクリーンしたら、強くプリントしすぎて半ズレや滲みもある。失敗とも取れますが、手刷りならではの計算できないところにハマり、それから毎日のようにTシャツをプリントしていました。
ー 初期の作品には、より”手作業の跡”を感じます。
森岡:手作業がとにかく好きです。2005年に作ったTシャツは、セロハンでTシャツを包んだものを筒に入れていて。海外輸入品をイメージしました。(上記写真1枚目)
2008年頃に作った缶バッチは、ミリタリーの勲章と、アンディ・ウォーホルのボックスセットのバッチからインスパイアされたもの。破れたようなデザインは海外の町で見かけた破れかけのポスターが着想源です。著名な映画監督がよく買ってくださっていたので、このバッジは個人的に縁起ものです。(上記写真2枚目)
ー バリエーション豊かなプロダクトからは、尽きることのない創作意欲を感じますが、膨大な時間がかかっているのではないでしょうか?
森岡:まさにその通りです。ブランド初期はまだイラストレーターを持っておらず、フォトショップで時間をかけてグラフィックやロゴを作っていたのが懐かしいです。さまざまなアイテムにプリントを散りばめていくこともおもしろくて。Tシャツに缶バッジにポスターと、アイテムのバリエーションは豊富になりました。イベントや展示の空間作りにものめり込んでいきましたね。
ー 〈タグスワーキングパーティー〉で活動しながら、村上俊実氏が率いる「M&M CUSTOM PERFORMANCE」のアパレル部門に所属されていましたね。アパレルショップやカフェの内装・デザインは芸術の域と言われるほどですが、その経験は活きていますか?
森岡:ムラさん(村上俊実)の仕事への向き合い方には大きな影響を受けています。ポップアップをやったときの空間演出も、1件のショップを作る気持ちで向き合いました。たとえ時間がかかってもこだわり抜いて納得のいくモノにしたい。ムラさんの元でものづくりの姿勢を学べたことは僕の財産ですね。
ー では、独立のきっかけは?
森岡:実は、二足の草鞋を履くのがあまりに忙しく、〈タグスワーキングパーティー〉を休止していた時期もあります。そんなとき、私が足を骨折するというハプニングに見舞われまして。入院中、ひさしぶりに思うがままデザインをしてみたら、2日で10型のデザインができあがった。自ブランドへの創作意欲を再確認するきっかけになり、パートナーからの「もう一度やろう」のひと声にも背中を押され、本格的に取り組み出すとともに、独立したんです。

外国の街中で見かけた車や看板、作業員のユニホームなどを撮影。アイデア源にしているそう。
ー 森岡さんの創作源である膨大なインプットは、どのように蓄積されたんでしょうか。
森岡:僕の専門学生時代、「フィロソフィーストア」という伝説的ショップがあり、カルチャーを掘るための書籍が取り揃えられていた。そこで本を読み漁り、同時にタワレコやパルコの地下の本屋でグラフィックの本を集めるようになりました。授業をしっかり受ける優秀な学生ではなかったですが、自分の興味の赴くままにグラフィックには傾倒していましたね。
ー これまで「ジャーナルスタンダード」や「ベースヤード トーキョー」でもポップアップショップをされていますが、常にブランドのアイデンティティを確立しながら、時代に対して新鮮なアプローチをつづけてこられました。そんな〈タグスワーキングパーティー〉らしさのひとつとして、“海外のにおい”がある気がしています。その由来は何でしょう?
森岡:海外に行くといつも、ロゴデザインを見て歩くんです。デザインを日本に輸入するという点で、ブランドの世界観を強めている。旅行や散歩、美術館巡りなどさまざまなシチュエーションに異国のデザインがあり、ひらめきの種をもらい、自分の“個性”を落としこみ、グラフィックの幅を広げていくのが僕のスタイルです。