デザイナー森岡喜昭のルーツとは。

ー なぜ、多彩なデザインを生み出しつづけることができるのでしょう。アイデアが自然にわくのか。はたまた、いつもネタを探し続けているのか。 森岡さんのパーソナリティとは何だと思いますか?
森岡:自分では意識しないので難しいですが…昔からの口癖は「なんかおもしろいことないかな」です。専門学生時代にも授業をサボってはお気に入りの店に入り、コーヒーを飲みながら悶々と考えていた。常にそんなことを言っているので、実際に面白そうなモノに出会うと嗅覚は働きますね。
ー おもしろいこと探しが染み付いているんですね。大人には怒られそうですが…
森岡:それが、こんな性格になった理由は家庭環境。実家が明治16年からつづく着物の仕立て屋なので、色彩は自然と目に入ってきますし、手縫いにこだわる頑固な職人さん達の背中を見て育ってきました。若い住み込みの方々もいる特殊な環境の中で、親からはおもちゃの代わりに段ボールを与えられ、工作をして過ごしたり…。いつも父が「お前は遊びの天才だ」と褒めてくれたんですよね。
ー ものづくりの名家で育ったんですね。
森岡:お堅い家柄、専門学校に行くことを反対されもしましたが、説得したら分かってくれましたね。兄弟もアパレルでの仕事経験がありますし、家族って不思議なものです。

ー 今、インタビューさせていただいているカフェ「ディライト」も、森岡さんにとって多くの出会いがあったお店だとか。
森岡:まさに、ひととの巡り合わせは「ディライト」が原点。このお店で授業をサボっていなかったら「M&M」に入ることもなかったですし。ここの内装は「M&M」によるもので、ひとつひとつのディティールのおもしろさはもちろん、物知りの店主マサさんと話す時間が貴重なんです。何より、居心地がいい! いろいろなひとと引き合わせていただきました。
ー 自分の好きなものをとことん好きでいつづけたことが、未来を引き寄せたんですね。
森岡:ありがたいことですね。店主のマサさんは最初こそめちゃくちゃ怖かったんですが、今となっては優しい先輩のような存在。最近は「ディライト」のショップカードやグッズのデザインもさせていただきましたが、これから恩返しが出来たら嬉しいですね。